閑話 かれんの恋!?《前編》
「あー、なんで私、休みなのにいっつもいづみんと一緒なのー?」
「それはこっちのセリフよ! てか、もう最近じゃ週五位ここに居るでしょ? 分かってる? ここ、私の部屋よ! そろそろ家賃半分払って貰おうかしら?」
「んな事言ったらマジで引っ越して来るからな!」
季節は夏、歩夢くんは宣言通り毎日忙しく働いている。ゲーム収録や新作アニメ、声優雑誌の撮影など、休みは月ニ、三日あるか無いかなのに連絡は毎日してくれる。嬉しい♡
当然の事ながら、かれんが働いてる隣のコンビニ『スマイルワン』には在籍こそあるけど働く事はもう無さそうだ。
私もかれんの嫁の様に毎日の家事に追われて、料理の腕もかなり上達した。
勿論推し活も、蓮さまと歩夢くんの二人の推しの情報収集が更に忙しくなって、とても充実した毎日を送っている。
「かれんー、ピーマンとお醤油とトイレットペーパー買って来てー、ひき肉今日中に使っちゃいたいから今夜はピーマンの肉詰めね!」
「えー、暑いから無理っ!」
「何言ってんの? ギャルでしょアンタ?」
「見た目だけねー、私、夏苦手なんだわ! 風呂掃除は私がやるからさー、外はマジ勘弁で!」
逃げる様に洗面所に駆け込んだ。もう! お風呂なんて毎日私が掃除してるから汚れて無いわよ!
「じゃあ私一人で行って来るから! どーせならトイレも掃除してよね!」
「あー、あとアイスも買って来てー、ヨロ〜♪」
※
「うわぁ、……暑くて本当に溶けちゃいそう」
全くもうっ! 結局私が行かないと駄目なんだから!
でも、こんなかれんだけど、一緒に居るとやっぱり楽しいし、真面目な話をする時はちゃんと聞いてくれる。歩夢くんとの事も応援してくれてるし、肩凝りな私の為にマッサージもしてくれる。
「早く帰らないとアイスだけじゃなく私も溶けちゃうわ」
寒い位涼しいスーパーを出て、日傘をさした所で声をかけて来た男の人が居た。
「鈴森……だよね?」
えっ、……誰? 茶髪に日焼けした肌、ピアスにネックレス。こんなチャラそうな知り合い居ないんですけど?
「あの、……どちら様ですか?」
「俺だよ、梅里、高校の時三年間同じクラスだっただろ?」
「えーっ、梅里くん? 見た目全然違うじゃない! 大学、もしかして社会人デビューとか?」
梅里くんは高校の同級生で、割と真面目グループに居たんだけどな、あまり話をした事は無かったけど、愛想も良いし整った顔してるから割と女の子に人気あったわよね。
梅里くんは照れ臭そうに頭を掻きながら、
「実は、……一週間前に髪染めたんだ。へ、……変じゃ無いかな?」
「うーん、変じゃ無いけどなんかチャラいよ、前の方が全然普通で良かったのに」
「えっ、前のが良かった? でもなー、今の方が仲良くなれそうだし……」
なんか訳ありそうね、それよりアイス溶けちゃう。
「……それじゃあ私、急いでるから!」
「ちょ、ちょっと待って! ……あの、鈴森さぁ『スマイルワン』の副店長と仲良いよね?」
ん、……かれんの事よね?
「んー、仲良いも何も親友よ! 今も私の部屋に居るし」
「えっ!? そーなんだ!! ……実は、俺、その、……副店長と仲良くなりたくて髪染めたんだ」
……っっ!!
「なになにー!? 梅里くん、かれんの事好きなのー?」
「すっ、好きって言うか、……まぁ、ちょっと気になってるて言うか……」
これはかれんに春が来たってヤツ? 真夏だけど!
「とりあえず話聞くわ! その前にこれ置いてくるから駅前のファミレスで待ってて!」
「え、あ、……うん、分かった」
私は小走りで家まで急ぐ。面白い事になって来たわ!
部屋に戻るとかれんは攻略中の乙女ゲーに夢中になっていた。ふふっ、今度はかれんが梅里くんに攻略されちゃうかもよ♪
「あーお帰りー」
「さっき偶然高校の同級生に会ってさ、今からファミレス行ってお茶して来る! アイス冷蔵庫に入れておくからっ、じゃーね!」
「はーい、いってらー♪」
かれんはテレビの画面に夢中で私になんか見向きもせず適当に手を振っていた。
※
「……ところでかれんとはいつ知り合ったの?」
ドリンクバーで冷たいメロンソーダを入れて梅里くんの向かい側に座る。
「……かれんさんって言うんだ。俺、あのコンビニで働いてる所を見ているだけでまだ喋った事もないんだ」
「えっ? ……それで髪染めたの?」
「こっちの方が仲良くなれそうかなって、あはは♪」
「あははじゃないわよ! かれんに彼氏居るとか思わないの?」
凄いわ、梅里くんって真面目そうなイメージだったのに、行動力が半端ない!
「この前鈴森と喋ってる時、彼氏欲しいって言ってるの聞いてたから。俺、その時偶然イートインに居てさ」
っっ!! あのイートインは危険だわ、私も居たから分かるけど個人情報ダダ漏れ過ぎよ!
「俺、一ヶ月前にあのコンビニの側に引っ越して来てさ、結構利用してるんだよね。そしたら鈴森が仲良さそうに喋ってて……」
「へぇー、それじゃ私達ご近所さんだね♪ ……んで、かれんの何処に惚れたの?」
「惚れたって言うか、カッコいいなって……」
梅里くんはコンビニで働くかれんの姿を見て興味を持ったみたい。
お客さんへの対応や外国人の店員さんにも友達みたいに接している所とか……良く見てるのね、かれんの見た目とかギャルで軽そうとかじゃないのが親友の私からしても好感待てるわ。
「ところで梅里くん、今何の仕事してるの? そんな髪染めて大丈夫な仕事?」
「俺、大学卒業してから約二年半だけど『クイーンズホテル』で働いてたんた。でも体調崩して辞めて、今は週三でリハビリがてら隣の駅前のコンビニでバイトしながら療養中なんだ」
「凄いね! 『クイーンズ』なんて一流ホテルじゃない! それで具合はもう平気なの?」
「まだ完治はしてないけど後遺症も無いし、そろそろ社会復帰しようと思ってるよ」
良かった、若いのに大変だったのね。てかかれん、そんな梅里くんに接客褒められるなんてやっぱり凄かったんだ!
「そっか、それでこれからどうするの? かれん、見た目と違って堅いわよ。今までナンパして来た男は断ってるのしか見た事ないし。まぁほとんどチャラ男で遊んでる風だったけど」
すると急に梅里くんは焦り出して、
「えっ、そーなの? ……それじゃ俺、逆効果だった?」
「ふふっ、逆効果かもね! でも大丈夫、梅里くんならしっかりしてるし、同級生のよしみとしてかれんの親友である私が紹介してあげる!」
「本当に!? ありがとう鈴森、あぁ、勇気出して声掛けて良かった! 今日帰ったらすぐに髪色戻すよ!」
その後、高校、大学の頃の思い出話や梅里くんのホテルでの苦労話などを聞き、改めてしっかりしてる人だなぁと思い、これなら自信を持ってかれんに紹介出来ると再確認したのでした。




