第41話『雨宿りの聖女』
夜。
外は激しい雨だった。
窓を叩く雨音が、
いつもより強い。
「今日はすごいですねぇ……」
リアが窓の外を見ながら呟く。
街道もかなり荒れているはずだ。
こんな日は、
旅人も少ない。
暖炉前では、
ガルドたち常連組が静かに食事をしていた。
「こういう日はここから出たくねぇ」
「わかる」
「……暖炉最強」
完全にくつろいでいる。
その時だった。
カラン――!
扉が勢いよく開く。
冷たい風と雨が一気に入り込んだ。
「っ……!」
入口に立っていたのは、
白いローブを纏った女性だった。
銀色の長い髪。
透き通るような青い瞳。
だが。
「…………」
その表情は、
かなり疲れている。
まるで限界まで無理をしてきたみたいに。
「だ、大丈夫ですか!?」
リアが慌てて駆け寄る。
女性は少しふらつき――そのまま倒れそうになる。
「危なっ……!」
だが。
倒れる前に、
レインが静かに支えていた。
「……熱ありますね」
「え……?」
リアが驚く。
確かに女性の顔は赤い。
無理していたのだろう。
すると女性は、
少し申し訳なさそうに口を開いた。
「……少しだけ、雨宿りを」
その声は、
かなり弱っていた。
レインは静かに頷く。
「今日は泊まっていってください」
「ですが――」
「無理して倒れる方が危険です」
暖炉の火が揺れる。
その言葉に。
女性は少しだけ目を見開いた。
まるで。
久しぶりに、
“心配された”みたいな顔だった。
数十分後。
女性は暖炉前で、
温かいスープを飲んでいた。
「……おいしい」
ぽつりと呟く。
その瞬間。
肩の力が、
少しだけ抜けた。
するとミリアが小さく苦笑する。
「ここ、皆そういう顔になりますよね」
「……え?」
「安心した顔」
女性は少し驚いたように周囲を見る。
暖炉の火。
笑い声。
穏やかな空気。
誰も急かさない時間。
「…………」
こんな場所、
久しぶりだった。
その時。
「今日はしっかり休んでください」
レインが静かに毛布を置く。
女性は少しだけ俯き――やがて小さく呟いた。
「……ありがとうございます」
暖炉の火が揺れる。
星降る宿屋。
そこは今日も、
誰かが安心して休める場所だった。




