↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
24/83

第23話『閉店後の時間』

夜。


最後の客を見送ったあと、

星降る宿屋には静かな時間が流れていた。


「ありがとうございましたー!」


リアが扉を閉める。


外はすっかり暗い。


暖炉の火だけが、店内を優しく照らしている。


「……終わったぁ」


リアはカウンターへ突っ伏した。


「今日は忙しかったですね」


ミリアが苦笑する。


今日は珍しく、

ギルド帰りの冒険者が多かった。


そのせいか、

宿は夜まで賑わっていたのだ。


「でも楽しかったです」


ミアが小さく笑う。


その言葉に、

リアも少し嬉しそうな顔になる。


「うん。なんか最近毎日あっという間だよね」


以前は違った。


静かな時間ばかりだった。


客も少なくて、

夜になると不安ばかり考えていた。


でも今は。


「リア、紅茶どうぞ」


「ありがとうございますー……って、いつの間に!?」


レインが自然に紅茶を置いていた。


しかも全員分。


「なんでそんな気づけるんですか……」


「疲れてそうだったので」


「便利すぎません!?」


セリアが吹き出す。


「もう宿主っていうよりお母さんじゃん」


「違います」


レインは真顔だった。


店内に笑い声が広がる。


その時だった。


「……なんかいいですね」


ミリアがぽつりと呟く。


「え?」


「閉店後のこの時間」


暖炉の火。


静かな空気。


紅茶の香り。


誰も急いでいない時間。


「ギルドだと、こういう時間ないので」


ミリアは少しだけ目を細めた。


するとセリアが笑う。


「わかるー。ここいると帰りたくなくなるんだよね」


「……それ、冒険者たちも言ってました」


ミリアが苦笑する。


その時。


「…………」


ミアが静かに店内を見回していた。


暖炉前。

常連席。

磨かれた床。


少し前まで、

自分はここにいなかった。


でも今は。


「ミア?」


リアが首を傾げる。


「どうしました?」


ミアは少し迷い――やがて小さく笑った。


「……ここ、好きです」


その瞬間。


店内が少し静かになる。


暖炉の火が揺れる。


そして。


「……うん」


リアが、

とても嬉しそうに笑った。


「私も」


その空気を見ながら、

レインは静かに紅茶を飲む。


穏やかな時間だった。


誰かが帰ってきて。


笑って。


安心して休める。


そんな時間。


星降る宿屋は今日も、

少しずつ“帰る場所”になっていく。


そして。


その変化を、

誰より嬉しく思っているのは――


きっと、

リア自身だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。