第56話『帰ってきた冒険者』
祭りが終わって数日。
街は再び、
いつもの穏やかな日常へ戻っていた。
星降る宿屋も、
祭り期間ほどではないが賑わっている。
「なんだか少し静かになりましたね」
ミアが窓の外を見ながら呟く。
「祭りが終わると毎年こんな感じですよ」
リアが笑う。
少し寂しい。
でも。
どこか落ち着く空気だった。
その時。
カラン、と扉が鳴る。
「…………」
入ってきたのは、
一人の若い冒険者だった。
リアはすぐ気づく。
「あっ!」
以前。
暖炉前の席へ案内された若い冒険者だった。
依頼に失敗し、
落ち込んでいた青年。
そして。
「おかえりなさい!」
リアが自然にそう言った。
青年は少し驚いた顔をする。
だが。
すぐに笑った。
「……ただいま」
暖炉前では、
ガルドたちが大きく手を振っている。
「おー帰ってきたか!」
「久しぶりじゃん!」
「……おかえり」
完全に常連扱いだった。
青年は苦笑しながら席へ座る。
すると。
「今日は元気そうですね」
レインが水を置いた。
青年は少し照れたように頭を掻く。
「実は」
そう言って、
腰の剣へ手を添える。
「前に受けた依頼、成功したんです」
店内が少し静かになる。
「おぉ!」
ガルドが声を上げた。
「やるじゃん!」
青年は少し恥ずかしそうに笑う。
「ここで休んだ後から、少しずつ調子戻ってきて」
そして。
真っ直ぐ前を見る。
「あの時、ここへ来てよかったです」
暖炉の火が揺れる。
リアは嬉しそうに笑った。
ミアも小さく微笑む。
その時。
「だから」
青年は少し照れながら続けた。
「成功したら、また来ようと思ってました」
その言葉に。
店内が優しい空気に包まれる。
帰ってきた。
ただそれだけなのに。
皆が嬉しそうだった。
「じゃあ今日は祝勝会だな!」
「勝手に決めないでください!」
リアが慌てる。
店内に笑い声が広がった。
暖炉の火。
料理の香り。
安心できる空気。
そして。
成功した時も、
失敗した時も帰ってこられる場所。
星降る宿屋。
それは今日も、
誰かの帰る場所であり続けていた。




