第二章 かれんと同居!?
成田くん噛みつき事件? から早くも半年の月日が経った。本当あっという間だったわ!
この半年間で何があったかと言うと、まず私の新しい推しこと成田……歩夢くんは、あれから声優の仕事が忙しくなり週五〜六で入っていたコンビニのバイトも週一、若しくは二週に一回くらいしか入れなくなった。
推しが隣のコンビニでいつでもお渡し会をしている、と言う私にとっての最高の場所は、かれんと言う飲み友達が働いてるってだけのコンビニに成り下がってしまった。
歩夢くんは蓮さまとのバディ物のアニメが今秋に放送されるのが春に発表され(※ちなみに今は五月)メディアに初顔出しされるやいなやSNSで話題沸騰し、一時トレンドで『成瀬歩夢』が上位に顔を出していた。
それもあってかどうかは分からないけど次々とオファーが舞い込み、ゲーム収録やレギュラーの役の他に、主役級の役が三本来年には放送されるみたい。凄い! やっぱり私の目に狂いは無かったわ!!
私達は進展があったのかって? んー、お互いを名前で呼ぶ様になったのと、空いてる日にご飯に行く位で特に何もないわ! 勿論あれからキスもしてないし、噛みつきもしてない。あ、だけど毎日メッセージのやり取りはしてるかな。
かれんは『何で付き合わないの?』と不思議そうに首をかしげているけど、私は歩夢くんのファン第一号でこれからの活躍を誰よりも楽しみにしているの。
もし、万が一付き合う様になって週刊誌に取り上げられでもしたら、せっかく軌道に乗りかけてるのに私のせいで全て台無しになるなんて絶対イヤ!!
だから今は全力で応援してるの。勿論蓮さまの事もだけどね!
※
「あー、歩夢居ないとあからさまに客足悪ぃーな、いづみんも歩夢が居る時は毎日来てたのにさー」
仕事帰り、コンビニに立ち寄ると既に上がっているかれんは、外の喫煙所でタバコの煙を手で払いながらボヤいていた。
「それでも週三は私達一緒にご飯食べたり飲みに行ったりしてるじゃない?」
かれんは副店長の権限で自分のシフトを私の仕事が終わる時間に合わせている。おかげで今じゃすっかり何でも話せる一番の親友になってしまった。
「だけどウチら、そろそろ男作って結婚する年頃じゃね? 親父が早く結婚して旦那を店長にってうるさいんだよねー」
「そんな事言ってもお父さん、彼氏なんて連れて来たら泣いちゃうんじゃない?」
かれんの父親こと店長は、かれんが小学校三年の時に母親を亡くしてから男手一つでかれんを育てて来た。……からなのか、見た目ヤクザ顔負けのコワモテなのに、話すとオネエっぽいと言うとんでもないギャップの持ち主だ。私も初めて話をした時驚いて腰抜かすかと思ったもん。
「あはは、確かに! だけどそろそろ従業員増やさないとな、歩夢も顔が割れたし忙しいからなー」
やっぱり歩夢くん、もうバイト辞めちゃうのかな? ちょっと残念だけどしょうがないわよね。
「あーぁ、私もマジでそろそろ男作んないとなー、最近人肌恋しいのよ。私だけを愛してくれる男居ないかなー?」
かれんは元カレに三股かけられてからいつも言ってる。見た目から軽い女って思われがちだけど、割とガードが堅いのよね。二人で歩いてる時やレジでよくナンパされてるけど見向きもしないもん。
「でも、休みの日は私と会って、あとは仕事でしょ? 出会いなんて無いじゃない? 今度声掛けて来た人で良さそうな感じの人だったらご飯位行ってみれば?」
「その良さそうなのが居ないっつの! どーせ体目当てでしょ? 目線がエロいからバレバレなんだよ!」
確かにそうかも。でもかれんはスタイルも良いし、私服は割と胸元強調してるからしょうがないんじゃない?
「ねぇ、いづみんの働いてるモール内で誰か紹介してよ! いづみんのお薦めなら安心だし!」
そんな事言われてもねぇ……、かれんに合いそうな感じの人が思い浮かばない。
「んー、考えとくわ」
「あーソレ、考えるだけのヤツじゃん!」
「えへへ、いーじゃない、かれんには私が居るんだから!」
「やめろっ、店の真ん前で触るな抱きつくなっ!」
※
「んじゃ、明日は休みだし、いづみん家でまったりするか!」
仲良くなったのをいーことにかれんは私の部屋によく泊まりに来るようになった。勤務地まで歩いて一分だから都合よく使われているのよね。
自宅は二駅先にあるから絶対帰るの面倒臭いんだわ。
でもそのおかげでアニメや乙女ゲーなど、私の趣味に付き合ってくれる様になり、春アニメなんかは二人で一緒に見る様になった。洗脳大成功!
それに今までやって来なかった自炊もかれんに教わり、今じゃ冷蔵庫にある余り物で簡単な物を作れる様にまでなった。そう考えるとこの半年で私、ガラッと生活習慣が変わったのね。
「いづみーん、先シャワー浴びるねー♪」
かれんがシャワーを浴びてる間にお米を研ぎお味噌汁を作る。おかずはさっきコンビニで買ったお惣菜と冷蔵庫にある納豆で良いわよね?
すっかりかれんの第二の家の様になって私の部屋には、部屋着は勿論、下着や化粧品、歯ブラシに洗面道具、お揃い茶碗や箸など、最早一緒に住んでるの? って位かれんの物が溢れかえっている。
これじゃ私達、いつになっても彼氏なんて出来ないわよ!? 別に私は蓮さまと歩夢くんが居るから作る気もないけど。
ピロリン♪
あっ、歩夢くんからメッセージが届いた!
『仕事お疲れ様! 俺も終わって今帰ってる所なんだけど、晩ご飯食べちゃった?』
あーん、お誘いかしら? ゴメンね、先客が居るの。
『これからかれんと部屋でご飯食べるの、ゴメンね』
すると、
『いーなー、最近いづみさん料理するんですよね? 俺も食べたいなぁ』
と、パンダが指をくわえて見てるスタンプが送られて来た。そんな甘えたって駄目よ、流石に部屋には入れられないわ。
「んー、いずみん何スマホ持ってイヤイヤしてんの? どーせ歩夢でしょ?」
「だって歩夢くんがご飯俺も食べたいとか言うんだもん」
「へぇー、歩夢積極的じゃん! いーじゃん呼ぼうよ!」
ねぇかれんさん、ここ私の部屋よ? 自分家と勘違いしてない?
「何言ってるの! そんなの駄目に決まっ……
ピロリン♪
「え、何? 今から来いって送っちゃったけど? 最近顔見てないから会いたいっしょ?」
悪気も無くニヒヒと笑い髪を乾かし始めた。




