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万引き


 あー、今日も成田くんはバイトじゃないのね。ウチの店に来たのを最後にもう一週間見てないわ。……まさか辞めたりしてないわよね?

 仕事終わりに毎日寄ってるけど、あの美声を聞けないのはちょっと寂しい。


 肩を落としながら店内を一通り見渡した後、成田くんも居ない事だしお弁当でも買って帰ろうかと思ったその時、見た目三十代位の挙動不審な男が辺りを見回し、何かをポケットに入れたのを目撃してしまった。



 万引きだ!



 早く知らせなきゃと思ったけどレジには外国人の女の子だし……、周りをキョロキョロしてると、居た!


 店の外でギャル副店長が一服していた! 何やってんのよもうっ!?


 私は急いで外に飛び出しギャル副店長に駆け寄った。


 「いきなりですみません! 私、さっきあの人万引きしてるの見たんですけど!?」


 そう言って店内に居る男に目線をやったら、ギャル副店長はスマホを取り出し何処かに電話をかけ出した。


 「あっ、オヤジ、モニター見てる? 雑誌んトコに居る男、やっぱ万引きしたってよ! アイツ、最近毎日来てて怪しかったんだよねー、て事でヨロー♪」


 するとレジ奥の部屋から、巨漢の見るからにガラの悪そうなコワモテの男の人がヌッとやって来て、万引きした男の腕をガシッと捕まえたかと思うと、するするとまたレジ奥の部屋に消えていった。


 「あの、今の人……用心棒か何かですか?」

 「あははは、ウケる! あれヤクザじゃないよ、ウチのオヤジ、てか店長? 見た目ヤバいから普段から店には顔出すなって言ってんのよ、あんなんレジに居たらヤバいっしょ?」


 ……あぁ、お父さんなのね。てか成田くん、このギャル副店長とヤクザ店長、あとのバイトは皆外国人って、職場環境最悪じゃない? 



 ……やっぱり嫌で辞めちゃったのかな?



 するとギャル副店長はまたタバコに火を付け、


 「いやー、最近万引き多くてさー、オープンしたてでバイトも慣れてないからナメられてんのかなー。てかおねーさん、それよりよくあの男万引きしたって分かったねー?」

 「私、雑貨屋の店長やってるんですけど、ウチも結構やられてるんです。だから挙動が怪しい人は何となく目がいっちゃって」

 「そっか、だからかー! 改めてありがとね!

 あっ私、副店長の芹沢せりざわかれん、おねーさん、くじで特賞当てた人でしょ? だから覚えてんだよねー! オープンの時から良く来てくれてるしさー、まっ、これからもヨロしくー♪」


 そう言って手を差し出して来たので握手をして、


 「私は鈴森いづみ、近所にコンビニが出来て嬉しかったから、つい用も無いのに足を運んじゃうんですよね♪」


 そう言うとギャル副店……芹沢さんはイヤらしい目で私を見て、


 「とか言ってぇ〜! 本当はウチの歩夢あゆむ目当てで来てんじゃないのぉ〜? アイツがバイト入るとやたら売り上げいーんだよね、しかも来る客女ばっかだし!」


 げっ、やっぱりそーだったんだ! 成田くんが居る時はなんか混雑してると思ってたのよね。


 「わっ、私はそんなつもりじゃないですからっ! ただ、……良い声してるなって思って。あの、最近見ないんですけどもしかして辞めちゃったんですか?」

 「辞めてないし! 歩夢は従兄弟いとこでさ、入れる時でいーから入ってって言ってあるんだ。

 てか今度会ったら特賞さんが良い声してるって言ってたって伝えとくよ。アイツ喜ぶよ! なんか先日念願だった声優の事務所に入れたって喜んでたからさー!」


 「えっ、彼、声優さんだったんですか? そっか、だからあんなに滑舌良くて通る声してたのね!」

 「つーか、まだ養成所出たばっかで仕事も殆ど無いからさ、ちょくちょくバイト入ると思うから会った時直接褒めてやってよ!」



 思わぬ所で個人情報を手に入れてしまった。


 成田くん、歩夢あゆむって言うんだ。ふふっ可愛い♡


 それから私達は年が同じだった事が分かり、話が弾み何故かギャル副店長、……芹沢さんと連絡先も交換して、今度二人でご飯に行く事になった。



 流石に何処の事務所かなんて知らないわよね? 

 まさか蓮さまと同じ事務所……って事は無いわよね、あそこ大手だし。とりあえず辞めてないのも分かったし、これで話しかけるキッカケが出来たから今日は大収穫の一日だったわ!

 


 あー今度いつバイト入るんだろ、直接褒めたら成田くん、どんな顔するんだろ、ふふっ♪

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