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女子会その後……。



 〜成田歩夢視点〜




 鈴森さんが俺の事、……と言うより俺の声が好きだと言って来た。それって一人の男としてじゃなくただ声優として好きって事なんだよね、残念だけど。


 でもまさか鈴森さんが声フェチだとは思わなかったよ、アニメや声優さんの事も俺より詳しいし。

 でも俺のファン第一号になってくれたし、店員と客って関係より近づく事が出来たからいっか!


 「ねぇ成田くん、蓮さまって……


 鈴森さんの最推しは俺じゃなくて同じ事務所の三上先輩だ。俺も三上先輩に憧れてこの道を目指したから気持ちが分かるけど、さっきから蓮さま蓮さまって……、おまけにかれんさんはジョッキを手に持ったまま寝落ちしてるし。


 「鈴森さんは俺のファン第一号になってくれたんですよね? それなのに三上先輩の事ばっかり聞いて……、もしかして俺を使って三上先輩に近づこうとか思ってます?」


 ちょっとイラッとしたのでトゲのある言い方をしてしまった。そしたら鈴森さんはさっきまでのヘラヘラしてとろけそうな顔から急に真顔になって、


 「成田くん、私はね、認知されたくないオタクなの、だからそれは絶対に無いわ!」

 「そっ、そーなんですか。すいませんでした」


 俺が謝ると元のフニャっとした雰囲気に戻り、俺の頭を撫で始めた。


 「ヨシヨシ、可愛いわぁ成田くん、焼きもちなんて焼いちゃってさ! 蓮さまは勿論好きだけど、これからは成田くんの事も知っていかないとね♡」


 可愛いって! そりゃ鈴森さんは年上だけど俺だって男だし、嬉しいんだけど複雑な気分だ。


 「それで成田くんは蓮さまのどの作品を見て好きになったの? 私はね……


 あーまた三上先輩の話始めたよ。よっぽど好きなんだな。まぁしょうがないか、俺がこれからもっと頑張って、色んな作品に出させて貰える様にならないと。

 先輩と同じ土俵なんておこがましいけど、俺のファンになってくれたんだから期待に応えないと鈴森さんにも失礼だ。


 今日の所は鈴森さんに話を合わせて、俺の好きな三上先輩のキャラの話をしたらセリフまで覚えていて、俺に言わせてみたりなんかしてたらあっという間に閉店の時間になった。




 ※




 「かれんさん、一時です! もう閉店だから帰りましょう!」


 肩を揺すり体を起こすとかれんさんは不機嫌そうな顔で目を覚まして、

 

 「もぅ、なんでもっと早く起こしてくれなかったんだよ? はは〜ん、さては歩夢お前、いづみんとイチャイチャしたかったからだろ? いづみんガードゆるゆるでなんかエロ可愛いかったしねー♪」

 「イチャイチャなんてしてませんよ! 鈴森さん、ほとんど三上先……蓮さまの話ばっかりしてましたから」


 そんな鈴森さんもかれこれ十分はトイレから戻って来ない。かれんさんが見に行ったら便座に座り寝ていたらしい。大分酔ってたもんな。


 「ありがとうございましたー、お気をつけてお帰りください♪」


 最後まで元気の良い店員さん達に見送られ、俺達は店を出た。少し寝た分復活したかれんさんは自力で歩いているけど鈴森さんは店前で座り込んでしまった。


 「いづみーん、大丈夫? 家ってウチのコンビニの隣のマンションだよね? 近いけどタクシー乗る?」

 「へーき! らいじょーぶ、歩いて帰るー♪」


 そう言ってフラフラと歩き出したが、よろけて電柱に当たりそうになり、慌てて抱き止めた。


 「えへへ、ありがと、成田くん♡」


 普段のしっかりしてそうな鈴森さんからは想像もつかないほどのフニャフニャな顔で見つめて来たので、俺はあまりのギャップに理性を保つのに必死だった。


 「タクシー乗りましょう、終電も無いから俺も始発までコンビニで仮眠取るんで」

 




 ※




 ここは駅前だから歩けば十分で着くけど、フラフラの鈴森さんを担いで帰るのはちょっとキツい。

 俺達は鈴森さんを真ん中に座らせタクシーに乗り、コンビニ前でかれんさんと別れた。


 「んじゃ歩夢、後は任せたよ。私はそのまま乗って家に帰るからさ」

 「分かりました。お疲れ様ですかれんさん、また明日!」


 かれんさんを乗せたタクシーを見えなくなるまで手を振った後、鈴森さんは俺に謝って来た。


 「迷惑かけてごめんなさい成田くん。私はもう大丈夫だから! それじゃおやすみなさーい♪」


 大分酔いが覚めたのかな? 姿勢も良くちゃんとしたいつもの鈴森さんに戻っている……様に見えた。


 「はい、おやすみなさい鈴森さん。気をつけて!」


 マンションに向かいヨタヨタ歩き出したが、暫くすると何かにつまづき転んでしまった。まだ全然駄目じゃんか!


 慌てて駆け寄り肩を貸して起き上がらせると、笑いながら、


 「えへへ、最後位はちゃんとしよう思ったんだけど転んじゃった♪」

 「一応頑張ってみたんですね。……って、足擦りむいてますよ! 俺っ、部屋まで送ります」

 


 部屋とか知られたら嫌かなとか思ってコンビニ前で別れたけど、流石に危ないよな? すると鈴森さんはしゃがみ込み両手を広げ甘えた声で、


 「じゃあ、……おんぶして♪」


 ……っっ!! と、言いながら何故か目を閉じ顎を上げてキス待ち顔をしている。これはヤバい!!


 俺は必死に理性を抑えしゃがみ込んだ。そこへ笑いながら鈴森さんが倒れ込んで来た。

 転びそうになるのを踏みとどまり、何とか立ち上がりマンションまで歩く。


 「あははっ、おんぶなんて幼稚園以来かもー! 成田くんの背中、あったかいね♪」

 「俺だっておんぶなんてした事無いですよ!」


 背中に密着した鈴森さんの温もりと、微かに漂う香水の香りが俺の脳を刺激する。大丈夫か、俺っ!?


 エントランスを抜け、エレベーターに乗ると鈴森さんは突然俺の首筋に唇を押し当てて来た!


 「えっ!? すっ、鈴森さんっ!?」

 「えへへ、なんか吸血鬼ってこんな気分なのかなーって。今やってる冬アニメ、蓮さま吸血鬼役なんだぁ♪」


 そう言って今度は噛みついた後にちゅうちゅうと吸って来た!



 はむっ♪




 「駄目ですっ、鈴森さんっ、あぁっっ!!」

 「あはははっ、いいっ、その声好きっ♡」


 振り降ろす事も出来ず、エレベーターを降りて部屋の前に着くまで俺は首筋を吸われ続けた。


 「降りて下さいっ! 俺っ、もう帰りますっ!!」

 「あー、楽しかった! ありがと成田くん、またね♪」


 ちゅっ♡



 俺から離れて立ち上がる時に、今度は頬にキスをされ、そのまま部屋に入っていった。


 

 何、…………今の!?



 俺は暫くの間頬に手を当て、呆然と部屋の前で立ちすくんだ。

 鈴森さん、酔ったら甘えん坊になるってそういう事っ!? 俺にだけ? それとも誰にでもなのかっ?


 

 ……あぁ、今夜は眠れそうもないぞ。


 

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