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閑話 ゆみちゃんのライブ!!《前編》



 私、本宮もとみやゆみ! いづみちゃんの雑貨屋でバイトしながらメジャーデビューを目指して『らふぃんどーるず』ってバンドでベースを弾いてます!



 趣味は音楽を聴く事とアニメを見る事! 推しは勿論『蓮さま』こと三上蓮さま! 推しが一緒な事もあっていづみちゃんには仲良くしてもらってるんだ。


 そしてもう一つの趣味は、蓮さまのラジオにメールを送る事! いわゆるメール職人ってヤツ?

 たまたま私の送ったメールを蓮さまが読んで笑ってくれたのがキッカケで、今では毎週欠かさず送っている。もう毎日がネタ探しよ! 読まれるのって快感!!


 そして幸運な事に、いづみちゃんのおかげでイベントやお渡し会にとんでもない良い席に座って見る事が出来て認知もされ、しかも『赤メッシュ』なんて名前をつけてもらっちゃった! あー毎日が楽しい!!


 


 ※




 『やったね、ゆみ! 今回のライブソールドアウトだってよ! キャパ千人だったから正直埋まんないと思ってたよ!』

 『ふふっ、蓮さまの生誕祭で大々的に告知出来たからね! 歩夢くんも見た事あるってのが決め手だったんじゃない?』


 蓮さまのバースデーイベントが終わった直後、ボーカルのアリサからメッセが来た。

 私は嬉しくなって蓮さまに報告したら、音源を聴かせて欲しいなんて言って来た!


 とりあえずタブレットでライブの映像を見せたら思いのほか褒めてくれて、益々やる気がみなぎって来た。だって最推しから褒められたんだよ!


 ……だけど駄目な所もちゃんと指摘してくれた。蓮さまは声優なんだけど、どっちかって言うと最近は歌の方に力を入れている。作詞作曲も自分でやってるし、音にはこだわりを持ってやってるのが分かる。


 そんなプロの目からしたら私達の欠点はすぐに分かっちゃうみたい。


 「……ねぇ蓮さま、これからも私達にアドバイスして貰えませんか? 私達、本気でメジャーデビューしたいんです!」


 いづみちゃんを追って歩夢くんが帰ってしまったので、私は思い切ってお願いしてみた。


 「そっか、……分かった。その代わりお前、……分かってるよな?」


 えっ、どーゆー事? 全然分かんないんだけど?

 蓮さまは私の肩を抱き寄せた。


 えっ? ……嘘っ!?


 ……やっぱり芸能界ってそーゆー所なんだ。

 でも、蓮さまなら私っ、私……っ!


 覚悟を決めた私は目を閉じて顎を上げた。

 

 そしたら思いっきりおでこにデコピンされた! いた〜い!


 「バーカ! そんなやましい考えは捨てろって事だよ! 本気でメジャー目指して俺にアドバイスして欲しいなら、俺に恋愛感情は一切持つな! それが出来ない様なら俺は何もするつもりは無い!」


 蓮さま、……私っ!


 「私、蓮さまの事は大好きです! でも、それは推しとしてであって、私の生きる支えでもあるから恋愛感情とはちょっと違う気がします。

 私は今のメンバーでデビューするのが夢なんです! 蓮さま、その為に力を貸して下さい!」


 私の必死の眼差しに蓮さまはいつもの笑顔で頷いた。


 「それじゃこれからは、俺の事は『三上さん』と呼べ! 俺も表以外では『ゆみ』って呼ぶからさ」

 「はいっ、三上さん! これからご指導宜しくお願いします!」

 「だけどラジオにはちゃんとメール送れよ! 赤メッシュが居なくなるのはつまんねーからな!」

 「えへへ、分かりました! 『赤メッシュ』の時は『蓮さま』って呼ばせていただきます♪」



 こうして蓮さ……三上さんが私達のメジャーへの後押しをしてくれる様になったのでした! 夢みたい!!



 ※




 〜数日後、某スタジオ〜


 「……ねぇゆみ、本当にあの三上蓮が来るの? 騙されてんじゃ無いの?」


 ギターのレイが眉間にしわを寄せて聞いて来た。


 「三上さんに私達を騙すメリットなんてある? 私達の音を聞いて協力してくれるんだからさ、夢みたいだよ!」

 「私達の欠点をすぐに見抜いて、練習の仕方まで教えてくれたんだから信じてみようよ!」


 ドラムのサキがレイを宥めた。流石はリーダー、分かってくれてる!


 「そうだよレイ、私、三上さんに発声の仕方を動画で送ってもらって無理なく高音が出せる様になったもん!」


 すっかりアリサは三上さんの事を信用している様だ。良かった!



 すると、扉が開いて三上さんが現れた。


 「あっ、三上さん! お忙しい中ありがとうございます!」


 私が頭を下げると、つられてみんなが頭を下げた。


 「おいおい、あんまり堅苦しいのはヤメにしようぜ! それじゃあ先ずは自己紹介しようかな、俺は三上蓮、声優と歌やってます。

 この世界でやっていくには運と小さなチャンスも見逃さない事だと俺は思ってる。だけど最低限の技術は無いと駄目だからさ、そこん所はアドバイスしていこうと思う。だから厳しい事も言うけど、俺と会えた事はチャンスだと思って頑張ってくれ!」


 「「「「はいっ、宜しくお願いしますっ!」」」」


 リーダーでドラムのサキ、ギターのレイ、そしてボーカルのアリサと自己紹介を済ませると三上さんは、


 「それじゃ時間もあまり無いからアレ、やってみてよ、『No doubt!』


 ラストはほぼこの曲で締める私達の代表曲だ。


 私達はそれぞれの持ち場につき準備を終えると、コントロールルームから三上さんが指示を出した。


 『この間それぞれに課題を出した所を意識してやってみてくれ!』


 私達は目配せをして、ドラムのカウントに耳を傾ける。


 カッカッカッ、ズドン!


 ドラムのサキはオカズを増やすとリズムが走りやすい。バスドラが甘い。

 ギターのレイはソロは上手いがカッティングをもっと滑らかに。特に十六分。

 ボーカルのアリサは伸びのある高音の出し方とフレーズに合わせたブレスの取り方。

 私はテクニックばかりじゃなくもっとドラムに寄り添ってバンドを支える意識を持つ事。



 みんなそれぞれ課題を持って練習して来たので、今までとは違うのが演奏していてすぐに感じられた。それは他のメンバーも同じみたいで、アイコンタクトの度に笑顔が漏れた。



 ジャーン、ズダドン♪



 『はい、オッケー!! 自分達でやってて以前と違うの分かるだろ? んじゃ次は『November Kiss』やってみようか?』


 三上さんは自分の仕事がめちゃくちゃ忙しいのに、私達の楽曲を全て把握していて、曲が終わる度に一人一人にアドバイスをしていった。一体いつ寝てるの?


 


 ※



 「んじゃ次までに俺の言った事出来る様に頑張れよ! それじゃ俺、これから自分のレコーディングあるから!」


 そう言って足早に立ち去ろうとする三上さんに、レイが、


 「待って下さい三上さんっ!」

 「ん、……どした?」


 「なんで、……何で私達の為にこんなに親身になってくれるんですか?」

 「んー、お前達ならチャンスがあれば掴んでモノにしそうだからかな? 現にゆみは俺を動かす事に成功したしな!」


 そう言って私にウインクをして、颯爽と扉を開けて帰っていった。


 「キャーァッ、今、()()()私にウインクしたぁー♡」

 「何言ってるの? 私にしたのよ!」

 「あんた達バカじゃないの? 私が質問したのよ! 私にしたに決まってるじゃない!」


 「ちょっとみんなーっ、そんなくだらない事でケンカしないでーっ!!」


 駄目だぁ〜っ! みんなの目がハートマークになってる! たった数時間で!?

 

 もうっ、蓮さまってやっぱり罪な男だわ♡


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