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彼女、いたんだ。


 「いづみちゃーん、最近なんかいー事でもあったんですかぁ?」


 アルバイトのゆみちゃんがニヤニヤしながら聞いて来た。


 「なっ、何よ突然っ、……何も無いわよ!」

 「そーですかぁ? 仕事中も上の空で思い出し笑いなんかして。 あっ! 彼氏、……出来たんでしょ?」



 ゆみちゃんは二年前、この店がオープンした時からの立ち上げメンバーで、二人とも蓮さま推しと言う事が判明してから急激に仲良くなり、それ以来毎回二人でイベントやお渡し会に足を運んでいる仲だ。


 ちなみにバンドをやっていてベースを担当、髪は赤のメッシュが入っていて、耳にはピアスがいくつもついている。


 「出来て無いって! それより私、そんなにニヤニヤしてた?」

 「そりゃもう! 気持ち悪い位です!!」


 『スマイルワン』がオープンしてからかれこれ二週間、勿論居ない日もあったけど、毎日成田くんの声を聞きに行ってるから目を閉じると彼の声が聞こえてくるの。かなり重症だわ


 「実はね、……蓮さま以外に新しい推しが出来たの♡」

 「えーっ、浮気ですかぁ? 私は一途ですから蓮さま以外は目もくれませんけど!

 でもさー、いづみちゃんもこれを機会に彼氏作ればいーのに。このモール内でもいづみちゃんの事狙ってる男割と居るんだよ。そろそろ現実に目を向けたらどーなの?」


 ゆみちゃんはやれやれと言った顔で私を見てる。

 別に彼氏なんて欲しく無いし、今の生活で充分私満足だもん。それに会いたい時に会える推しも出来たしね♪



 そんな話をしていたら、えっ!? ……成田くんがキョロキョロしながらウチの店の前を歩いて行った。


 なんで? ここ、あのコンビニから駅三つも離れてるのよ?


 暫く歩いて行ったかと思ったら、何故か引き返してウチの店に向かって来たんですけど?

 そして店の前で立ち止まり、バックを手に取り、また戻し、今度はネックレスを見始めた。


 ちょっと待って! ウチの店、十代〜二十代の女の子に人気のアクセサリーや雑貨を売ってる店よ?



 あっ、なーんだ。……彼女、いたんだ。



 そりゃそーよね。韓流アイドル顔負けのルックスにあの美声、彼女の一人や二人居てもおかしくないわ。

 


 あれ? ……なんで私、こんなに胸が苦しいんだろう? 声が好きなだけで、別にそんなんじゃないハズなのに……。


 思わず顔を隠してバックヤードに逃げ込んでしまった。何やってんだろ私?


 目を閉じて何度か深呼吸をして心を落ち着かせる。

 ここはちゃんと割り切って対応しないと。


 なんて言いながらも恐る恐る店内を覗き込むと、まだ成田くんは真剣な顔でアクセサリーを物色していた。

 彼女さんの事大好きなんだね。じゃなきゃこんなに悩まないもんね。



 あれ? ……涙が出て来た。



 そー言えば蓮さまの熱愛報道があった時泣いちゃったもんな、結局ガセネタで今でも私達の間じゃ笑い話になってるけど。


 涙を拭いてバックヤードから出た所で成田くんとバッチリ目が合った。

 驚いた顔の成田くんは少し照れくさそうにこちらに向かって歩いて来た。


 「ビックリしたー! 鈴森さん、この店で働いてたんですね!」

 「あら、成田くんこんにちは。何か探してるの?」


 努めて冷静に対応したけど、泣いてたのバレて無いかしら?


 「実は、来週妹の誕生日なんです。大学一年なんですけど、何を選んだら良いのか全然分からなくて……」


 なーんだ、妹さんへのプレゼントだったのね! 

 さっきまでの胸の痛みがみるみる和らいでいった。



 「そーなんだ。それじゃ一緒に選びましょ♪」

 「はいっ、お願いしますっ!」


 大学生になって化粧を覚え始めたと言っていたので、少し大人っぽくて使い勝手の良い化粧ポーチを勧めてみた。


 「これだったら見た目もシックで使い易いから割と二十代の子に売れてるわよ」

 「じゃあ、これにします。ありがとうございます! いやー助かりましたよ。実はこういう店に来る事殆ど無いので困ってたんです。まさか鈴森さんが働いてる店だったなんて!」

 「本当にそーなの? 成田くんモテそうだからプレゼントとかあげるの慣れてるのかと思ったわ」


 すると成田くんは頭を掻きながら、


 「いやぁ、なんか俺、『良い人』止まりで恋愛対象にならないみたいなんですよねー、彼女も一年位居ないですし。そーゆー鈴森さんの方こそ言い寄って来る人多そうですよね? 落ち着いてて『大人の女性』って感じですし!」

 「そんな事ないわよ。私、家に居るの好きだし職場も女性ばかりだから出会いなんてあまりないのよね」


 流石に蓮さま推しのアニメ好きとは言えなかったけど、成田くんには私、少なくとも悪い印象は持たれて無さそうだわ♪




 ※



 

 「ふふふっ、ありがとうございました♪」

 「あははっ、なんか今日は立場が逆で変な感じですね!」

 

 「妹さん、喜んでくれるといーわね」

 「大丈夫です! 妹には『綺麗なお姉さんが選んでくれた』って言っておきますから!」


 もうっ! そんな良い声でサラッと何言ってるのよ!

 成田くんは爽やかな笑顔を見せて手を振り店を後にした。




 すると、ゆみちゃんがスルスルっと近づいて来て私に抱きつき、


 「最近いづみちゃんの機嫌が良いのって、彼でしょ? あんなイケメン何処で知り合ったんですか? ねぇねぇ♪」

 「ウチのマンションの隣に出来たコンビニの店員さんなだけよ! もうっ、何勘違いしてるのよー!?」

 「またまたー! 新しい推しって彼の事でしょ? ちょっと蓮さまに声も似てたし、何より大好きオーラ出しまくりでしたよ♡」


 えっ、嘘っ? ゆみちゃんから見てそんな風に見えてたの?


 「えっ、それじゃ成田くんにもバレてるの?」

 「んー、それは無いんじゃない? 彼、鈍感そうだし、それに彼もいづみちゃんの事まんざらでも無さそうでしたよ」


 ニヒヒと笑いながらゆみちゃんはアクセサリーを見ているお客さんに声を掛けに行ってしまった。


 もうっ、そんな事言われたら嫌でも意識しちゃうじゃない! 


 でも、もう少しだけ仲良くなれたらいーな。


 

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