私の住むマンションの隣にコンビニが出来たら親友と家族が出来ました《前編》
暴露大会のような宴会から半年が経ち、季節は秋になってちらほら冬の足音も聞こえて来る様になっていた。
私と歩夢はあれから私の部屋で同棲を始めた。二人で住むからもう少し広い部屋に引っ越す事も考えたけど、上の階にはかれん夫婦も居るし、私達の初めて出会った場所『スマイルワン』から離れるのが嫌だと言う意見が一致して、このマンションの広い部屋が空くまではここに住もうと言う事になった。
そしてようやく空きが出来て、今日が引越し日!
空きが出来たのが同じ階の2LDK!! 業者を呼ぶよりもこれなら自分達で出来るわ! かれん達も手伝ってくれるし。
私達は元々引越した時に色々揃えようと荷物を減らしていたので必要最低限の暮らしをしていた。家電を運ぶのは男手達が苦労してたけど……。
「いづみぃ、ちょっと休もう! もう腰がガクガクするよ〜!」
「うん、今冷たいお茶買って来たから休憩しよ!」
私達は同棲を機にお互いを呼び捨てで呼び合う様になった。
「歩夢っ、それって昨夜もいづみんと頑張ってたからじゃないの?」
「昨日はその、……今日が最後の部屋でのだから……って何言わせんだよっ!?」
あははは あはははっ♪
「もうっ歩夢っ、余計な事言わないでよ! 私達の夜の事、かれん達にバレバレよ?」
「あはは、そー言えばかれんさん達は、二人目考えてるんですか?」
かれんは先月無事出産をし、元気な男の子が産まれていた。
「う〜ん、欲しいけど生活の事考えるとね、コンビニ経営って難しいよ。店舗増やすのもリスクを考えたらこの店だけの方がやれそうだし……」
梅里くんが少し険しい顔をしたが、かれんはケロッとして、
「別に贅沢な暮らしなんて望んで無いわよ! あっくんはいつもそう言うけど、健康で休みもちゃんとあれば私はそれで充分よ!」
「でも、お洒落とかもっとしたいだろ? 旅行だって!」
「あー、そう言う事は二人の時にしようよ、今日は二人の新居祝いに来たんだから!」
少し険悪な雰囲気になったのを、歩夢が一言で消し去ってくれた。
「じゃあさ、俺が『スマイルワン』の宣伝担当になるのはどーかな? 元々俺、ここでバイトやってたし、ラジオで宣伝とかなら全然オッケーだよ!」
「そー言ってくれるのは嬉しいんだけどギャラとかそんなに出せないよ?」
「そんなのいらないですよ! だって俺達従兄弟ですよね? それにあのコンビニには沢山思い出を貰いましたから!」
「でも、そーゆー訳には……」
たまらずかれんが口を出した。
「ありがとう歩夢。……それじゃさ、歩夢がバイトしてた頃の時給だけでも払わせてよ。貰わないって言うならこの話は無しって事で!」
「……分かったよ。その代わり俺がバイトしてたコンビニって聞いてお客さん殺到するからな、今のうちにバイト人数増やしておいた方が良いと思うよ!」
「クソッ、歩夢っ生意気だな! ……でも、本当ありがとうね!」
歩夢は私を見ながら微笑んで、
「だって『スマイルワン』で働いて無かったら俺達出会えて無かったんだよ。そんな大切な場所、俺に何か出来る事があればしてあげたいじゃん♪」
「そーだね、歩夢のそーいう所大好き♡」
「……いづみぃ♡」
「…………たまに二人の世界から出て来ない時あるよね、そろそろ続きやらない?」
梅里くんが呆れた顔で笑って言った。たまにって何? 以前もそんな事あったの?
※
「あー、思ってたより時間かかっちゃったね、かれん、梅里くん手伝ってくれてありがとう! お寿司取ったから食べてって!」
荷物はそんなに無かったハズなのに全部運び終えたのは夕方だった。後は仕事から帰ってからや休みの日に少しずつ片付けよう。
「歩夢くん、で、どうだい? 同棲して何か考えとか変わったりした?」
「んー、家に帰れば好きな人が待ってるって、仕事でミスしたり凹んだ時でも元気が沸いて来るって言うか、切り替えが出来る様になりましたね」
「分かるよ! 接客業なんてさ、理不尽な客が割と多いからストレス溜まるんだよ、でも、家に帰ってかれんとチビの顔見ると嫌な事なんて忘れられるんだ!」
「……なんかウチの男達、私達の事好きすぎじゃね? 話聞いてて背中がムズムズするんですけど?」
分かるわ! でもかれん、今とっても幸せそうな顔してるわよ♪
すると歩夢くんが、私をじっと見つめて来て、
「いづみ、俺、決めたから! 次のラジオで結婚するって報告する!」
「えっ、……私、結婚するなんて一言も言ってないわよ?」
「ちょっ、ちょっと!? この流れでその返しは酷いよ! 俺、かれんさん達見てたら子供欲しくなっちゃったんだ!」
あたふたする歩夢が可笑しくて可愛くて、かれん達が居るのに思わず抱きしめて、
「ありがとう、私も一緒に住んでみて歩夢とならずっと素直な自分で居られるって分かったの、だから私にも言わせて!」
「いづみ……、結婚しよう!」
「はい! 私をあなたのお嫁さんにして下さい!」
私達はすっかり自分達の世界に入っていて、唇を重ねた瞬間に二人からヤジが飛んで来た!
「お前ら、いー加減にしろよ! ほっといたらその先も見せられそうだぞ!」
「流石に親友と従兄弟のキスシーンは見たく無かったわ! あっくん、寿司持ってもう帰ろ!」
「「ごめんなさ〜い! 今後気をつけま〜す!」」
※
「今晩は、成田歩夢です。今週も始まりました『成田歩夢のドリームアクター』最後まで宜しくお願いします」
毎週金曜日の深夜一時、歩夢のラジオが始まった。
今夜の放送で結婚の報告をすると言ってたけど……、録音だから勿論収録は終わっているし、当の本人は明日も早いので私の隣で既に寝息を立てている。
「夜も遅いし『タイムフリー』で聞けば良いじゃん」って言ってたけどドキドキして寝られる訳無いじゃない!? 私は思わずベッドから起き上がり正座で耳を傾けていた。
「今日はみんなに大切なお知らせと報告があります。あっ、番組終了とかじゃないよ! 俺、みんなと繋がるこのラジオが大好きだから! だからこのラジオで伝えたいんだ」
もう熱心な歩夢ファンなら気付くでしょ、こんなの!
「先ずはお知らせから! 俺、養成所を出て今の事務所に入所してから半年とちょっと、従兄弟がやってるコンビニ『スマイルワン』でバイトしてたんだ。何回か話した事あったよね? それでこの度その『スマイルワン』の広報担当になりました! ってか勝手にお願いしたんだけどね、へへっ。『スマイルワン』の制服を着た等身大パネルや店内放送、月イチで短時間だけど店頭にも立ちたいなって思ってるんだ。
そして報告です。俺、そのバイトを始めた時に出会った女性とこの度結婚する事になりました!」




