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62お伽噺の杖

「すみません、私は世情に疎いもので…アルディアという国には何か問題があるのでしょうか?」

俺は聞いてみた。


「あの国は『スマム教』という『その宗教のみ』を信仰している国でして、その宗教の教義に国も人も偏っています。


その宗教がいささか問題のある考え方をしていまして……『人属だけ』が人であり、そうでない種族は『紛い物』、排除すべき存在としているのです。


あの国では、『獣人は悪しき物』として忌み嫌っておりまして、アルディアに獣人が入ろうものなら『処刑』されます。


『ドワーフ』や『エルフ』も『紛い物』の対象です。


『ドルディア』というドワーフが治める『工業王国』が、

獣人らが治める『バルドア』の奥にあり、結託されるのを怖れて『今は』ドワーフの処刑は行われていないそうですが、

アルディアに『ドワーフ』が入ると、どこからか石や物が飛んで来るそうです。


『エルフ』に対しても処刑は行われておりませんが、国に入るなり拘束されてしまいます。

その後、国を追い出された様子も無いのです。

我々『商人達の情報』によりますと、『エルフ』は『愛玩動物』として、奴隷魔法を掛けられて、国の要人らに飼われているとか。

私の個人的な意見を申しますと、『まともじゃありません。』」


イシスは吐き出す様に語り、ウンザリとばかり首を振っている。


「この公国も、アルディアとは『一線を引いた』状態での交流しかしておりません。

他の『人種』を否定し、

他の『国』の在り方を否定している。

同じ毛色の人だけで『塊って』何も発展しようとしない。

今現在、あの国はほとんど『孤立』していますよ。」


アルディアざまー。

これは良いニュースだ。


「獣人の国『バルドア』とその『アルディア』は近く戦争になる可能性はあるのでしょうか?」


と、俺が聞くと、何故かイシスは首を捻り出した。


「可能性は高い……高かった……と思いますが……。

最近まで軍備を揃える動きのあった、『アルディア』が、近頃様子がおかしいそうで……。

スマム教の教皇が処罰、断罪されそうになって、逃亡しているとか……。

理由が、『スマム教の教義のお伽噺に出てくる杖』が『壊れた』とか『紛失』したとか。

こちらが掴んでる情報も今錯綜していまして。

荷物の検査や取り調べで、商人達もあの国から出るのが中々難しいそうです。

だいたい教皇を断罪など聞いた事が有りません。

理由が『お伽噺の杖』と仲間の商人から聞いた時は『冗談か』と思いましたよ。」


あー!俺がパクった杖でパニックだと。


ヤバい!笑ってしまいそうだ。


必死に神妙な顔を作りイシスの話を頷きながら聞く。


「ほう、なにやら大変そうですね。

ところで、『お伽噺の杖』ってなんです?」


俺の顔芸が素晴らしく冴えている。

もしかして俺ってサイコパス?


「ご存知無いですか?

スマム教の信者が困った時に、その杖を使うと、異界からスマム信者の下僕が現れるというお話です。

下僕は必ず全裸で現れて、『服』を渡すと犬の様についてきて、顔を足で踏みつけると大喜びするとか。」


「いえ知りませんでした。」


ほう、お伽噺でも『下僕』扱いか。

良い度胸だ。

実際『俺達の国』にそんな奴はいない!

と否定が出来ないのが悲しい。


「ちなみにバルドアという国はどういう国なんでしょう?

輸出の話が出た、という事は武器防具の職人が不足しているのでしょうか?」


「職人がいないというか、材料が足りないのです。バルドアにはダンジョンがありません。

あの国の魔物も、防具の素材としては『固すぎて』使えないとか、『柔らかすぎる』等で、あまり高品質な物を作れる素材ではないのです。

ですから、この街からは素材の輸出を行っていますね。

それと鉱物資源も少ないのでドルディアからの輸入に頼っています。

ただ、食料は非常に豊富です。

ドルディアは食料の殆どを輸入に頼っていますから、バルドアとドルディアは非常に友好な関係です。」


色々良いことを聞けた。

「なるほど。ありがとうございます。

色々と勉強になりました。」


「いえいえ、これくらいの事いくらでも聞いて下さい。」

「実は今伺ったのはイシスさんに『これを』受け取って頂きたいと思いまして……。」

俺は『衝撃二倍付与の鋼剣』を鞘ごと渡した。


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