第51話『祭りの知らせ』
昼。
星降る宿屋には、
穏やかな空気が流れていた。
暖炉前では、
ガルドたち常連組が昼食を食べている。
「最近平和だなー」
「お前毎日ここいるだけだろ」
ユーリが呆れる。
すると。
カラン、と扉が鳴った。
「こんにちはー!」
勢いよく入ってきたのは、
街の雑貨商の女性だった。
両手いっぱいに荷物を抱えている。
「リアちゃん! 祭りの準備始まったよ!」
「えっ、もうそんな時期ですか!?」
リアが目を丸くする。
その瞬間。
店内の空気が少し変わった。
「祭り?」
若い冒険者が首を傾げる。
するとガルドが笑った。
「この辺じゃ毎年やってる夏祭りだよ」
「結構人来るぞー」
ミリアも頷く。
「街の広場全部使うので、かなり大きいですね」
ミアは少し驚いた顔をしていた。
「……お祭り」
どうやら、
あまり経験がないらしい。
するとリアが笑顔になる。
「屋台いっぱい出るんですよ!」
「夜は灯りも綺麗で!」
「料理も酒も増える」
「最高」
ガルドたちが完全に祭りモードだった。
その時。
「星降る宿屋も忙しくなりそうですね」
レインが静かに呟く。
「っ……!」
リアの肩が跳ねる。
確かに。
祭り期間は、
宿を探す人がかなり増える。
少し前なら、
そんな心配必要なかった。
でも今は違う。
「…………」
リアは静かに店内を見回す。
暖炉前の常連たち。
増えてきた客。
帰ってきてくれる人たち。
そして。
自然にここにいる、
灰銀色の青年。
「……なんか変な感じですね」
リアが小さく笑う。
「前まで“お客さん来てほしい”って思ってたのに」
「今は“ちゃんと迎えられるかな”って考えてます」
その言葉に。
ミリアが優しく笑った。
「それだけ大事な場所になったってことですよ」
暖炉の火が揺れる。
その時。
「祭り、楽しみです」
ミアが小さく呟いた。
皆が少し驚く。
以前のミアなら、
こういう話題へ自分から入らなかった。
リアはすぐ笑顔になった。
「じゃあ皆で回ろう!」
「……っ」
ミアの顔が少し赤くなる。
すると。
「リアちゃん絶対はしゃぐだろ」
「迷子になるなよー」
ガルドたちが笑う。
「なりませんー!!」
店内に笑い声が広がる。
夏祭り。
それは、
星降る宿屋にとっても少し特別な季節の始まりだった。




