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第四十一話 新たなる風

今日はメンバーで女子会をするから、別行動ね?

と言われたアルフォンスは1人、王都の街中を歩いていた。


すると、前方から灰色の髪をした男がこちらへ向かってくる。


男はアルフォンスの姿を見るなり、足を止めた。


そして――


「お前だろ、氷壁落とした。アルフォンスってやつは」


ニカッと笑いながら、男が近づいてくる。


アルフォンスはきょとんとする。


「……え?」


「氷壁?」


「何のことですか?」


男の足が止まる。


「……は?」


アルフォンスは首を傾げる。


「僕、アルフォンスですけど……氷壁って何でしょう?」


男はしばらくアルフォンスの顔を見る。


そして――


「……お前、本気で言ってんのか?」


「はい?」


「……なるほどな」


とニヤッ。


「シャロやサンドラの姐さんが言ってた通りだ」


「僕について何か言ってました?」


「いや、なんでもねえ」



そして名乗る


「俺の名はゲイル。お前を見込んで、頼みがある」


「……頼み事ってなんです?」


「そうだ。お前、女と話すの得意だろ?」


「そうでしょうか?」


「そうなんだよ。だからな――」


ゲイルはニカッと笑った。


「大人の遊びを教えてやる」


「大人の遊び?」


「俺と一緒にナンパに行こうぜ!」


「……ナンパ?」


「最近、一人だと成功率が低くてな」


「…………」


「ちょっと変化が欲しいんだよ」


「それで僕ですか?」


「おう!」


アルフォンスは少し考えてから、断った。


「……ごめんなさい。僕、そういうのはちょっと」


「なんでだよ!」


「女性と仲良くなるなら、ナンパじゃなくてもいいんじゃないですか?」


「……お前、本当に人たらしの自覚ねえんだな」


「それじゃ、考え方を変えよう」


ゲイルは腕を組んで少し考えてから

名案とばかりにアルフォンスの肩に手を乗せる


「新しい友達を、どれだけ増やせるか試そうぜ」


「……友達?」


「そうだ。女だけに声をかけるんじゃない。男でも女でも関係ねえ」


「出会った奴と話して、どれだけ仲良くなれるか」


ゲイルはニカッと笑った。


「それなら、お前の得意分野だろ?」


アルフォンスは少し考えて――


「それなら、楽しそうですね」


「だろ?」


「でも、どうしてそれが大人の遊びなんですか?」


「……細かいことは気にすんな」




「…………」


ナンパ……ではなく、「新しい友達を増やす」という名目で街に繰り出してから、三十分。


ゲイルは一人も捕まえられていなかった。


「おかしいな……」


ゲイルが腕を組む。


「俺の調子が悪いのか?」


アルフォンスは隣で困ったように笑っていた。


「まあ、こういうこともありますよ」


「お前はどうだ?」


「僕も同じだと思いますけど……」


その直後だった。


「あの、すみません」


「はい?」


アルフォンスが振り返る。


「先ほどから気になっていたんですが、

冒険者の方ですよね?」


「はい、そうです」


「やっぱり! 実は私も――」


少し話したところで、その人と別れる。


すると今度は別の人が、


「あの、アルフォンスさん……ですよね?」


「はい?」


「以前、ギルドで――」


さらにその人と話していると、また別の人が。


「こんにちは!」


「こんにちは」


「どこかでお会いしましたっけ?」


「えっと……初めてだと思います」


「あ、そうでしたか!」


そしてまた一人。


また一人。


また一人。


ゲイルは呆然とそれを眺めていた。


「…………」


「…………?」


アルフォンスが首を傾げる。


「ゲイルさん、どうしました?」


「いや……」


ゲイルは頭を抱えた。


「お前、俺と同じことやってるんだよな?」


「はい」


「なのに、なんでお前の周りだけ人が増えてんだよ!」




「……分かった」


「何がです?」


「お前を連れてきたのは正解だった」


「そうですか?」


「ああ。今日の俺の目的はナンパじゃない」


「友達を増やすことですか?」


「……いや、お前がどういう奴なのか観察することになった」


「観察っていうか……

お前のいつも通りの休日を見せてくれよ。

後ろから勝手についていくから、気にすんな」



ゲイルといったん別れ

アルフォンスはいつも通りに街中に向かうと

1人泣いている少女を見かけた。


アルフォンスは女の子に近づき

しゃがんで目線を合わせて声をかける。


「どうしたの?何かあった?」


「お母さんとはぐれちゃって」

と泣きながら答える。


「お母さんを探してるの?」


「うん……」


「そっか。じゃあ、一緒に探そうか」


「……お名前を教えてくれるかな?」


「デイジー……」


「デイジーちゃんだね。僕はアルフォンス。

よろしくね」


「……うん」


「じゃあ、僕と友達になってくれないかな?」


「おともだち……?」


「うん。友達なら、一緒に探せるから。

それに僕もあんまり詳しくないから一緒に冒険しない?」


「冒険‥うん!」

女の子、デイジーはその金色のウェーブボブに似合った明るい笑みを浮かべてうなづいてくれた。


「じゃあ、まずはギルドに行ってみようか」


「うん!」


デイジーがアルフォンスの手をぎゅっと握る。



まず、冒険者ギルドでの聞き込みを始めた。


「迷子の子を預かってるんですが、

この子のお母さんの情報はありませんか?」


受付で聞き込み。


「お名前は?」


「デイジー!」


「偉いね。じゃあ、お母さんのお名前は分かる?」


「マーガレット!」


「マーガレットさん……」


アルフォンスが真剣にメモを取る。


「髪の色は?」


「えっとね――」


「うんうん」


デイジーの話を聞きながら、一つずつ情報を書き留めていく。


そしてギルドを出たあと、


「次はどこに行こうか?」


「あっち!」


「じゃあ、行ってみよう」


デイジーの小さな手を握って歩いていく。


休憩としてクレープ屋で買ったクレープを堪能する。


「アルフォンスお兄ちゃん、これおいしい!」


「そう? よかったね」


デイジーは夢中になってクレープを頬張る。


「あっ……」


アルフォンスが笑った。


「どうしたの?」


「ここ」


アルフォンスは自分の口元を指差した。


「チョコがついてるよ」


「えっ!?」


デイジーが慌てて手で拭おうとする。


「慌てなくても無くならないよ」


アルフォンスは布を取り出して、

そっと口元を拭いてあげる。


「ほら」


デイジーが照れくさそうに笑う。


「もっと可愛い顔になった」


「……えへへ」


デイジーは嬉しそうに笑った。



「疲れてない?」


「大丈夫!」


「本当に?」


「うん!」


「じゃあ、もう少し探そうか」


とデイジーの歩幅に合わせてゆっくり歩く。


機嫌が良くなったデイジーはいろいろなことを教えてくれた。


母親のマーガレットは

自分の靴と同じ蝶のアクセサリーをつけていること


お父さんはいなくて、お母さんが1人で仕事を頑張ってくれていること


自分が寂しくないように一緒にここに連れてきてくれたこと


アルフォンスはこう思う

(あぁ、この子は、本当に愛されている子なんだ)


そんな時耳元にゲイルの声が聞こえてきた。


(アルフォンス、その子の母親が見つかったみたいだぜ、ギルドは戻れ)


その声を聞き、アルフォンス達はギルドへと戻っていった。


ギルドに到着すると

金色の髪をルーズテイルにした妙齢の女性がいたので声をかける。


「あなたがマーガレットさんですね」


「どうして私だと?」


アルフォンスは続けてこういった。


「デイジーちゃんに似ていたので」


「……」


「デイジーちゃんみたいな美人さんだから、

すぐに分かりましたよ」


「…………え?」


マーガレットの顔が、みるみる赤くなる。


「あ、ありがとうございます……」


「いえいえ」


アルフォンスはいつもの笑顔で


「お母さんに会えて、デイジーちゃんも嬉しいでしょうね」


「アルフォンスお兄ちゃんがね!

クレープ食べさせてくれたの!」


「椅子も引いてくれたんだよ!」


「それからね、ここにチョコがついてたら

拭いてくれて――」


そしてデイジーは無邪気に説明する


「それにね、私と友達になってくれたんだよ!」


マーガレットは驚きながら


「……まあ」


「本当ですか?」


「はい。僕からお願いしたんです」


「…………」


「あの……アルフォンスさん。本当にありがとうございました。お礼をさせてください」


「いえ、好きでやったことなんで。お礼なんて大丈夫ですよ」


「ですが……」


マーガレットは、隣でアルフォンスの手を握っているデイジーを見る。


「それなら、この娘の友達をもてなさせてくださいませんか?」


「この娘の……友達?」


「はい」


アルフォンスはデイジーを見る。


デイジーも嬉しそうに頷く。


「そういうことなら、喜んで」


「やったー!」


デイジーが飛び跳ねる。


「アルフォンスお兄ちゃんも一緒にご飯!」


「うん。一緒に食べようか」


「やったー!」




食事の中でアルフォンスは疑問に思っていたことを聞く


「2人ともお似合いですけど蝶のアクセサリーって珍しいなって思って。」


「私たちの故郷では、蝶は旅の案内をしてくれるとされています」


「旅の案内……ですか?」


「はい。遠くへ旅立つ人の前に蝶が現れると、きっと無事に帰れる場所へ導いてくれる――そう言われているんです」


マーガレットが髪の蝶にそっと触れる。


「だから、デイジーにもお守りとして」


「ママとお揃いなの!」


デイジーが嬉しそうに足元の蝶を見せる。


「素敵ですね」


アルフォンスは二人を見て微笑んだ。



食事後、別れる際にマーガレットからこう言われる。


「アルフォンスさん、本当にありがとうございました」


「いえいえ。お二人が無事に出会えてよかったです」


眠った様子のデイジーの頭を撫でながら、アルフォンスに微笑んだ。


「私たち、大陸の北からこちらへ来ているんです」


「そうだったんですね」


「もうすぐ帰る予定なのですが……」


少し考えてから、


「もしよろしければ、

帰る時にはアルフォンスさんに

護衛をお願いできませんか?」


「僕に?」


「はい」


「でも、僕はまだ冒険者になったばかりで……」


「それでも、今日あなたを見ていて思ったんです」


マーガレットはデイジーの手を握る。


「この子を安心して任せられる方だと」


アルフォンスは少し照れながら笑った。


「……そう言っていただけるなら、嬉しいです」


さらに帰り際に、


「それでは、帰国の日程が決まりましたら

ギルドへ依頼を出しますね」


「はい。お待ちしています」


「アルフォンスさん、またお会いましょう」



2人と別れたところでゲイルが再び現れる。


ゲイルはしばらくアルフォンスを眺めてから、

ふっと笑った。


「アルフォンス」


「はい?」


「もしも、お前のパーティで斥候が足りないなら、

オレを誘えよ」


アルフォンスは少し驚いた顔をする。


「えっ、いいんですか?」


「あぁ」


ゲイルは肩をすくめる。


「お前がこれから、どんな冒険者になるのか楽しみだからな」


アルフォンスは首を傾げる。


「?」


その反応に、ゲイルは小さく笑う。


「見てて飽きないってことだ」


そして、アルフォンスの肩を軽く叩く。


「お前は、そのままでいろよ」


アルフォンスは意味をよく理解していないまま、


「はい。ありがとうございます、ゲイルさん」


と笑う。


ゲイルはその笑顔を見て、


「……へっ」


ゲイルはそれを見て、口元だけ笑って――


(……ったく)


(こいつは、ほっとけねえな)

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


今回は、アルフォンスに新しい先輩冒険者――ゲイルが登場しました。


最初は「大人の遊び」と称してナンパに誘うゲイルですが、アルフォンスと一緒に街を歩くうちに、少しずつ彼の人柄を知っていくことになります。


そして今回、アルフォンスが出会ったのは迷子になった少女、デイジー。


母親のマーガレットとも出会い、二人の故郷である北部へと続く新たな縁が生まれました。


北部では蝶が「旅人を導くもの」とされており、花と花を繋ぐ蝶という文化があります。


今回の出会いが、アルフォンスにとってどんな旅へ繋がっていくのか。


そして、ゲイルはこれからアルフォンスの冒険にどのように関わっていくのか。


次の物語も楽しんでいただけたら嬉しいです。


旅人の皆様、

次の物語でお会いしましょう。

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