第53話『初めての浴衣』
夕方。
祭りまであと数日。
街はすっかりお祭りムードになっていた。
屋台の準備も進み、
広場には色とりどりの飾りが並び始めている。
そんな中。
星降る宿屋では――
「……これ、どうでしょう」
ミアが小さく呟いた。
その手には、
淡い水色の浴衣。
「わぁ!」
リアが目を輝かせる。
「絶対似合います!」
「そ、そうですか……?」
ミアは少し不安そうだった。
実は今日。
祭り用の浴衣を見に来ていたのである。
すると。
「ミアちゃん絶対それ」
セリアが即答した。
「え?」
「似合う」
「うん、似合うですね」
珍しくディオまで頷く。
なぜいるのかは誰も聞かなかった。
「なんで皆いるんですか……」
ミリアが呆れたように呟く。
どうやら気づけば、
宿の常連たちまで集まっていたらしい。
その時。
「リアはどうするんですか?」
ミリアが聞く。
すると。
「私ですか?」
リアは少し考える。
そして。
店員が持ってきた浴衣を見た瞬間。
「かわいい……!」
思わず声が漏れた。
淡い黄色を基調にした浴衣。
小さな花柄。
金髪によく合いそうだった。
「それ決まりだな」
ガルドが頷く。
「まだ決めてません!」
「いや顔で決まってる」
ユーリが笑う。
リアは顔を赤くした。
店内に笑い声が広がる。
その時。
ふとミアが視線を向ける。
少し離れた場所。
そこには買い物袋を持ったレインがいた。
「…………」
相変わらず無表情気味。
だが。
なぜか皆の荷物を持たされている。
「レインさん」
リアが声をかける。
「どう思います?」
レインは二人を見た。
ミア。
リア。
そして。
静かに頷く。
「似合うと思います」
その瞬間。
二人とも固まった。
「…………」
「…………」
数秒後。
リアの顔が真っ赤になる。
ミアも耳まで赤い。
「そ、そうですか!」
「ありがとう、ございます……」
暖かい空気が流れる。
すると。
「おやおや」
セリアがニヤニヤし始めた。
「これは祭り楽しみだねぇ」
「セリアさん!」
「絶対面白いことになる」
「なりませんー!!」
店内に笑い声が響く。
祭りの日は、
もうすぐそこまで来ていた。
そして。
星降る宿屋にとっても、
少し特別な夏が始まろうとしていた。




