第21話『雨の日の常連たち』
朝から雨だった。
しとしとと降り続く雨が、星降る宿屋の窓を優しく叩いている。
「今日は静かですねぇ」
リアは窓の外を見ながら、小さく呟いた。
いつもなら朝から冒険者たちで賑わう時間だ。
だが今日は人通りも少ない。
「雨の日は依頼も減るので」
レインは静かに紅茶を淹れていた。
「でも嫌いじゃないです」
「わかります!」
リアがぱっと笑う。
「なんか落ち着きますよね!」
暖炉の火。
雨音。
木の香り。
星降る宿屋は、
雨の日ほど“帰る場所”らしくなる。
その時だった。
カラン、と扉が鳴る。
「うぉー寒っ!」
勢いよく入ってきたのは、ガルドたち常連冒険者組だった。
「やっぱここ来ちまうなぁ」
「雨の日はここ以外無理」
「……暖炉前空いてるか」
ディオは完全に定位置を狙っていた。
リアが思わず笑う。
「もう完全に常連ですね」
「今さらだろ?」
ユーリがニヤリと笑った。
するとレインが静かに口を開く。
「今日は少し体が冷えてそうなので」
数分後。
冒険者たちの前には、
いつもより少し香辛料の効いたスープが置かれる。
「……うまっ」
ガルドが目を丸くした。
「なんか今日いつもより温まるな」
「身体冷えてる時用に少し調整してます」
「普通そこまでやる!?」
リアがツッコむ。
レインは少し首を傾げた。
「帰ってきた人には、ちゃんと休んでほしいので」
その瞬間。
暖炉前の空気が、
少しだけ静かになる。
ユーリが苦笑した。
「……だから皆ここ来るんだよなぁ」
その時。
カラン、と再び扉が鳴る。
「……お邪魔します」
ミリアだった。
今日は珍しく、少し疲れた顔をしている。
「ミリアさん!」
リアが駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「ちょっとクレーム続きで……」
ミリアは苦笑しながら椅子へ座る。
すると。
「甘いもの、少し作りますね」
レインが自然にそう言った。
「……まだ何も頼んでませんけど」
「今日はそっちの気分かと」
「怖いくらい察しますね」
だが。
数分後に出てきた温かい焼き菓子を見て、
ミリアは少しだけ笑った。
「……ありがとうございます」
窓の外では雨が降り続いている。
けれど星降る宿屋の中だけは、
今日も穏やかだった。
暖炉前では常連たちが笑い、
ミアは少しずつ接客にも慣れてきている。
そしてリアは、
そんな景色を見ながら静かに思う。
――この宿、
本当に変わったなぁ。
昔は、
ただ“守らなきゃいけない場所”だった。
でも今は違う。
誰かが帰ってきてくれる。
「…………」
リアは小さく笑った。
その時。
「リア」
レインが静かに声をかける。
「はい?」
「今日、よく笑ってますね」
その瞬間。
リアの顔が一気に赤くなった。
「なっ……!?」
暖炉前では、
セリアがニヤニヤしていた。




