個人情報盗み聞き!?
明日は水曜日で仕事は休み!
今夜は朝までまだ攻略出来てない乙女ゲーをやろうかしら? 蓮さまのキャラだけまだ手をつけてなかったのよね。私、好きな物は最後に食べるタイプだから♡
時刻は午後六時、お店は八時迄だからあとちょっとね、……なんて考えてたらメッセージが届いた。
『いづみん明日休みっしょ? 今日九時にあがるから一緒にご飯食べに行かね?』
先日連絡先を交換した、隣のコンビニのギャル副店長こと芹沢かれんだ。
てか私、いつの間に『いづみん』になったの? 私の事は『かれん』って呼んでとか言ってたし。
社交辞令かと思ってたら本当に誘ってくれた! まぁゲームはいつでも出来るしね。
『行く行くっ! それならお酒も飲める所がいーな♪ それじゃ仕事終わったらお店寄るね!』
なんか隣にお店が出来ただけなのに、推しは出来るわ友達も出来るわって、なんか不思議。
そーいや同い年の友達が出来るの久しぶりだな、大学時代の友達は地方に就職したり結婚したりで疎遠になってるし。今夜はいっぱいかれんの事知りたいな。
※
「それじゃお疲れ様ーっ!」
あーお腹空いたー! 足取りも軽く電車に乗り込みタイムフリーで昨日の深夜にやってた蓮さまのラジオを聞く。相変わらず優しい声で耳が幸せ♡
電車を降り、駅前のコンビニを通り過ぎてスマイルワンへ急ぐ。
「いらっしゃいませー」
店に入るとまだかれんは制服を着たままだった。
「ごめん、バイトの子、電車遅延で遅れるって連絡来たからイートインで待ってて!」
「あっ、全然いーよ、気にしないで」
それでもかれんはお店のコーヒーを入れて持って来てくれた。副店長は飲み放題なの?
それじゃ蓮さまのラジオもう一回聞き直そう。
私はワイヤレスのイヤホンを耳に差し込んでさっきの続きを再生しようとしたら……、レジの方から久しぶりのあの声が聞こえて来た! 成田くんだ!
「今のお客さんが言ってたけど、なんか人身事故があったみたいですよ」
「そーみたいだね、さっきリンちゃんからも連絡あってさ、もうちょい遅れるってさ」
遅れてるのは外国人の女の子なのね、私は顔が見たくてこっそりイートインの脇からレジを覗いた。
居た! あー久しぶりに顔が見れた!
知らない内に口角が上がってヘラヘラしてしまった時、一緒にレジに居たかれんとバッチリ目があってしまった。
彼女は私を見てニヤニヤしながら成田くんに話しかけだした。
「そーいや歩夢、お前いくつになったんだっけ?」
「何、突然? 二十三だけど?」
「誕生日はいつ?」
「来月の十二月十日だけど? 何かくれるの?」
「じゃあ血液型は?」
「B型、……何、心理テスト?」
こっ、これはっ!? ……もしかしてかれんが私の為に成田くんの個人情報を聞き出してくれてるのでは?
そーっと覗き込むとまたかれんと目が合い、ウインクしてきた! もう私が成田くんの事気になってるのバレバレじゃない!
これは蓮さまのラジオどころじゃないわ! 私はBluetoothをオフにして急いでスマホのメモ機能をタップした。
「また背ぇ伸びたんじゃない? 身長何センチあんの?」
「別に変わんないよ、百八十二」
ちょっと待って、誕生日は十二月十日……、血液型はB型っ、で、身長は、と!
私史上最速の指の動きでスマホに情報を流し込む。
「ふーん、てか歩夢ってさ、彼女居んの?」
これは知ってる! この前ウチの店に来た時居ないって言ってたもん!
「居ねーよ! 居たらこんなにバイト入れないだろ?」
……て事は、彼女が出来たらバイトにはあまり入らなくなるのね。
「ふーん、それじゃ好みのタイプは? 可愛いと綺麗だったらどっちが好き?」
「うーん、好きになったのがタイプだから分かんないなー? どっちだろ?」
何それ? ……なんか歌の歌詞でそんなのあったわよね?
「しいて言えばよ! どっち?」
「うーん、どっちかって言うと綺麗系かな?」
っっ!! ♪
「んじゃ、年下、同い年、年上ならどれがいー?」
「とっ、年上、……かな? 俺、妹が居るから年下って対象外なんだよね」
思わず身を乗り出してしまった!
成田くんは私から見て、背を向けてかれんと喋ってるから気付かないけど、かれんはニマッと笑って成田くんに見えない様に親指を立てた。
「んじゃさー、ウチの客で言うと『特賞』さんみたいなのがタイプなのー?」
ちょっとかれんっ! 踏み込み過ぎだからっ!! もう恥ずかしいからやめて〜っ!!
すると成田くんは頭を掻きながら少し背中を丸くして……、
「ま、……まぁウチの店の客で言うならね。いつも綺麗でお洒落だし、レジに来るとふわっと良い香りがするんだよね! それに凄く優しいし……」
「なになにー? 歩夢、『特賞』さんに何かされたのー?」
何もしてないから私っ! ……でもお店のお客さんの中なら私がタイプって事!? そーなの?
「こないだ家の近くの雑貨屋で妹の誕プレ探してたら偶然鈴森さんのやってる店でさ、すごく親身になって選んでくれたんだよね」
「はっ? そんなん自分の店に知り合いが来たら誰にだってそーするでしょ? チョロ!」
ちょっとかれんちゃん!? 一応あなた味方だと思ってるのよ、私っ!
「……んで、好きになっちゃったんだ! 歩夢マジチョロ過ぎなんですけど?」
「そーゆーのじゃないからっ! それに店の客だろっ?」
「別に客ならいーじゃん、バイトの子食い散らかすのは駄目だけど!」
「そんな事する訳ないじゃん!」
ちょっ、ちょっと何揉めてんの? 成田くんもムキにならないで!
「あはははっ、バーカ、冗談だよ! 歩夢がそんな事する訳ないの知ってるし! それより別に店の客に声掛けたっていーじゃん、何がいけないっての?」
「そんな事したら軽い男って思われるだろ? だいたいナンパなんてした事ないし!
それに俺、事務所所属してこれからって時に変な噂立てられたくないから!」
うん、それでこそ私の推しよ! ナンパとか絶対駄目なんだからね!
そしたらかれんがとんでもない事を言い出した!
「あっそ、それじゃ歩夢が手ぇ出さないなら『特賞』さんは私が貰っちゃお、実はね、こないだウチら連絡先交換したんだ! しかもこの後二人でご飯食べに行くし!」
「はっ!? なんでかれんさんが鈴森さんと繋がってんだよ?」
「ぷっ、『鈴森さん』だって! 私なんて『いづみん』って呼んでんだからー♪」
訳わかんないマウントやめてー! それになんで成田くんも食いついてんのよっ?
その時、
「オクレテシュイマセン、フクテンチョー!」
「あっ、リンちゃん、気にしないで! 大変だったね!」
タイミング良くバイトの子が現れて言い争いは終結した。
…………ハズだったのに、かれんはイートインに向かって大声で、
「いづみーん、お待たせ! 今着替えてくっからもうちょい待ってて!」
「えっ、鈴森さん居るのっ!?」
慌てた顔の成田くんがイートインに向かって駆け出した。
「あっ、こっ、こんばんは成田くん」
「鈴森……さん、さっきの話、……聞いてました?」
顔を真っ赤にして焦った顔をしている。これは知らないフリをした方が良さそうだわ。私は耳につけているワイヤレスイヤホンを片方外して、
「ん? ……何? 何喋ってたの?」
「あっ、べっ、……別に何でもないです。かれんさんとご飯行くんですよね、あの人酒癖悪いから気をつけて下さいね!」
そう言ってホッとした顔で私に微笑んだ。我ながら迫真の演技だったわ!
「大丈夫! 私も酔うと甘えん坊になるから♪ 」
「えっ? 意外だなー、鈴森さんが甘える所、見てみたいなぁ」
「じゃあ、今度二人で、……飲みに行く? なーんてね! それじゃバイト頑張ってね♪」
成田くん、顔を真っ赤にしてレジに走って行っちゃった。
あー、かれんのおかげで推しの情報をいっぱい手に入れて大満足だわ! よーし、今日は飲んじゃお!!




