第52話『祭りの準備』
翌日。
街は少しだけ慌ただしくなっていた。
広場では屋台の骨組みが並び始め、
祭りの準備が進んでいる。
「本当に始まるんですねぇ」
リアが窓から外を眺めながら呟く。
毎年見ている光景なのに、
今年は少し違って見えた。
その時。
カラン、と扉が鳴る。
「リアちゃんいるかー?」
入ってきたのは、
祭り実行委員をしている商人だった。
「今年も宿に協力頼めるか?」
「あ、はい!」
リアは慌てて立ち上がる。
すると商人は笑った。
「今年は期待してるぞ」
「え?」
「星降る宿屋、最近評判だろ?」
その言葉に。
リアは少し照れたような顔をした。
すると暖炉前からガルドの声が飛ぶ。
「有名宿だからな!」
「俺たちの行きつけだし!」
「ガルドさんの宿じゃないですよ?」
ミリアが呆れる。
店内に笑い声が広がった。
その後。
祭り期間中の相談が始まる。
「宿泊希望増えるだろうな」
「食堂も混みそうですね」
レインが静かにメモを書いていく。
「……忙しくなりそう」
ミアが少し不安そうに呟く。
すると。
「大丈夫ですよ」
レインは穏やかに言った。
「今までより人は増えますが」
「はい……」
「一人じゃありませんから」
その言葉に。
ミアは少し目を丸くした。
そして。
小さく笑う。
「……はい」
昔なら。
忙しいと聞くだけで不安だった。
でも今は違う。
リアがいて。
レインがいて。
皆がいる。
だから少しだけ楽しみだった。
その日の午後。
リアとミアは買い出しへ出かけた。
祭り前の街は賑やかだ。
屋台の準備。
飾り付け。
子どもたちの笑い声。
「わぁ……」
ミアは思わず立ち止まる。
「すごいですね」
「でしょ!」
リアは嬉しそうだった。
その時。
「リアちゃん!」
街の人が声をかける。
「祭り頑張ってね!」
「宿予約したよ!」
「今年も行くから!」
次々に飛んでくる声。
リアは少し驚きながらも、
一人ひとりへ笑顔を返した。
「…………」
ミアはその様子を見つめる。
少し前まで。
星降る宿屋は静かだった。
でも今は違う。
街の人も知っている。
冒険者も帰ってくる。
そして。
自分もその一員になれている。
「ミア?」
リアが振り返る。
「どうしたの?」
ミアは少し照れながら首を振った。
「……なんでもないです」
でも。
胸の奥は少し温かかった。
祭りの日は、
少しずつ近づいていた。




