衝撃の事実!!
「あれっ!? ここは……」
小石川さんと二人、タクシーに乗り込み着いた先は、『御船』だった。
扉を開けると例の支配人が頭を下げて奥の座敷に案内してくれた。
「先日はありがとうございました!」
「いえいえ、ごゆっくりどうぞ」
俺達の会話を聞いて小石川さんは少し驚いた顔で、
「へぇ〜、来た事あるんだ〜! 蓮とでしょ? てか歩夢くんよっぽど蓮に気に入られてるんだねぇ〜、この店は蓮が心を許した人以外誘わないもん」
そう言って貰えるなんて夢の様だ! 蓮さん、なんだかんだで俺の事大好きなんじゃね? ん?
「……て事は小石川さんにも心を許してるって事ですよねっ、ねっ?」
小石川さんは少し顔を赤らめて、
「そりゃそーよ! 何年共演してラジオやってたと思ってるのよ?」
「あはははっ、ですよねー! 俺っ、そのラジオ聴くの毎週楽しみにしてましたよ! 夫婦漫才みたいで最高でした! あーまたやってくれないかなー? 俺っ、贔屓目もありますけど色々なアニメ見てて蓮さんの相手役は小石川さんが一番なんですよねー♪」
「うふふっ、ありがと。それじゃ今後歩夢くんの相手は私より夏希ちゃんになりそうね、二人、なんか良いコンビになりそうだもん」
そして蓮さんと来た時の様に頼んでもいないのに次々と料理が運ばれて来た。
「うふふっ、それじゃ……かんぱ〜い!」
「急遽代役、お疲れ様でしたぁ〜!!」
二人でビールを一気に飲み干し、俺は二杯目もビール、小石川さんは日本酒を頼んでいた。かなり酒強そうだな?
「夏希は恋人役って言うより『ライバル』って方がしっくり来るかな? 俺達養成所からの同期で何かにつけて張り合ってたからなー」
「それじゃ歩夢くんの恋人役はこれから私が独占しちゃおうかな〜? 私ねー、ゴメンだけど歩夢くんの事知ったの『バディーズ』からなのよ。良い声してるし、気持ちの入った演技するなぁーって!」
小石川さん、よく喋るし美味しそうに食べる、そしてそれ以上に酒を飲む。清純派の役を演じる時の彼女からは想像もつかないが、人間味があって飾らない姿を見ていると、話している内にどんどん魅力に引き込まれていった。
「ん? ……なんか私ばっか喋ってる? ゴメンねぇ、蓮にも良く言われるんだ。気がつくと私ばっか喋ってるって♪」
「それは小石川さんの話が面白くて引き込まれるからみんな自然と聞く側に回ってるんですよ。だって俺、今凄く楽しいですもん!」
そう言うと小石川さんはヨタヨタと歩いて俺の隣に腰を下ろして、
「歩夢くんは優しいなぁ、そーゆー事言うとお姉さん好きになっちゃうわよ?」
えっっ!? まさかの展開!? 昨日の小日向さんといい小石川さんまでって、俺っ、モテ期が来てるのか? すると……、小石川さんは何故か俺の頭をペチペチ叩きながら、
「最近さぁ〜、蓮ったら口を開けは歩夢くんの事ばっかだったんだよ〜、だから知ってんだ! んで、彼女とはあれからどーなったの? もう会った事無かった時から聞いてたから気になって気になって♡」
蓮さんっ!? 何で小石川さんに会った事も無かった俺のプライベートな事まで喋ってんだ??
「蓮さんとそんなに親密な仲なんですか? ……ってもしかして小石川さんっ!?」
「あははは〜、私の『今』の本名は『三上乙葉』、蓮の奥さんで〜す! だから歩夢くんと共演出来る事になって本当嬉しかったのよねぇ〜♡」
まさか蓮さんの奥さんだったなんて! 一時噂にはなってたけど本当に結婚してたなんて! いづみさんが聞いたらどんな顔するんだろ?
「……んで、そんな事よりど〜なのよ? 『いづみちゃん』とはベロチューの後発展あったの? ねぇ?」
最早女性ナンバーワン声優と言われてるなんて思えない程の噂好きのお姉さんになってしまった。少しでも惹かれていた自分が恥ずかしいよ。
「んぁぁ、もうっ!! 蓮さんはこの現場で会うまで会った事の無い俺の事を、何ベラベラ喋ってるんだよ?」
するとフニャフニャになってた小石川さんは俺の隣で姿勢を正して、
「帰りにちゃんと言おうと思ってだけど今言っておくね。
……蓮、春に事務所辞めるでしょ? そのせいでお世話になってた事務所が傾いたらってずっと気にしてて……、そんな中歩夢くんと出会って、これで安心して辞められるって喜んでたのよ。
だから私、歩夢くんに凄い興味があったの! やっぱり蓮の目は間違って無かったわ! アフレコでのあなたの姿を見て、一瞬蓮と被ったもん。歩夢くん、あと二、三年の内にあなたの時代が来るわよ! だから変な誘惑に負けないで頑張ってね!」
蓮さん、……事務所辞めた後の事まで考えてたのか。蓮さんと小石川さんにここまで言われたら俺はもうやるしかない! どの位かは分からないけど俺の声と演技で皆を笑顔にするんだ!!
俺は思わず小石川さんに抱きついていた。
「小石川さんっ、俺っ、頑張りますっ!!」
「うふふっ、ちなみに蓮の立ち上げる新しい事務所の社長は私だから、その時結婚も発表しないと辻褄が合わないわよねー♪」
小石川さんは俺を抱きしめて頭を優しく撫でて笑った。
そこへ、いきなり襖が開き……、
「あっ、歩夢っ!?」
「おいっ、お前っ、……俺の嫁に何やってんだ!?」
なんと蓮さんと影山さんが現れた!
俺は慌てて小石川さんから離れて正座をし、
「なっ、何で来たんですか!? 影山さんまでっ!?」
慌てる俺を見て三人で顔を見合わせて大笑いをしている。……もしかして俺、ハメられた?
「乙葉が歩夢と『御船』に行くって連絡があったからさ、だったら丁度良いから今後の事も踏まえて話そうと思って来たんだよ! そしたら俺の嫁に抱きつきやがって! いづみちゃんに報告だな!」
「私は別に来る必要ないのに蓮が一緒に来てくれって言うから……でも、この関係は知ってた方が歩夢にとって良い事だと思うし」
二人は俺を見てニヤニヤしながら交互に話した。
「やっ、疾しい気持ちはこれっぽっちも無いです! 信じてくださいっ!」
すると頬っぺをぷぅと膨らませて小石川さんが、
「抱きついておいてそれは無いんじゃ無いの? 私っ、そんなに女として魅力無いかしら?」
「そっ、そんな事無いです! 柔らかかったし、いづみさんよりも大きいし……」
「あー、お前最低ー! いづみちゃんに報告その二だな、こりゃ!」
「あー、何を言っても駄目な状況だぁー!!」
※
その後俺達は和解? をし、改めて四人で乾杯をして、蓮さんは俺に小石川さんとの報告と今後二人で立ち上げる事務所の話をした。
小石川さんも声優の仕事をする時は今の事務所からという事で話がついており、それでも暫くは社長業に専念するみたいだ。
「まぁ、春からはそーゆー事だ。歩夢、春アニメも一本主演があるしな、今年は映画にアニメにブレイクしてくれよな! 社長や萌香の為にも!」
「萌香って言うなっ! 蓮が心配しなくても歩夢なら絶対大丈夫よ! 仕事においては真面目だもん」
……ん、影山さん? 褒めてる、貶してる?
「私としては、ベロチュー……いづみちゃんと交際宣言なり結婚しても逆に良いと思うのよね。色恋でファンを集めるのなんて、この先出て来る若手達と勝負する必要ない位には声のニーズはあると思うのよね」
するとずっと黙っていた小石川さんまで、
「うん、私も歩夢くんの声を初めて『バディーズ』で聞いた時『あっ!』って思ったもん。『これは売れるぞ』ってね! 中々無いよ〜、私がこんな事言うの!」
なんかこんなに凄い人達から褒められてくすぐったいよ、めっちゃ嬉しいけど!
「だから心配なのは今回みたいな小日向のぞみみたいなポッと出て消える様な女に歩夢の人生狂わされたく無いの! 声優業界にもマイナスだし!」
最後を締めくくる様に蓮さんは俺の目を見て真面目に言った。
「今後の事はちゃんといづみちゃんと二人で相談してさ、歩夢が仕事もプライベートも幸せになってくれるのが俺達は嬉しいんだよ!」
みんなが優しい目で俺を見ている。
こんな素敵な人達に支えられて俺は感謝してもしきれない位だ。
あとは俺がちゃんとしなきゃ!!
第五章 終わり




