表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百花繚乱  作者: 桜 詩
13/13

心は永遠に

少し時が経ち、梅壺の女御はお里下がりをされることとなりました。鞠子は贈り物を持って、梅壺を訪ねました。


「藤壺の女御さま、よくお越しくださいました」


にこやかに出迎えてくださったのに、その表情に嘘を(さぐ)ってしまいます。


「健やかな御子さまが誕生されますようお祈り申し上げます」

「ありがとう」


にっこりと梅壺の女御が微笑みを見せました。

「そういえば、藤壺へは若くて麗しい公達がよく訪れると聞きました、賑やかそうで羨ましいわ。やはり若い女御さまの元へはみんな訪れやすいのでしょうね?」

いつものように、朗らかで優しげな顔とそして声でした。この人は...本当に鞠子を罠にかけたのでしょうか。


けれど...、もし男皇子がうまれるとして、この先敵手となりそうな皇子を産みそうなまだまだ若い鞠子を、機会があれば排除しようとしても....、不思議ではないのです。


「兄達がよく来てくれますから」


鞠子も笑みを返します。


「梅壺の女御さまがお里下がりの間は、女御さまの分までしっかりと主上にお仕えさせて頂きますから、どうぞお心強う...」


そう言うと、わずかにピクリと反応がありました。


「そういえば、弾正尹の宮の乳母とわたくしの乳母は姉妹ですのよ、藤壺の女御さま。弾正尹の宮はよくそちらに?」


「よくですか?さぁ....」


(ぼろを出したわね...)

自ら関係を暴露したその事に笑いそうになりました。


鞠子自身は...、何の証拠も残してしません。

弾正尹の宮へ出したのは、白紙の、でも意味を込めた文が一つだけ。宛名に書いたのは、誰ともつかない名前だけ。

密通の証拠は何一つありません。あるのは...宮からの、恋文だけです。


鞠子が平然とその名を聞いてもしていたので、少し苛立ったのかもしれません。


「あ...そうでした...嵐の日はありがとうございました。女御さまが主上に仰ってくださって、わたくしはとても心強うごさいました。主上は...ずっと震えるわたくしを慰めて下さいました」


扇ごしににっこりと笑みを向けました。


その瞳が一瞬冷たく輝いたのはきっと気のせいではありません。


「それは、ようございましたわ」


「主上もお望みですから、男皇子の誕生を心よりお祈りしておりますわ」

きっちりと頭を下げて、鞠子は立ち上がりました。


立ち去り際に、バキッと音が響きました。



「女御さま...梅壺の方と何かございましたか?」

衛門が聞いてきました。


「いいえ...?何も」

にっこりと笑みを向けました。

「左様でございますか?」

「ええ。でも...これよりは一層気を引き締めて暮らさなければならないわね」

にっこりと衛門に笑顔を向けました。


「...何と言いますか...女らしゅうなられましたね」

「そうかしら...」

「ええ、他の女御さま方にひけはとりませんわ」


「まるでこれまでは、ひけをとっていたみたいね」


「正直申し上げれば...」

「ふふっ、素直で良いわ」

そう微笑むと、衛門は呆れたようにほほえみました。



藤壺へは、月影の少将と共に、または帝と共に、時折 弾正尹の宮が訪れます。


彼のそぶりは、変わりなくそれは鞠子も同じでした。

御簾ごしの、その人の気配は少し身動ぎしただけの衣擦れの音も、そして微かな息づかいさえ耳は拾ってしまいます。


思わず深く、ただ深く息を吐き出してしまい、思ったよりも大きくてそして重なったように思えて。

ただ。

そんな風に、あるだけ...。


ただ一枚の薄い御簾は、二人を隔て。それでいて目を閉じればそこに、すぐ側にいるのですから。


とにかく...この男性(ひと)があの夜見つからなくて本当に...良かった。


あの嵐の夜は...。

もしも、あのとき帝が来なければ、どうなっていたでしょうか?


そんな事をつらつらと考えながら、...こっそりと他の男性を想う事で他の女性の元へ通う帝に鞠子はただ、溜飲を下げているのかもしれません。


女と男の駆け引きも、そして女同士の闘いも、正に百花繚乱咲き乱れる宮中で鞠子はこれからも、そこに息づいています。


文箱には、恋の和歌とそしてあの嵐の夜の思い出が...。


もしかするとまだまだ、鞠子にはこれからも胸にしまう出来事が増えて行くのかもしれません。

それこそ、花の種類の如く。


《 ことの葉の 露に思ひを かけし人

       身こそは消ゆれ 心消えめや (※小侍従)》



[※ 葉の上に置いた露は、はかなく消えてゆきます。言の葉の露のように美しい儚いものに思いをかけた人も、命はこの世から消えてゆきますが、歌に託した心は消えることがあるでしょうか。]


・*・*・*・*・


ひとまずはここで、完結とさせて頂きたいと思います(*^^*)

この先どのような事が起ころうときっと強かに生きていきそうです。


思った以上に腹黒のヒロインになってしまいました...。賛否両論あるかと思いますけれど。

やられたらやり返す...(笑)

あの人は好きだけど、想いを寄せられたら...その人も素敵ね。なんて...

ほんのり浮気も悪びれないし、バレそうなときも冷静に嘘もついてしまう...。(-""-;)


最後までお読みくださったみなさまありがとうございました♪


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ