結婚……する?
結婚……かぁ。
確かに一緒に住んでご飯を作ってあげたいって願望はあったけど結婚までは正直考えて無かった。
結婚って、そこで一緒に住んでもっとお互いの事を知ってからじゃないと上手くいかないのでは? なんて思うのは考えが古いのかしら? だけどかれん達は年明け早々に籍を入れて上手くやってるし。
すると真っ赤な顔をした歩夢くんが不安そうに私の顔を見つめて……、
「突然、だったかな? でも俺はいづみさんの彼氏になってからいずれはって思ってたんだけど……」
「私だって二人で一緒に住みたいって目標があるから今まで料理も頑張ってたのよ!」
「それじゃ、……いいんだよね?」
私は返す言葉に戸惑ってしまった。それを見抜いたかの様に歩夢くんは少し寂しそうに笑って私の肩に手を置き、
「とっ、とりあえず結婚は置いておいて、一緒に住む事から始めようよ。焦ってたのかな、俺、あはは」
「ちっ、違うの! 変な誤解しないで! プロポーズしてくれたのは夢の様に嬉しいんだけど、私の中の結婚って漠然とし過ぎてどうしたら良いのか頭が真っ白になったの」
「うーん、それを言ったら俺も結婚って良く分からないな。あっ、そうだ! かれんさんに聞いてみようよ、新婚でしょ? 確か年明けに籍入れてるよね?」
そっか、かれんには結婚してからの事って聞いて無かったわね。連絡も以前よりは取らなくなったけど仲良くやってるのは知ってるし。
「歩夢くん、明日って15時からだったわよね? お昼に二人でかれんの所行ってみる?」
「うん、行こう! 俺も勢いで言っちゃっだけど、実は俺、同棲もした事ないし、ましてや結婚生活なんてまるで分からないんだよね」
でも、結婚ってある意味勢いがなきゃ出来ない気がするわ。かれん達にはそれがあったもん♡
※
〜次の日のお昼〜
私は朝、かれんに電話をして昼食をかれん達の愛の巣で食べたいと言ったら何故か大歓迎された。
「お邪魔しまーす!」
「お久しぶりです、かれんさん!」
「おー、歩夢久しぶり! 最近絶好調だな! まー荷物多いけど上がって上がって!!」
かれんは少しお腹が膨れて来ている。出産予定は秋なのでまだまだ予断は許さないが順調そうでなによりだ。って私、もしかしておばちゃんになるの? そんなの嫌〜っ!!
「もうさ〜、あっくんが何もやらせてくれないのよ! だから一人で居る時の方が気楽でいーわ、あははは♪」
梅里くんが世話を焼いてる姿はすぐに想像がつく。なんかお父さんになって子供と遊んでる所まで見えてくるわ。
「愛されてる証拠じゃない! それに強面パパとも仲良くやってるしね!」
「そーなの! 聞いて! こないだなんて親父の行きつけのスナックに二人で行ってさー、親父のお気にの子からチヤホヤされて親父暫く不貞腐れてたんだぜ、ウケるっしょ?」
かれん親子にすっかり馴染んでいる梅里くんの話を聞いて歩夢くんは複雑な顔をしていた。
「パスタでいーよね? 茹でるだけでソースはレトルトだから二人でゆっくりしてなよ!」
既にパスタを茹で始めていたらしく相変わらず手際が良い。さりげなく気を使う所は相変わらずだ。
「それじゃ、お言葉に甘えて!」
私達はテーブルに並んで腰掛け顔を見合わせた。
「俺、色々聞きたい事があるんだけど……」
「うん。私の聞きたい事も含まれてるだろうから歩夢くんが気が済むまで質問すれば? かれんなら何でも答えてくれるわよ♪」
※
「……んで、何か聞きたい事でもあるのか?」
テーブルに並べられたパスタをスプーンとフォークで器用に巻いて、かれんは聞いて来た。全部お見通しなのね。
早速歩夢くんが繰り出した。
「かれんさん、……あの、結婚生活ってどーです?」
「んぁ? ……別に普通だけど?」
話が止まってしまった!
私は頭が真っ白になってるであろう歩夢くんに代わって質問を続けた。
「実は私、昨日歩夢くんにプロポーズされたんだけど……
「おーーっ!! マジか、歩夢っ!! やるじゃん!!!」
話の途中でかれんは立ち上がり歩夢くんの肩をバシバシ叩いて喜びを爆発させていた。歩夢くんはむせて口からパスタが飛び出してるし!
「ちょっと待って! それでね、私、結婚って今イチピンと来ないから身近に居た新婚ホヤホヤの意見が聞ければなぁって!」
「んー、ウチらは先にお腹に赤ちゃんが出来たのもあるし、一緒に住むと決めた時にあっくんは結婚前提でって言ってたもんなー」
あ、そっか。状況が違うんだったわね。
「結婚かぁ……、実は私もピンと来てないんだわ、だってウチら式挙げてないじゃん? 区役所行って手続きしただけだし、まぁ親父の為にも赤ちゃん産んだらしようとは思ってるけどねー」
「じゃあ同棲始めた時はどうでした? 俺、同棲も初めてなんで教えて欲しいです!」
必死ね、歩夢くん。火傷でもしたのかしら? 口をハンカチで押さえて聞いている。
「何がどうなん? 別に会いに行かなくてもそこに居るからいつでもイチャイチャ出来るぅ? みたいな?」
かれんちゃん!? 歩夢くんも目が血走ってるわよ!
全然私が思ってる様な話にならないわ。
……と、思ったら意外にもまともな事を言って来た。
「でもまぁ、男と女、山程居る中でこうやって縁が出来たんだからさ、それを大切に二人でこの先生きて行くって感じじゃないの? ウチなんかガキが既にお腹ん中に居るから、二人だけじゃ無くこの子の為にもって、んー、『運命共同体』みたいなぁ〜?」
それを聞きたかったとばかりに歩夢くんは身を乗り出して、
「そうです! 『運命共同体』です! 俺、いづみさんとこの先ずっと共に人生を歩いて行きたいんです!」
「バーカ! そんな大事な事、私に向かって言ってどーすんだよ?」
……と、何故かそれをかれんに向かって言って来た。今、目の前で言われたら泣いちゃうかもだったのに!
そしたら歩夢くん、顔を真っ赤にしながら私の手を取り、
「いづみさん、俺の一生を賭けて幸せにします! だから先ずは同棲して、いづみさんが俺と結婚したいって思って貰える様に頑張ります!」
「もぅ、何よ突然っ! かれんがニヤニヤ見てるでしょ? それに幸せにするんじゃ無くて二人で幸せになろうよ、私だって歩夢くんの事幸せにしたいもん♡」
「いづみさん……♡」
「あー、二人共こっから先は部屋に戻ってヤッてくれよ! てか価値観なんて人それぞれだろ? 先ずは一緒に暮らしてみて、二人がそういう気持ちになったら籍入れれば何の問題もないだろ? 私に聞いてどーすんのよ!」
最後の最後に正論を言われてしまい、かれんは私達の結婚への見届け人となったのでした。




