表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/7

(お弁当)あっためますか?


 あーびっくりした!!



 私は部屋に戻りソファーに倒れ込んだ。


 あぁ、まだ胸がドキドキしてる。

 あの甘くて優しい声と両手を掴まれた感触がまだ残ってる。


 私、やっぱりあの声、……好き♡


 蓮さまの事は勿論好きだけど、成田くんの声はなんか、……やっぱりこれはもうひと聞き惚れよね!


 こうやって目を閉じて思い出すだけで顔が熱くなる。どうしよう、こんな気持ちになったの久しぶり過ぎてどうしたらいいか分かんないよー!?


 もう、せっかく隣にコンビニが出来たってのに、これじゃ気軽になんか入れないじゃない? おまけに私のちっぽけなプライドのせいでお弁当も買えなかったし……。


 お腹が空き過ぎてもう一歩も動きたくなくなったので、結局ファーストフードのデリバリーを頼んでしまった。何やってんの私




 ※




 届いたポテトを摘みながら、また成田くんの声を思い出してニヤニヤしてしまった。



 ……ちょっと待って! 彼、声優さんじゃないのよ? ただの一般人なんだから!

 じゃあ私、これからどーしたいの? 成田くんと付き合いたいの?


 ……イヤ、違うわ! これは推しを応援するのと同じ感覚だもん。恋愛感情では無いわ。だってまだ名前と声しか知らないんだもん。

 

 とりあえず気軽に会話位は出来る様な間柄にはなりたいかな? 



 すっかり隣のコンビニはすっぴんでも気軽に行けると言う当初の目的とはまるで違う、新しく出来た推しに会えると言うお渡し会場になってしまった。


 そして次の日も、また次の日も私は仕事帰りに駅前で夕食を済ませた後、用も無いのに例のコンビニ『スマイルワン』に通って、何を買うでもなく彼の声に耳を傾けていた。





 ※





 「いらっしゃいませ〜♪」



 相変わらず爽やかねー! それに今日はレジ担当なのね♪

 だからなのか店内は女性客でごった返している。みんな考える事は同じなのね。


 このコンビニ、駅前のコンビニよりも広くて駐車場もある。大手チェーン店には負けるけど品揃えもまずまずでイートインスペースもある。

 お弁当も種類こそ少ないけど量も多くて値段も安い。これは男の人は嬉しいんじゃないかしら?


 でもっ、見栄っ張りな私は成田くんの前でコンビニ弁当なんて買えない!

 綺麗なお姉さんは自炊しないといけないのよ! 全然しないけど。それに偏見なのも分かってる!!


 とりあえず声が聞きたい私はレジ付近を陣取り、買う気もない商品を手に取っては戻し、彼の声に耳を集中させていた。



 「ありがとうございました、またお越し下さいませー♪」


 本っ当滑舌良いわね! 一字一句はっきり聞こえて来るわ!

 

 「ばいばい、またきてねー♪」


 小っちゃい子にはあんな可愛い声出すんだー!


 「それでしたら、あちらの棚にありますよ」


 年配の方には落ち着いた声で丁寧なのね。凄いわ、人によって声色を使い分けてる。ねぇ、本当にあなた素人なの?

 そして極めつけは……、


 「(お弁当)あっためますか?」


 そう言って微笑む彼に私の胸は撃ち抜かれた!

 分かってる! あっためるのはお弁当だって分かってるからっ!!

 それでも彼に優しく包まれるのを想像してしまう。 あぁもう私、かなり重症よね?


 「(お弁当)あっためますか?」

 「(お弁当)あっためようか?」

 「こちらのお弁当、温めましょうか?」



 あーっ、三連発っ! しかも三者三様!! 成田くん、あなた楽しんでるでしょ?


 ゔぅっっ、私も、……私も言われたい。でもそれにはお弁当を購入しないといけない。どーする?


 私はレジ前のお菓子コーナーでグミを取っ替え引っ替えしながら葛藤していた。




 よしっ、決めた! お弁当を買おう! 綺麗なお姉さんだってたまにはコンビニのお弁当食べるわよ、ねぇ?

 意を決してお弁当コーナーへ向かう。しかし、もう既に残ってるのは高校生男子が食べそうなメガカツ丼や、温める必要のないお寿司……、詰んだわ。


 何かあっためる物無いかしら? サラダ、サンドイッチ……、もうっ、何も無いじゃない!


 あっ、そうだっ! 確か東北地方のコンビニはおにぎりをあっためるって聞いた事あるわ!

 でもここは東京、果たして成田くんはあっためてくれるのかしら?


 駄目だったら仕方ない、これは賭けよ!


 私は鮭と焼きたらこと言う、温めたら美味しいだろうと思える具材をチョイスして、成田くんの待つレジへと向かう。すると……、


 「あっ、いらっしゃいませ『特賞さん』っ!」


 成田くんに認知されてるー! ……けど私、絶対従業員の間で『特賞さん』ってあだ名で呼ばれてるわ!


 「ちょっ、ちょっと!? 恥ずかしいからその呼び方やめてよ! 私は鈴森、鈴森いづみですっ!」


 何私っ、聞かれても居ないのに何で自己紹介してるのよー? 絶対私、顔真っ赤になってるわ!


 「あははっ、()()さんですね、覚えちゃいましたよ。これからも宜しくお願いしますね! ちなみに俺は成田です!」


 そう言って胸を張りネームプレートを見せつけた。

 そんな事よりどーなの、私をあっためるの?


 「レジ袋いりますか?」

 「はい、……お願いします」


 成田くんはおにぎりをスキャンしてレジ袋に詰めようとしている。だっ駄目ぇ〜っ!!


 咄嗟に心の声が出てしまった!


 「成田くん、…………あっためて」

 「ゔぅっっ!?」


 ちがーう! 私が言ってどーすんのよっ?

 すると、何故か成田くんは顔を真っ赤にして、


 「鈴森さん、今のは反則ですよー! そんな切ない顔で『あっためて♡』なんて言われたら俺、誤解しちゃいますよ!」


 えっ、……どーゆー事? 


 「てか、鈴森さんっておにぎりあっため派なんですね。実は俺もなんですよ!」


 とか言いながらレンジにおにぎりを入れて温め出した。うーん、なんか違うんだよなー



 

 ※




 「はい、お待たせしました。熱いから気をつけて!」

 

 おにぎりを二個入れたレジ袋を渡されて本日のお渡し会は終了した。ぐすん


 「ありがとうございましたー♪」


 次はもう普通にお弁当買おう。変な見栄張って馬鹿みたいだったわ。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ