↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
27/84

第26話『冒険者たちの帰る場所』

夜。


星降る宿屋は、今日も賑わっていた。


暖炉前では冒険者たちが笑い、

カウンターではミリアが紅茶を飲んでいる。


「……なんか最近、ここ人増えました?」


若い冒険者が店内を見回しながら呟いた。


確かにそうだった。


以前より席が埋まるのが早い。


常連も増えた。


「最近ギルドでも噂だからなぁ」

「“帰りたくなる宿”って」


ガルドが笑いながらスープを飲む。


「あと飯」

「あと暖炉」

「あとベッド」


「全部じゃないですか」


リアが苦笑した。


その時。


カラン、と扉が鳴る。


入ってきたのは、

泥だらけの三人組だった。


かなり疲れている。


装備も傷だらけだ。


「……空いてるか?」


「もちろんです!」


リアが慌てて駆け寄る。


だが三人は、

どこか張り詰めた顔をしていた。


「……依頼失敗したんだ」


ぽつり、と一人が呟く。


店内が少し静かになる。


若い冒険者だった。


まだ経験も浅いのだろう。


「仲間も怪我してるし……」

「最悪だった」


声が重い。


すると。


「まずは温まりましょう」


レインが静かにスープを置いた。


湯気立つ器。


優しい香り。


三人は少し戸惑いながらも、

ゆっくりスープを飲む。


そして。


「……っ」


一人の肩から、

ふっと力が抜けた。


「……あったか」


その瞬間。


張り詰めていた空気が、

少しだけ緩む。


レインは静かに続けた。


「失敗した日は、ちゃんと休んだ方が良いです」


「…………」


「無理すると、次で壊れるので」


暖炉の火が揺れる。


その言葉は、

妙に優しかった。


若い冒険者は少し俯き――やがて小さく呟く。


「……怒らないんだな」


「え?」


リアが目を丸くする。


「他の宿だと、暗い顔してると嫌がられるし」

「ギルドでも失敗した日は空気重いから」


だから。


帰る場所がなかった。


その言葉に。


店内の空気が、

少しだけ静かになる。


すると。


「だったら今日は、ゆっくりしてください」


リアが笑った。


「星降る宿屋は、休むための宿なので!」


その瞬間。


若い冒険者たちは、

少しだけ驚いた顔をした。


だが。


「……変な宿」


小さく笑う。


その顔は、

さっきよりずっと柔らかかった。


暖炉前では、

ガルドたちが自然に席を詰めている。


「ほら座れよ」

「失敗した日は飯食えばいい」

「……シチューうまいぞ」


ディオまで喋っていた。


若い冒険者たちは戸惑いながら席へ座る。


その様子を見ながら、

ミリアが小さく笑う。


「……本当に“帰る場所”ですね」


レインは静かに頷いた。


「そうなれたなら、嬉しいです」


その夜。


星降る宿屋には、

いつもより優しい灯りがともっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。