第三章 秋アニメ始まる!!
「いづみちゃん、『バディーズ』いよいよ今夜放送だね! いつもはサブスクで空いた時間に見てたけど、今回ばかりはテレビでリアルタイム観戦するんだ!」
十月になり、遂に秋アニメが始まる! 歩夢くんの記念すべき主演第一作目だ!!
バイトのゆみちゃんは私にとってのバディ、推し仲間だ。蓮さまのお渡し会やイベントはいつも二人で参戦している。
彼女は私と違って推しに認知されたいオタクで、既に蓮さまには『赤メッシュ』と呼ばれている。そりゃ毎回抽選に当たって良席に座り、イベントでのグッズ抽選会で当たりを掴んでいたら認知もされるわよ!
……まぁ当ててるのは全部私だけど。
ゆみちゃんは夜が待ちきれないといった表情で仕事が手につかない。お客さんもまばらだしこれと言ってやる事も無いからいーけど。
「放送直後にはインターネットラジオでバディーズ関連のラジオ『バディラジ』も始まるみたいよ! 蓮さまと歩夢くんのやり取りが聞けるなんて、まるで私の為のラジオなんじゃないかしら?」
「推しが二人共演なんて幸せ二倍ですよねー! それよりまさかあの歩夢くんが蓮さまと共演するなんて思っても見なかったです。いち早く歩夢くんを見つけたいづみちゃんは先見の明がありますね!」
今年初めにゆみちゃんのバンド『らふぃんどーるず』のライブに歩夢くんと参戦したので二人は面識がある。今では蓮さまの次に好きなんて嬉しい事を言ってくれている。
「アニラジもやるって事は二人のイベントもあるって事ですよね! 倍率高そうだから頼みますよ、私のバディさま!」
完全にアテにされている。
「それよりもうすぐ蓮さまの生誕祭イベントが開催されるでしょ? 昼夜二部制だから両方当てないとだよ!」
去年も勿論二人で参戦した神イベントが今年もやって来る。十月はテレビにラジオ、イベントと後は声優雑誌で特集組まれたわよね? もう大忙しだわ!
私が忙しいって事は歩夢くんはもっと忙しいのよね。でもここが勝負の時よ、頑張って! チャンスを掴み取って早く私を……♡
※
「それじゃゆみちゃんお疲れ様ー、明日遅刻しないでよ!
「あぁー楽しみ過ぎるっ、とりあえず帰ったら一旦寝よ」
放送は深夜だから私も一旦寝ようかしら? かれんは全然構ってくれなくなったし。
かれんは梅里くんと一緒に住む様になってから、自分のシフトを減らしアルバイトを増員した。最近では余ったおかずをタッパーに入れてわざわざ持って来てくれたりもする。……もうこのまま主婦にでもなるつもりかしら?
私も自炊は続けてるけど、一人分のご飯を作るのはモチベーションが下がる。やっぱり美味しいって言って一緒に食べてくれる人が居ないと楽しくないな。
家に着き、真っ暗な部屋の電気をつける。かれんが入り浸る前に戻っただけなのに、虚無感に苛まれる。
寂しい……。歩夢くんに会いたい。
ダメダメっ! 歩夢くんだって頑張ってるんだから私が凹んでどーするのよ? 今私に出来る事は家事をちゃんとする事と推しを全力で推す事でしょ?
だけど今日はコンビニでお弁当買って来て、シャワーを浴びたら夜中に備えて仮眠しよ。やっぱりリアルタイムで見たいもんね!
※
ピロピロ〜、ピロピロ〜♪
深夜一時、
目覚ましを止め、冷たい水で顔を洗い目を覚ます。
さぁ歩夢くんの晴れ姿、正座で待機よ!
『バディーズ』は、蓮さま演じる破天荒で女好きの黒崎遼太郎と、歩夢くん演じる頭脳明晰、普段は冷静だけどいざという時に不思議な力を発揮する瀬戸内駿の二人が便利屋『バディーズ』を立ち上げ、様々な依頼を受け事件に巻き込まれていく痛快アクションコメディー……と言う事しか分かっていない。
マンガやラノベなどの原作はなくオリジナルアニメなので、この先どーなるのか視聴者は分からない。
前評判は上々だし、リアルタイムで見ながらSNSで実況や考察で盛り上がっていけば、この秋の覇権は取れるんじゃない?
あ、始まった♪
めちゃくちゃクオリティ高いわ!
PVで見た時も思ったけど、スタジオMの本気が伝わってくる! アニオリだしこれに賭けてるって感じがするわ!
あっ、蓮さま♡ ……最近軟派な役が多いの何で? 女好きキャラ定着してるの?
歩夢くんキターー!! あまり感情を出さない感じなのね、クールな声も好き♡
……てか、綺麗なお姉さんの飼ってるワンちゃん探してなんで麻薬組織のアジトを見つけちゃうの?
駄目っ、蓮さま捕まっちゃう! 早く警察呼ばないと! ……って歩夢くんが助けに来たわ!
アクションシーン凄いっ! めっちゃぬるぬる動いてるわ!
ふーん、表向きは便利屋で裏の稼業は依頼を受け悪人を始末する掃除屋って設定なのね!
ここで曲が流れる。これ二話でOP曲になるヤツ! しかも去年ブレイクしたアーティストneruの新曲!!
すかさずゆみちゃんからメッセが来た!
『見ました? SNS大盛り上がりですよ! トレンド上位『バディーズ』関連で独占してます!』
スマホをタップすると、『蓮さま』や『遼太郎』それに『あゆむん』『駿くん』などなど……。
評判も良いみたいで、特に作画が絶賛されてる!
それに歩夢くんの声も! 自分の事の様に嬉しい!!
私は我慢出来ずにメッセージを送った。
『歩夢くん、凄い良かったよ! 面白かったし作画も綺麗で、SNSの評判も良いみたい! 改めて主演おめでとう!』
するとすぐに既読がついた。そりゃ自分の初主演だもん、見てたわよね♪
そしてスマホが鳴り歩夢くんの名前が!
『あっ、歩夢くん! 良かったね、おめでとう♪』
『ありがとういづみさん、なんか俺、やっとスタート地点に立てた気がするよ!』
『うん、うんっ、本当におめでとう! ゔぅっっ……
『……いづみさん泣いてるの? もぅ大袈裟だよ!』
『だって、…………歩夢くんの声聞いたら、……会いたくなって……ひっく、うぅ……』
『俺だって会いたいよ! 会っていづみさんを抱きしめたい! でも俺、まだまだこれからだから! だから、ちゃんと見守ってて』
『うん、……だって私、あなたのファン第一号だもん』
『じゃあ俺、戻るね、今、キャストやスタッフが集まってみんなで第一話見てたんだ。蓮さんも居るよ』
『蓮さまも!?』
『あっ、声のトーンが上がった……』
『もうっ、私は二人とも好きなのっ! あっ、もう切るね、これから『バディラジ』始まるから♪』
『ちょっと待って! ……明日仕事ですよね? インターネットラジオなんだから明日にすれば良いじゃないですか!』
『平気よ! さっきまで仮眠取ってたし、アニメ見たら興奮して目が冴えちゃったわ! それじゃね♡』
さぁ、次は二人の声が聞けるわ! 楽しみ!!




