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三上蓮の秘密


 「あはははっ、冗談だよ! でもそのいづみちゃんだっけ? 見る目、……じゃないな、良い耳してるよねぇー! まぁ俺の事が好きなら歩夢の声にひと聞き惚れするのも分かるわ!」


 なんかいづみさんが褒められると俺まで嬉しくなっちゃう。でもこんな話いづみさんにしたら、またフニャフニャになるんだろうな……。


 「でも良い女だよな、いづみちゃん。歩夢の事よっぽど大切に思ってるのが分かるよ。大抵の女は今、業界で一番ノリに乗ってる歩夢から言い寄られたら喜んで股開くぜ!」

 「なっ、何言ってんですか! 俺っ、いづみさん以外の人なんて眼中にありませんっ!!」


 全く、何言い出すのかと思ったら! でも、そんな事、……ある訳無いよね?


 「だからハニートラップにはくれぐれも気をつけろよ! アイツらタチ悪りぃからな、俺なんかヤッて無いのに週刊誌に熱愛報道書かれてよー! まぁウチの事務所がちゃんとフォローしてくれたから良かったけど…………ったくよー!」



 あぁ、……あの時のガセ報道のヤツか! 口調が荒くなってる所を見ると未だに怒ってるんだな。


 「だからいづみちゃんがヤラせてくれなくても、絶対その場のノリで他の女に手ぇ出すんじゃないぞ! まぁいづみちゃんじゃなくても良ければ、歩夢ならこの先選び放題だと思うけどな?」

 「そんないづみさんを裏切る様な事絶対しません! ……ちなみにですけど、蓮さんが俺の立場ならどうしますか?」


 蓮さんは新しく届いたハイボールをぐびっと飲んで、暫く考えた後、真剣な表情でゆっくりと口を開いた。


 「俺か? ……俺だったら、そーだな、たとえスクープされたとして、それで人気が落ちるのならば、それはそれまでの男だったって思うぜ! まぁ別に俺、ドル売りしてる訳じゃないし、……そりゃ一部のガチ恋勢は居なくなるだろうけどさ、自分の演技にプライド持ってやってりゃ、本当のファンはついて来てくれるハズだよ」


 流石蓮さん、言う事に説得力があるなぁ。


 「でも今の歩夢はまだ実力も自信もないだろ? この先売れていくには多少は見た目や話題性でファンを増やしていかないと、この世界競争が激しいからあっという間に埋もれてくぜ?」

 「それじゃ蓮さんならある程度実力や実績、それにファンが付くまでは待てって事ですよね?」

 

 「まっ、それはあくまでも正論だけどな。だけど好きになっちゃったら抑えきれないだろ? いづみちゃんだって今、歩夢に実績がつくのを待つ気持ちと今すぐ私を捕まえてって気持ちの半々だと思うぜ!」


 いづみさんも、……そうなのか? あの時押しても良かったのか? 全っ然分かんないや!


 「結論は、……まぁ歩夢が自分で決める事だよな! ……ちなみに俺なら昨日抱きしめた時点でキス位はしてるな、しかもすげー濃厚なヤツ! それでメロメロにしてだな……、まぁ友達が居なきゃ勿論ヤッてるし!」


 そんな蓮さんみたいな事出来ないしっ!?

 結局答えが見つからないーっ! 

 すると蓮さんが隣に座り、俺の肩を組んで、


 「だけどな、歩夢、……俺の個人的なお願いなんだけどさ、いづみちゃんには歩夢の事、来年の春まで待ってて欲しいなって」

 「えっ、……何でですか?」


 「今秋に『バディーズ』が始まるだろ? 俺の勘ではあのアニメ、絶対バズるから! 近年やった中で一番内容が面白かったからさ、そしてお前も絶対ブレイクする、……と、願っている。そしたら俺、安心して今の事務所辞められるんだわ」

 

 「えーーっっ!? 蓮さん辞めちゃうんですか? 俺、蓮さんが居るからこの事務所に入所したのに!」


 自分でもびっくりする位勝手に涙が溢れて来た。それを見て蓮さんは俺の頭を撫でて、


 「おいおい、泣くなよ! ごめんな、この先俺、声優よりアーティスト活動をメインにやりたいんだよ。


 ……実は俺、歌手になるのが小っちゃい頃からの夢だったからさ、だから独立して事務所立ち上げようと思ってる。

 まだこの話は社長にしか言ってないんだけど、俺としては後継者を育てて辞めるのが恩返しだと思ってな、だから歩夢に期待してんだよ!」

 

 「蓮さん、俺、…………蓮さんが居なくなるの嫌だけど、……頑張ります!」


 恥ずかしい程涙が止まらない。蓮さんはそんな俺を見て笑いながら、


 「俺が辞めるまでは歩夢の面倒は俺が見てやるからさ、泣くなよ! 実は『バディーズ』の相方役、俺が歩夢を推薦したんだから!」

 「えっ!? なんで? あの時まだ俺、蓮さんと面識ありませんでしたよね?」


 「俺もさ、いづみちゃんと同じで歩夢の声に惚れたんだよ! だからもっと自分の声に自信持て!」


 …………そうだったのか、だから俺みたいな新人が蓮さんとダブル主演をやれたんだ。


 「これは俺のわがままだけどさ、来春まで死に物狂いで頑張ってさ、それでいづみちゃんを迎えに行ってくれないかな?」



 俺の中で『やってやるぞ!』と言う気持ちと『俺に蓮さんの後釜が務まるのか?』と言う気持ちが入り乱れて、訳も分からず号泣してしまった。


 そんな俺の背中をさすりながら、蓮さんは黙って俺の泣き止むのを待っていてくれた。




 ※




 「俺、蓮さんが辞めちゃうのは辛いですけど、安心して前に進める様に頑張ります! こらからもご指導ご鞭撻宜しくお願いします!」

 「何かしこまってんだよ? 俺のモットーは『Life is good!』だからな! 楽しんでやって行こうぜ、相棒!!」


 俺の憧れの先輩は中身も最高の男だった。いづみさんが惚れるのも納得するしかないよ。全然敵わないもん。

 だけど今、俺にやれる事は全てやって、改めていづみさんを迎えに行こう。



 ……でも、その時まで待っててくれるのか?




 ※




 「ご馳走様でした。今日は色々と相談に乗って下さりありがとうございました!」

 「おう、俺も歩夢の事が沢山知れて楽しかったよ! あっ、今度はいづみちゃんも連れて来いよ、ここなら大丈夫だからさ!」


 「だっ、駄目です! いづみさんは蓮さんには絶対会わせません! 会ったら確実に蓮さんに寝取られますから!」

 「お前、いづみちゃんと寝ても居ないのに何言ってんだよ? でも、酔うと甘々なんだろ? どんな子なのか益々気になって来たぜ!」


 「本当駄目です! 勘弁して下さいっ!!」


 俺は店前にもかかわらず蓮さんにしがみついた。


 「あはははっ、俺もカミさんが怖いから浮気なんてしないから安心しろよ!」

 「えーーーっっ!! 蓮さんって結婚してたんですかぁーーっ?」


 すると蓮さんは人差し指を口の前に立てて、


 「シーッ! 社長と一部の人しか知らないからな、絶対口外するなよ!」

 






 蓮さん程の人でもバレてないなら、別に俺なんかが付き合っても平気なんじゃない? ……ねぇ蓮さん?

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