いづみん(特賞さん)と女子会
「てゆーかかれん、いー匂いするね♡ 香水何使ってるの? 私、声だけじゃなくて匂いフェチでもあるんだー♪」
耳と鼻の性癖持ちって事? 仕事終わりで汗臭いしお酒も飲んでるから良い匂いな訳無いんだけど?
抱きつきながらクンクンと私の匂いを嗅いでいる。
「あはは、かれんおっぱい大っきいね♡」
「触んなって! コラッ!」
「私なんてちょっとしか無いから羨ましいな、ほらっ♪」
「触らせんなって! いづみん酒癖悪過ぎだしっ!」
ちょっと!? 私も割と酒癖悪いって言われてるけどいづみんの方が酷いんじゃない? 私はウザ絡みするみたいだから嫌がられるけど、こっちは男からしたら大歓迎なんじゃないの?
先に酔っ払ってるのを見ると酔いって醒めるわ。
「それでねー、真希人が中々攻略出来ないのよ、でもツンデレの蓮さまも好き♡ でも蓮さまと言ったら一番のハマり役は……
楽しそうに早口で喋ってるけど何を言ってるのか分からないし! てかなんで腕組んでんの?
「成田くんは伸びるよ! 蓮さまを見つけた私が言うんだから間違い無い! かれんっ、あと三年もしたら成田くん絶対有名になってるから、今のうちにお店の制服着てる姿写真に撮ってサインして貰った方がいーよ!」
そんなドヤ顔で言われても歩夢なんて小っちゃい頃から見てるから全然実感湧かないわ。
「そんなに言うなら直接本人に言ってやりなよ。あっ、もう十一時だ! 歩夢あがる時間だからここに呼んじゃう?」
そう言うと急にあたふたして、私の腕に頭を押し当てグリグリして来た。なんか面白そうだわ!
私は速攻で歩夢に電話をかけた。
『あーかれんさん、酔っ払って電話かけて来るのやめてくれって何度も言ってるでしょ?』
「酔ってないし! てかいづみんが大変なんだよ、今から駅前の『酒処豆福神』に来て!」
『えっ、鈴森さん何かあったんですか? わかりました今すぐ行きますっ!』
慌てた様子で通話を切った。てか歩夢の方こそいづみんに気があるんじゃないの?
「えー、成田くん来るのぉ? こんな姿新しく出来た推しになんて見せられないよぉー」
とか言ってフラフラしながらトイレに向かって歩いて行った。メイク直すのかな? 酔っててもそーゆー所はしっかりしてんのな。
※
「いらっしゃいませー! お一人様ですか?」
「あっ、先に連れが来てるんで!」
キョロキョロしながら歩夢が私を見つけて小走りでやって来た。後ろから店員もついて来たので生中を頼んで座敷に入り、私達の向かい側に座る。
「鈴森さん大丈夫ですか? 大変だって聞いたから慌てて来ちゃいましたよ! かれんさんに飲まされたんですか?」
「んな訳ねーだろ! いづみんが勝手に飲んでんだよ!」
メイクを直し、いつものすました顔を作って私の隣で何事も無かったかの様にしている。すげーな!
「ちょっと飲み過ぎただけで今は平気だから♪」
そう言いながら私の腕を組んでくる。全然平気じゃ無いっしょ?
「あぁ、良かった! てっきりかれんさんにウザ絡みされて飲まされたのかと思いましたよ」
「んな事してないしっ! てかいづみんが歩夢に言いたい事があるんだってよ!」
「ちょっとかれん! やめてよ、そんな事言ってないでしょ?」
赤くなった顔が耳まで赤くなりイヤイヤをしている。なんか可愛いな♪
「なんですか鈴森さん、言いたい事があるなら言って下さい。嫌な所があったら直しますんで」
「そっ、そーじゃないのよ! 私っ、私ね、成田くんの……」
潤んだ目で歩夢を見つめながら恥ずかしそうに口を開いた。いずみんやってんな! こんなん告白してるのと変わんないっしょ? 歩夢も期待した顔してるし!
「鈴森さんっ、実は俺もっ……!」
「……その、……声が好きなの♡
かれんから声優事務所に入ったって、だから私っ、成田くんのファン一号になっても良いかな?」
「えっ……っ!?」
そう言っていづみんは私の胸に顔を埋めて来た。何恥ずかしがってんよ? 抱きつく相手違くね?
「成田くんなら絶対売れるから! だって私、蓮さまがまたモブしかやってない頃から推してたんだもん!」
「蓮さま……って、三上先輩の事ですか? 俺、三上先輩に憧れて声優なったんです! そしたらこの間『Fox Edge』に入所が決まって……
「ちょっと待って!『Fox Edge』って蓮さまの所属してる事務所じゃない! そんな所から声がかかるなんて凄いよ成田くん!」
いづみんは私から離れてヨタヨタしながら歩夢の隣に座り、両手を握ってブンブンしてる。
「すっ、鈴森さん詳しいですね。……てかサラッと『蓮さま』って言ってますけど、鈴森さん三上先輩のファンなんですか?」
「ファンもなにも最推しよ! だって蓮さまは私を失意のどん底から手を差し伸べてくれた王子様なんだもん! 彼の声を聞いてどれだけ私が救われたか!」
目を閉じて両手で胸を押さえている。よっぽど好きなんだねー、でも歩夢は複雑な顔してるよ?
「そ、……そうなんですか。鈴森さんは三上先輩の事が好きなんですね」
「でもね、成田くんの声も好き! 大好き!! 私、初めてあなたの声聞いた時体に電流が走ったもん! 絶対売れるわ、私が保証する!」
再び両手を握られてデレデレしてるし! でもそれだけ断言されたら嬉しいよなー。
「ありがとうございます! 俺っ、これからもっともっと頑張って、いつかは三上先輩と肩を並べられる様な声優になります! だから俺のファン第一号になって下さい!」
「うんっ、なるっ!! 絶対応援するからっ!」
「ねぇ歩夢ぅ、あんたは本当にそれでいーの? ファンには手ぇ出しちゃ駄目なんだろ? 事務所クビになっちゃうよー♪」
「うっっ、……それはっ」
ウケる! これじゃ歩夢がいくら好きになっても、いづみんがファンで居る限り結ばれないじゃん。
そんな事まるで分かっていないいづみんはフラフラと立ち上がりハイボールのジョッキを掲げて、
「それじゃ成田くんの事務所所属と今後の活躍を祈って、かんぱーい♪」
「「かんぱーい!!」」
「さぁ成田くん飲んで飲んで! それで蓮さまとは会った事あるの?」
「はい、この間事務所で初めてお会いしてご挨拶させていただきました」
「キャーーーッ!! それで蓮さまとどんな話したの?」
いづみんは歩夢を質問攻めにしていた。私は何を話しているかまるで分からないまま二人のやり取りを聞いてる内に……寝落ちしてしまった。




