第48話『戻ってこれる場所』
夕方。
星降る宿屋には、
今日も暖かな灯りがともっていた。
暖炉前では、
ガルドたち常連組がくつろいでいる。
「……なんか静かだな」
ガルドがぽつりと呟く。
「最近ずっと賑やかでしたからねぇ」
リアが苦笑する。
数日間滞在していた白ローブの女性。
彼女がいなくなっただけで、
少しだけ空気が違った。
「……ちょっと寂しいですね」
ミアも小さく呟く。
その時だった。
カラン、と扉が鳴る。
「こんばんはー!」
元気な声と共に入ってきたのは、
街の商人だった。
「お、今日も開いてるな!」
最近、
街側から来る客も増えている。
「ギルドで聞いたんだよ」
『めちゃくちゃ落ち着く宿がある』って」
その言葉に。
リアが少し照れたように笑う。
「そ、そんな有名なんですか?」
「結構噂になってるぞ?」
商人は楽しそうだった。
「“帰りたくなる宿”だとか」
「“寝たら疲れ消える宿”だとか」
暖炉前では、
ガルドたちが大きく頷いている。
「事実」
「マジで寝れる」
「……ここ好き」
リアは思わず吹き出した。
すると。
「最近、本当に増えましたね」
ミリアが紅茶を飲みながら呟く。
ギルドでも、
星降る宿屋の話を聞くことが多くなった。
疲れた時に行きたくなる宿。
安心して休める宿。
自然と、
そんな噂が広がっている。
「…………」
リアは静かに店内を見回す。
暖炉の火。
笑い声。
穏やかな空気。
そして。
自然に帰ってきてくれる人たち。
少し前まで。
この宿は、
静かで古いだけの宿だった。
でも今は違う。
誰かが笑って。
誰かが安心して。
「また来ます」
「ただいま」
そんな言葉が増えていく。
その時。
「リアさん」
ミアが小さく服を引っ張った。
「どうしました?」
「……私、この宿好きです」
その瞬間。
リアの目が少し丸くなる。
ミアは少し照れながら続けた。
「ここ、ちゃんと戻ってこれる感じがするので」
暖炉の火が揺れる。
その言葉に。
リアは静かに笑った。
「……うん」
そして。
自然に思う。
この宿を、
もっと大事にしたい。
もっと、
誰かが帰ってこれる場所にしたい。
その時。
「リア」
レインが静かに声をかける。
「はい?」
「今日も楽しそうですね」
「なっ……!?」
リアの顔が一瞬で赤くなる。
暖炉前では、
セリアがニヤニヤ笑っていた。
「また始まった」
「最近ずっとこれだよなー」
「違いますー!!」
店内に笑い声が広がる。
星降る宿屋。
そこは今日も、
誰かが“戻ってきたい”と思える場所だった。




