歩夢くんのバースデー!! その2
〜誕生日当日〜
昨日メッセで歩夢くんが明日の時間と場所を指定して来た。あなたの誕生日よ? 本当だったら私が仕切らなきゃ駄目なのになぁ……。でも、本人が行きたい所みたいだからいっか!
「んふふ♪ いづみちゃん、明日有給とったのね♡」
「何よその顔、いーでしょ? 私蓮さまイベント以外有給使って無いんだから!」
「明後日詳しく聞かせてもらいますねー! それじゃ楽しんでねー、お疲れ様っ♪」
「ありがとうゆみちゃん、お疲れ様っ!」
やっと歩夢くんに会える! 今日なんて仕事がまるで手につかなかったわ!
私は北風の吹く寒い中、コートの襟を立て足取りも軽く駅の改札に向かって歩いて行った。
※
「えっと、二丁目三番地……って、ここ!?」
都内のいわゆる高級住宅街から少し道を外れた所にこじんまりとした上品なお店があった。
店の名前は『御船』
……歩夢くん大丈夫? なんか凄い高級感漂ってるわよ? 敷居が高そうで私なんかが気軽に入れる雰囲気じゃないわ! もしかして無理しちゃった?
歩夢くんはもう着いてるから入って来てなんて言ってるけど、九時を少し過ぎてしまったわ!
もしかして時間通りに来ないと入れませんとか言われないかしら?
恐る恐る扉を開けると、入り口に着物を来た上品な女の人が居たので名前を告げると丁寧に頭を下げて、
「成田様のお連れの方ですね、お待ちしておりました。御案内致します」
「はっ、はいっ」
思わず背筋が伸びる。
この店絶対美味しいのは分かってるけど、こんな所でご飯なんて緊張して食べた気がしないわよ! 歩夢くんったら何考えてるのよーっ!?
「こちらで御座います」
襖を開けるとそこには新鮮な魚介類に鍋、まるで高級旅館で食べる様な豪華な料理が目に飛び込んで来た!
「あっ、いづみさん! お仕事お疲れ様です♪」
「あっ、はい。歩夢くんこそお疲れ様……」
「それでは失礼致します」
丁寧に襖を閉める女の人に思わず深々と頭を下げてしまった。そして居なくなったのを確認して歩夢くんに詰め寄った。
「ちょ、ちょっと! こんな高そうなお店なんて聞いてないわよ! これじゃ落ち着く所か緊張してゆっくり出来ないじゃない?」
すると歩夢くんは笑いながら、
「落ち着いていづみさん! この店はウチの社長や蓮さんが御用達の店で、ここなら人目も気にせず話が出来るから安心だって、それに滅茶苦茶美味いからいづみさんにも食べて欲しかったんだ!」
「でもでもっ、とんでもなく高そうよ? 私、そこまで持ち合わせ無いんだけど……」
私は座布団に座り、辺りをキョロキョロ落ち着きなく見回して言うと、
「大丈夫です、今日は誕生日祝いで蓮さんに好きなだけ食べて飲んでいいからと言われてますから! 遠慮なくいただきましょう!」
「蓮さまがっ!? えっと、……じゃあお言葉に甘えちゃおうかな?」
「はい! とりあえず乾杯しましょう♪」
歩夢くんは私にグラスを持たせてビールを注いでくれた。私も歩夢くんにビールを注いで顔を見合わせた。
「ふふっ、それじゃ歩夢くん、二十五歳の誕生日おめでとう!! かんぱ〜い♪」
「ありがとういづみさん、二人で祝えるなんて思って無かったから本当に嬉しいよ! 先ずは食べてみてよ! この前蓮さんに連れて来てもらった話したよね? それがこの店なんだ! 滅茶苦茶美味いからさー♪」
まるで自分の行きつけの様な勢いで捲し立てる。見てるだけで目が幸せになりそうな御造りやお刺身に自然と手が伸びた。
「美味し〜〜いっ!! 幸せ♡」
頬っぺが落ちそうとはこう言う事を言うのね! 本当に落ちてしまいそうなので思わず頬に手を当てた。
「でしょ〜っ!? 俺なんて最初、頼んでも居ないのに次々と料理が運ばれて来てビビったよ!」
「流石は社長に蓮さまだわ! こんな美味しいの、私、今まで食べた事ないもの!」
私達は最近の近況を話しながらも箸を伸ばし、その度に美味しいって言うもんだから話がまるで進まない。
「えっと、……何処まで話したっけ?」
「あはははっ、もう話すのは後にして食べようよ! それよりこれ、この間滅茶苦茶美味くておかわりしちゃったよ♪」
結局私達はお腹がいっぱいになるまで食べ、その都度感想を言い合っていた。
※
「はぁ〜っ、美味しかったぁ〜♪」
「俺、この前連れてきて貰った時から絶対いづみさんとこの店来たいと思ってたんだ!」
「でもこれだけの料理頼んだらとんでもない額になりそうね?」
「そうだよね、今度来る時はもっと頑張って稼がないとなー」
すると襖の向こうから声がして、支配人らしき御老人が顔を出し、
「成田歩夢様、お誕生日おめでとう御座います。こちらささやかですがどうぞお召し上がり下さい」
白いシンプルなお皿に綺麗に盛り付けられたスイーツを持って来てくれた!!
「うわぁ、凄い綺麗だ! ありがとうございます! 俺も有名になってここが行きつけの店になる様に頑張ります!!」
「私達はいつでもお待ちしておりますよ! ははは、三上様も倉木様と初めて来た時に同じ事をおっしゃってましたよ。それでは、ごゆっくりどうぞ」
御老人はお茶目にウインクをして襖を閉めた。
「なんかあったかいお店よね、最初は緊張してガチガチだったけど今は凄く居心地がいいわ」
「俺も最初緊張したなー、だってこの店で俺、初めて蓮さんって呼ぶ様になったんだから!」
「いつか歩夢くんもこのお店に後輩を連れてくる様になるのかなぁ? なんかいーね、そーゆーの♪」
当然の事ながらスイーツも絶品だった! スイーツは別腹とはよく言った物で、これならいくらでも食べられそうだわ♪
「そー言えばいづみさん、普通に飲んでるけど酔っ払って無いですね?」
「あっ、あの時はっ! かれんのペースに合わせて飲み過ぎたのよ! 自分のペースで飲んでたらあんな事にはならないからっ!!」
歩夢くんはイタズラっ子の様な顔をして、
「あーぁ、また甘えん坊のいづみさん見たかったなぁー♪」
「もうっ、そんな事言うならまた噛みついちゃうからねっ!」
あははは あはははっ♪
二人で笑い合った。そー言えばあの時、初めてちゃんと会話したんだっけ。なんか凄い昔の様に感じるわ。……あっ、そうだ!
「ごめん歩夢くん、最初に渡そうと思ってたんだけどお店の雰囲気に圧倒されて渡すの忘れちゃってたわ、はい、プレゼント♪」
私はバックから綺麗にラッピングされた箱を渡した。
「やったぁー、ありがとうございます! 開けて見てもいいかな?」
「うん。きっと似合うと思うよ!」
丁寧にラッピングを取って嬉しそうに箱を開ける。
「うわぁーっ、シルバーのネックレスだ!」
「ふふふっ、見て! 私もお揃いの買ったんだ。これなら指輪と違って目立たないし、会えなくても繋がってる気がするかな、なんてね♪」
歩夢くんは私の首につけてあるネックレスと見比べると、急に真顔になって、
「……じゃあさ、いづみさん。このネックレス俺につけてくれないかな?」
「うん。……いいわよ」
私は歩夢くんの前に座り、ネックレスを手に取り歩夢くんの首に手を回した。
「はい、つけたわよ! うん、やっぱり似合って……あっっ!?
そのまま強く抱きしめられた。
「いづみさん、ありがとう! これがあればどんなに大変でも頑張れそうだよ」
「うん、私も寂しい時これを見れば繋がってるって思うから乗り切れそうよ」
「いづみさん……」
「歩夢……くん」
私達はどちらともなく唇を重ね合った。
「あの時から俺、……ずっといづみさんとキスしたかったんだ」
「もうっ、……私だって♡」
個室だって事を良い事に私達は触れ合い、抱き合いながら何度も唇を重ねた。
すると歩夢くんは私を見つめながら、とろける様な甘い声で…………、
「今夜、部屋を取ってあるんですけど、……朝まで一緒に居てくれませんか?」




