かれんの告白
エントランスを抜けエレベーターに乗り、いつもは無意識のうちに五のボタンを押すんだけど今日は間違えない様に七のボタンを押す。本当に会おうと思ったらいつでも会えるんだけど、二人の愛の巣に乗り込む程野暮じゃないわ。
七階で扉が開き、そのまま歩いて角の部屋に向かう。インターホンを鳴らすとかったるそうな声がした。
「……はぁい」
「私、今玄関の前に居るの」
「いづみん? ごめん、今開けるわ!」
玄関を開けると私とお揃いで買ったライトグリーンのパジャマ姿のかれんが驚いた顔で迎えてくれた。
「えへへ、久しぶり! 有給取ったから今日休みなんだー♪」
なんか元カノにあった気分で私はかれんに抱きついた。
「会いたかったよ〜♡」
「いきなりかよっ!? ウチらほぼ毎日連絡取り合ってんじゃん?」
「あれ? またおっぱい大っきくなったんじゃない? こりゃ相当梅里くんに揉まれまくってんな?
「やめろ、こんな所で揉むなって! とりあえず中入って!」
玄関前で茶番を繰り広げた後、リビングにお邪魔した。 いつも玄関前でタッパー返すだけだったから中に入るの初めてなのよね。
※
「初めて中に入ったけど、角部屋だとウチより広いのねー」
「この部屋は1LDKだからねー、寝室は奥の扉だよ」
そっか、だから物が多くても狭く見えなかったのね。
「……なんかこの前まで私の部屋にあったものがこの部屋にあるのってなんか複雑な心境だわ」
「あはは、なにその元カレムーブは? それより珍しいね、蓮さまのイベントでも無いのに休むなんて」
「えへへ、実は今日、歩夢くんの誕生日なんだ。それで昨日の夜からご飯食べて夜景の綺麗なホテルでお泊まりしてさっき帰って来たの♪」
するとかれん、私の両手を握って嬉しそうに、
「やったじゃん! てか歩夢がんばったじゃん! そっか、誕生日だったんだ、忘れてたよ!」
「もうっ、かれんが私の為に聞き出してくれたんでしょ?
「あははっ、そーだった! もうあれから一年が経つのかー!? ……て事は、遂にヤッたか、オイ?」
相変わらず下品なんだから!
「うーん、それがね…………」
私は昨日の夜から歩夢くんと別れる迄の事を時系列で話していった。
「ギャハハハッ!! マジで? ウケる! 本当歩夢ってツメが甘いって言うか、実はアイツマジ童貞なんじゃない?」
「さっ、流石にそれは無い……と思うけど。
でっ、でも今回は私が悪いと思うの、歩夢くん寝る時間も少なくて疲れてたし、ほらっ、せっかくかれんに教わったからマッサージしてあげたかったし!」
「だからって目の前にシャワーまで浴びて準備万端な女が居るってのに寝るか? 私が男だったらマッサージされたらそのまま始まるっての!」
う〜ん、口は悪いけどかれんの言ってる事も分かるわ。
「いづみんもいづみんよ! マッサージとか言っておっぱい当てたりとか歩夢の触ってあげなきゃ駄目っしょ? 私のはしょっちゅう触ってるクセに!」
「私っ、……その、あまりにも久しぶり過ぎてそこまで頭が回らなかったの! そっか、……私がもっと積極的に行かなきゃ駄目だったのね」
ガックリと肩を落とした私の頭をかれんは撫でて、
「でもさー、いづみん頑張ったじゃん! するつもりだったんだろ? ちょっと前までは歩夢の為とか言って生殺し状態だったのに!」
「生殺しなんて! ……うん、でもそーかも。私も歩夢くんに抱きしめられてキスされてから、もう抑えが効かなくなっちゃってたもん」
かれんは『やっと白状したか!』と言わんばかりの顔で笑いながら、
「いーんじゃない! それが普通だって! それに次はもう歩夢だってヤル気満々だし、今度会えるの年末だっけ? もう今まで溜まってた分搾り取って来なよ、イヒヒッ♪」
かれんに全部ぶちまけたら、なんかモヤモヤしてた気持ちがスッキリと晴れていった。やっぱり親友っていいな、口は悪いけど。
「それじゃ今度は私の番だな、まずはいづみん、私の親友になってくれてありがとう!」
そう言ってかれんは正座をし、三つ指をついて私に頭を下げた。
「えっ!? ……何よ改まって!」
「そしてあっくんを紹介してくれて本当にありがとう!」
「うん。ちょっとだけ寂しいけど、二人が上手く行って、かれんが幸せそうで私も嬉しいよ!」
「私ね、年が明けたらあっくんと結婚するわ」
えっ!? ……えぇーーーっっ!!??
私が目をぱちくりしていると、かれんは少し照れ臭そうに、
「なんか付き合って半年なんだけど、私の事物凄く大切にしてくれるし、それにあの親父とも仲良くしてくれて、コンビニも継いでくれるって! ……それに昨日病院行ったらさ、お腹に赤ちゃんが居るって! そしたらあっくん、泣いて喜んでくれて! ……っていづみんまでっ!?」
「かれんっ! 良かったね! おめでとうっ!!」
私は涙でぐしょぐしょになりながらかれんを抱きしめた。
「嬉しい! 嬉しいよぅ!! こんな嬉しい事ってある!?」
「いづみんっ、苦しいって! もう泣くなよっ、そんな泣かれたら……ひっくっ」
「かれんだって酷い顔で泣いてるじゃない!」
「酷い顔言うなしっ! ひっく」
私達はお互いの酷い顔を見て笑いながら抱き合った。他人の幸せがこんなにも嬉しく思えるなんて! やっぱりかれんは大切な親友だわ!
それもあのコンビニが出来たからなのよねー
かれんや歩夢くんが居なくても、もうちょっとだけ顔出そうかな?




