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閑話 ゆみちゃんのライブ《後編》


 あれから週二回、三上さんはどんなに忙しくても必ず私達の練習に付き合ってくれた。私が頼んでおいて何だけど、自分のレコーディングに『バディーズ』関連の取材やラジオ、そして自分のラジオに声の仕事と、殺人的なスケジュールの中で本当申し訳ない気持ちでいっぱいだ。


 勿論それは他のメンバーも理解していて、しかも初対面で三上さんに簡単に骨抜きにされてしまった。

 みんな三上さんに褒められたくて今まで以上に練習しているのが分かる。


 そしてあの甘い声で、『頑張ったな!』と言って貰い、三上さんが帰った後みんなヘニョヘニョになるのが恒例となっていた。……ねぇみんな、そんなんでいーの?


 しかも今まで聞いてなかった三上さんの楽曲も聴いており、三上さんの居ない練習日に演奏したりしている。どんだけ惚れちゃったの? ……まぁ私も全曲弾けるけど。




 ※




 いよいよライブ前日、練習終わりになんと三上さんが食事に連れてってくれた! しかも行きつけの隠れ家的な所で! もう、どんだけ優しいの! そしていつ寝てるの!?


 「さぁ、今夜は無礼講だ! 思いっきり食べて明日に備えてしっかり寝ろよ! 間違っても男の上に乗ってえっちな事とかすんじゃねーぞ! 体力使うからな!」


 「蓮さま以外となんてしたくないもーん♡」

 「私もー♡」

 「私だって♡」


 もうすっかり他のメンバーも打ち解けて、三上さんのエグい下ネタにも喜んで返す始末。しかも私以外みんな蓮さまとか呼んでるし!? どーゆー事よ?


 

 美味しいお肉にお魚、そしてビール!!


 私達は遠慮の二文字を何処かに置いて来てしまったかの様に食べまくった。



 「いよいよ明日だな! 俺も歩夢もなるべく早く駆けつけるつもりだけど、間に合わなかったらゴメンな。

 まぁ俺達なんか気にせず、目の前の客に今までやって来た事全てぶつけたら、絶対新しい道が開けると俺は信じてる! 頑張れよ!」


 「「「「はいっ! 今までありがとうございましたっ!」」」」


 三上さんは知り合いに頼んでこのライブを無料で配信すると言っていた。これで今まで以上に大勢の人が私達の音を聞く事が出来る。もう感謝してもしきれない程の事をしてくれている。しかも無償で!


 「三上さん、私、感謝の気持ちが溢れて止まりません! 絶対っ、絶対メジャーになって恩返しします!」

 「おっ、体で返すのか? 生憎俺は間に合ってるからさー、他ので返してくれよ♪」


 もうっ、せっかく真面目に言ったのにーっ!!

 すると三上さんは私の頭を柔らかくポンポンと叩いて、


 「俺はお前達から忘れてた必死さとか情熱を沢山貰ってるんだよ! 俺もこの先やりたい事があるからさ、逆にありがとうな!」


 そんな言葉を優しい声で掛けられたら抱きつくしか無いじゃない!


 「あーん、蓮さまっ、やっぱり好きっ!!」


 「ちょっとゆみっ! 何どさくさに紛れて抱きついてるのよ! 次は私よ!」

 「一人五秒ね! 時間厳守だからっ!」

 「二周目無し? それともアリ!?」


 「何だお前ら〜っ、それじゃこれからホテルで五Pするかぁ〜?」


 「「「「する〜〜〜っ♡」」」」




 ※




 いよいよライブ本番五分前、三上さんと歩夢くんはギリギリ間に合うかもとメッセが来た。いづみちゃんはもみくちゃにされそうだから配信で見るとか言ってたし……。せっかくの晴れ舞台なのにちょっと残念。でも後で二人は動画で見られるからいっか♪


 「さぁ、これからの私達と、蓮さまの為にも気合い入れて行くよ! ういーあぁー!」


 「「「「らふぃんどーるずぅー!!」」」」


 私達がステージに上がると大歓声が沸き起こった。


 うわぁ、こんなに沢山の人が来てくれたんだ!

 でも、不思議と緊張はしなかった。多分他のメンバーも同じだろう。だってあれだけ三上さんが親身になって練習に付き合ってくれてんだもん!


 「みなさん、こんばんはぁー! らふぃんどーるずですっ! 今までより更にパワーアップした私達に最後まで付き合ってくれよなぁー!!」


 「「「「オーーーッ!!」」」」


 そしてドラムのカウントと共に音の塊を会場の全ての人にぶつける!


 ワン、トゥ、スリー、フォー!!


 ジャーン! ジャジャジャーン!!♪




 ※




 気持ちいい!! もっと、もっと気持ち良くなりたい!!


 今までにない快感を体で感じ、音を奏でる。メンバーに目配せすると皆、考えてる事は同じみたいだ!


 「まだまだイクよ〜っ♡」


 中指を立てながら可愛い声で煽るアリサの背中を見ながら、『体は熱くなっても頭は冷静に』三上さんから貰ったアドバイスに答えるように、練習の成果を客席にぶつけて行く!


 「もっともっとぉ〜♡」

 

 「「「「ウォーーーーッッ!!」」」」


 普段クールなレイまでもが、笑顔でお尻を振りながらギターをかき鳴らしている。私だって負けないんだからっ!


 客席にお尻を向けて、ドラムのサキと笑いながらリズムを刻む。ちょっとやり過ぎかしら?


 「おっけー! ありがとーっ!! これがラストだから全力でかかってこいよーーっっ!!」

 



 ※




 「みんなありがとー! とっても気持ち良かったよぉ〜♡」


 みんなが袖に下がってもアリサは最後まで投げキッスをしていた。サービスし過ぎだってば!


 下がった途端にアンコールの大合唱が聞こえる。

 一旦私達は楽屋に戻るとそこには三上さんと歩夢くん、それに配信を見るからと言っていたいづみちゃんまでが拍手で迎えてくれた。


 「「「あーーん、蓮さまぁ♡」」」


 獲物を見つけたとばかりにこぞって抱きつく。


 「やめろおいっ! 汗くせーよ!」


 なんて言いながらとても嬉しそうだ!


 「ごめんな、ラストの曲しか見られなかったけど、最高だったよ、みんな、よく頑張ったな!」


 そんな優しい声で言われたらみんなとろけちゃうわよ、私もだけど!


 「ゆみちゃん、カッコ良かったわよ! 歩夢くんが絶対生で見た方がいいって言うから、後ろから見てたんだ♪」


 そう言いながらなんで歩夢くんの腕に纏わりついてるの? いーけど!


 すると突然サキが、三上さんと歩夢くんに向かってとんでもない事を言い出した。


 「あの、アンコールなんですけど、私達の演奏で『Perfect buddies』歌ってくれませんか?」


 するとアリサとレイも、


 「「お願いします!!」」


 三上さんの居ない日の練習で良くやってたけど、ぶっつけ本番よ? ……でもっ!


 「三上さん、歩夢くん! 私達とバディになって下さいっ!!」


 三上さんは歩夢くんと顔を合わせると、ニヤリと笑って、


 「それじゃやるか、歩夢っ!」

 「はいっ、蓮さんっ!」


 「やったぁー!! 嬉しいぃーーっ!!」


 …………私達よりも一番喜んでいたのはいづみちゃんだった。




 ※




 「「「アンコール! アンコール!」」」

 「「「アンコール! アンコール!」」」



 ウォーーーーッッ!!


 私達がステージに戻ると地鳴りの様な歓声と拍手が沸き起こった。嬉しいー♪


 そしてアリサが叫んだ!


 「みんなぁー、今日はありがとーっ!! すっごい気持ち良かったよぉーーー!!」


 ウォーーーーッッ!!


 「アンコールは私達が成長する為に力をくれた人と一緒にヤリたいと思いまーーす♡」


 もうっ、アリサエロ過ぎだってば!!


 「それじゃ最後の曲イクよーー! 『Perfect buddies!!』」


 イントロを奏でると袖から三上さんと歩夢くんが出て来て会場は歓声と悲鳴に包まれた!


 流石にフロントに五人も並ぶと狭いので私はサキと後方でリズムを刻みながら、この夢の様な光景を堪能した。


 そしてアリサはここぞとばかりにタンバリンを叩きながら二人に纏わりついている。今頃いづみちゃん、キーッてなってるわ、ふふっ♪


 そしてサビを三人で歌い上げ、間奏でレイのギターがうなりを上げる。いーとこ持ってくなぁー!


 そしてラスサビをお客さんと一緒に大合唱して私達のライブは幕を下ろした。





 ※





 〜半年後〜



 私達はあのライブの反響が凄くて、その後倍々で集客を増やしていった。来月からは三千人規模の全国ツアーが始まる。


 ……メジャーデビューはと言うと、三上さんが独立して会社を立ち上げ、新しいレーベル『Shangri-Laシャングリラ』を作り、めでたくそこの一員となった。





 「三上さん、夢、叶いました! 口に出して言い続けると夢って叶うものなんですね!」

 「そーだな! でも、努力あってこそだからな! これからもそれは忘れるなよ!」


 「はい! 私っ、次の目標は三上さんのお嫁さんになる事です! えへっ、言っちゃった♡」

 「お前なぁ……、あっ、言っとくけどこの会社の社長、俺の嫁だから!」


 「えぇ〜〜っっ!? 嘘っ? 蓮さま結婚してたんですかぁ〜っ!???」



 がーん! 



 私はこの時、夢は叶わない事の方が多いんだって事を知ったのでした。


 

 おしまい。

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