第三十三話 冒険者ギルド
夜が明け、王都への道を進む4人。
「まぁ冒険とは言ったが、
基本的には旅のほとんどは移動だ。
切った張ったってのはダンジョンや討伐クエストでなけばほとんどない、つまらなくはないか?」
「兄貴!、そんなことないよ。
僕にとっては初めての冒険。
命に危険はないかもしれないよ
でも知らないところに行くって言うのは緊張するよ。
まあ、みんながそばにいるから平気だけど…」
「お前、そう言うけどこの前の村に行った時の方がよっぽど危なかったぞ」
「あれは必死だったから、何か僕にもできることがあるんじゃないかって」
「うふふ、アルちゃんは他人のためにならいくらでも行動できる子ですもの。
今回は自分の都合で動いているから戸惑っているだけですよ」
「リリエル姉さん、僕の気持ちを解説しないで、恥ずかしいじゃないか」
「かっかっか、いいじゃねえか、お前のその気質、誰かのために頑張ることが原動力ってのは冒険者向きだぜ」
「アルちゃんは優しい子……」
うんうんと頷くヘカテー。
特にトラブルもなく、
四人は王都へ向かう街道を歩き続けた。
途中で休憩を挟みながら、他愛のない話をする。
「……なんだか、思ってたより普通だね」
アルフォンスが呟く。
「だから言っただろ?」
ガルドが笑う。
「冒険者ってのは、毎日命懸けで魔物と戦ってるわけじゃねえ」
「歩いて、食って、寝て、また歩く」
「時々依頼を受けて、終わったら帰る」
「……それでも冒険なんだね」
「ああ」
ガルドは前を向いたまま答える。
「知らねえ場所に行って、知らねえもんを見て、知らねえ人間と出会う」
「それだけでも、十分冒険だ」
アルフォンスはしばらく黙って街道の先を見る。
その向こうには、まだ見たことのない王都がある。
「……楽しみになってきた」
「そうか」
「うん」
アルフォンスは笑った。
「王都って、どんなところなんだろう」
「大きいぞ」
「人も多い」
「美味い飯屋もある」
「それは楽しみ!」
「そこかよ」
ガルドが笑う。
隣ではリリエルも微笑み、ヘカテーはアルフォンスの袖を掴んだまま、ぼんやりと街道の先を眺めている。
やがて遠くに、王都の城壁が見えてきた。
「……あれが?」
アルフォンスが足を止める。
「そうだ」
ガルドが頷く。
「王都だ」
アルフォンスの目が輝く。
「……すごい」
初めて見る景色だった。
そして四人は、ゆっくりと王都へ向かって歩いていった。
王都の門を抜けた四人は、そのまま大通りへと入っていった。
「……すごい人だね」
アルフォンスは、行き交う人々を見回す。
「ローゼベルの何倍の人がいるんだろう?」
「まあ、王都ってだけはあるな」
ガルドは周囲を見渡す。
「人の歩きも早い。ぼーっとしてると逸れるぞ?」
「うん、分かった――」
「……おい」
ガルドが振り返る。
「言ってるそばからヘカテーの嬢ちゃんはどこいった?」
「あー」
アルフォンスも辺りを見る。
「ヘカテーちゃん、流されてるー」
人の流れに押され、ヘカテーが少しずつ遠ざかっている。
「ヘカテーちゃん、大丈夫?」
「……人、多い……怖い……」
アルフォンスはすぐに人の流れをかき分けて近づく。
「大丈夫だよ」
そして手を差し出した。
「じゃあ、僕の手を握って」
「一緒に歩こう?」
ヘカテーがその手を見る。
そして、そっと握る。
「……アルちゃんのおてて、あったかい」
「うん」
その様子を見たリリエルも、微笑みながら反対側の手を差し出す。
「反対側は私が」
ヘカテーは少し嬉しそうに、その手も握った。
「リリエルちゃんのおてて……安心する」
「ふふ。では、このまま一緒に行きましょうね」
両側から手を繋がれたヘカテーは、少し照れながら歩き出す。
「じゃあ、行こう!」
その姿を後ろから見ていたガルドが、呆れたように笑った。
「でけえ子供みたいだな」
「え?」
「アルフォンス、ちゃんと捕まえとけよー」
「うん!」
「それじゃ、行くぞー」
「「おー!」」
「……おー」
三人は手を繋いだまま、王都の大通りを進んでいった。
「おい、あんな美人王都にいたか?」
「銀髪の女の人、歩き方も美しい。
横の子を気遣って微笑む顔も美しい。
俺も手を引かれたい。」
「馬鹿野郎、あの真ん中の黒髪の子だろ。
みた感じ、髪の毛は野暮ったそうだけど
あの安心し切ったとろけるような笑顔。
俺が守護らければ…」
周囲でそんな会話がされていることとはつゆ知らず、
4人は道をゆく
王都の中でも有数の大きい建屋である
冒険者ギルドに到着した。
扉を開けると
数多くの冒険者がそこにいた。
ガルドを先頭に周りからの好奇の視線を浴びながら受付へ向かうと
1人の冒険者がガルドに話しかけて来た。
「あれ、ガルド、久しぶりじゃない?
しばらくみないから引退したかと思ったわ。」
「引退じゃねぇよ、実家の仕事が忙しくなったから呼び出しされてな。里帰りしてただけだよ。」
「アルフォンス、悪いな。
馴染みと話があるからお前たちは受付のところで
登録をしてこい。
ついでにクエストの受注もしてこいよ」
「わかったよ、兄貴」
「ガルド、あなたったら、あんな人の良さそうな子をどこで捕まえて来たのよ」
「俺が唆したみたいに言うんじゃねえよ」
「それにえらい美人を連れてるって噂になってるし…」
「人聞きが悪いな。
2人ともあいつの連れだよ」
「若いのに隅に置けないわねぇ」
このギルドには、新人ながら人気を二分する、
タイプの違う二人の受付嬢がいる。
一人は、モカ。
すらりとした黒髪に、知的な眼鏡をかけた美女。
すらっとしたスタイルと凛とした立ち振る舞いと冷静な仕事ぶりから、冒険者たちからは密かに「ギルドの氷壁」と呼ばれ憧れられている。
もう一人は、ココア。
小柄で柔らかな雰囲気を持つ女性。
身長の割に部分的に大人びたスタイルで、
いつも穏やかな笑顔を浮かべており、冒険者たちからは「ギルドの向日葵」として親しまれている。
氷壁と向日葵。
対照的な二人だからこそ、当時の冒険者ギルドで人気を二分していた――。
「今日もモカさん綺麗だな……」
「仕事中のあの冷たい目がいいんだよ」
「お前、それ本人に言ったら軽蔑されるぞ」
「それがいいんだよ」
「……理解できねえ」
少し離れたところでは、
「ココアちゃん今日もいるぞ!」
「あの笑顔を見ると疲れが吹っ飛ぶんだよなぁ」
「俺、今日ココアちゃんに『お疲れ様です』って言ってもらった」
「昨日も同じこと言ってただろ」
「毎日言ってもらいたいんだよ!」
モカ派とココア派の冒険者たちは彼女たちとお近づきできることを夢見ており、
当時のギルドでは、そんな言葉が冗談半分に飛び交っていた。
アルフォンスは受付の前に立つと
「初めまして、僕、アルフォンスと言います。
冒険者登録をお願いします。
横の2人も一緒に。」
「冒険者登録ですね。年齢を――」
顔を上げる。
「…………」
アルフォンスを見る。
「……あの」
「はい?」
「……アルフォンス、君?」
「そうだけど?」
ここでモカの表情がほんの少し変わる。
一方のココアは、
「わぁ……かわいい子だねぇ」
と最初からほわほわ。
「僕の名前はアルフォンス・ソラス、15歳です。」
名前についてはグラディウスの名前を出すわけにはいかないので母方の家名を名乗っている。
「ヘカテー…ヘカテー・ノワール」
「あの大魔法使いのノワール女史ですか?
あなたなら冒険者しなくても引くて数多でしょうに」
「アルちゃんと一緒がいいから…」
「承知しました」
「私は、リリエル・ブランシュです。
よろしくお願いしますね」
「リリエル・ブランシュ様、
うーんどこかで聞いたことがある気がするんだけどー
思い出せないねぇ」
「よくある名前ですわ」
とコロコロと笑う
モカが登録を行い、三人を見渡す。
「これからあなた方は
この冒険者ギルドの一員として働いてもらいます。
身の丈に合わないクエストを選んで
ギルドの品位を下げるようなことはしないでくださいね」
「モカちゃんったら、危ない真似はしないでね?って素直に言えばいいのにー」
「ココアちゃん!?」
「あはは、肝に銘じます」
「これがあなたたちの冒険者の証明書です。
無くさないでくださいね」
といって三人に渡す
最後にアルフォンスに渡すときに
指が触れて顔を赤らめたりなどしていた。
「コホン、それでは最初のクエストはどうなさいますか?」
取り作ったように話題を変える。
「初めてのクエストだから採取系の仕事ってあります?」
「そうですね、初めての仕事として妥当と思います」
「クエストの内容は、
近くの山の麓の森に生えている薬草の採取だよぉ。
ハーブとかも生えてるしー、採取スポットとしては抜群だよー
でもねー、危険な植物もいっぱい生えてるから注意してね」
「それじゃ、これを受けていきます」
「「始まりの冒険、行ってらっしゃいませ」♩」
そういって送り出してくれた。
さぁ行こう、初めての依頼だ、頑張るぞ
「なんか可愛い子だったねー同い年だし、頑張ってほしいな」
「アルフォンス、君」
先ほど触れた指の暖かさを思い出して赤くなる
「あー、モカちゃん、もしかしてー」
「ココアちゃん、なんでもないわ」
「初めての冒険うまくいくかお祈りしてたんでしょ?」
「えぇ、そうよ。いい冒険になってほしいわね」
新しい冒険者の成功を思う2人だった。
読んでいただきありがとうございました。
ついにアルフォンスたちは王都へ。
そして、冒険者ギルドで初めての登録をすることになりました。
今回は新しいキャラクター、モカとココアも登場しました。
「ギルドの氷壁」モカと、「ギルドの向日葵」ココア。
性格も雰囲気も正反対の二人ですが、これからギルドの中でアルフォンスたちと少しずつ関わっていくことになります。
アルフォンスにとっては、まだたくさんある出会いの一つ。
けれど、その出会いが後になってどんな繋がりになっていくのか。
それもまた、この物語の楽しみの一つになればと思っています。
そしていよいよ次回から、初めての依頼です。
薬草採取のはずが……さて、アルフォンスたちは何を見つけてくるのでしょうか。
それでは、旅人の皆様、
次の物語でお会いしましょう。




