表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
2/8

第二話 シアの祈り


ある朝、シエスタでは――


「おじさま、起きてください。朝食の時間ですよ」


「あと五分……」


「昨日も同じことを言っていましたよ」


シアは苦笑しながらアルフォンスを起こす。


「おじさま、おはようございます。

それでは大聖堂にお勤めに行きますね」


と言ってシエスタを後にする。


大聖堂で女神像に朝一番の祈りを捧げてから

1日は始まる。


ここ、アマリリス大聖堂では

この国で宗教、教育、医療などを司る

アマリリス教の教えのもと

孤児達への支援、教育などを行なっている。


シエスタへ戻り、家の中の掃除を終えると

街へ散歩に出かけることにした。


その道中シアは迷子の子供を発見した。


シスター服のスカートを折りたたんで

子供に目線を合わせて話しかける。


「どうなさいましたか?」


「お母さんと逸れちゃったの」

と泣く少女


「私はシアって言います。

あなたのお名前を教えてもらえますか?」

と聞くと


「…マリナ」

と少女はつぶやく


「マリナちゃん初めまして。

それじゃあ、私とお友達になりませんか?」


「えっ?」


マリナはそっとシアを見上げた。


青い髪は日の光を受けて柔らかく輝き、

優しく微笑む姿は

本当に絵本に出てくる天使のようだった。


「お互い名前を知っていたらもうお友達です。


お友達が困っていたら

助けてあげたくなるじゃないですか?


一緒にお母さんを探しましょう」

と優しく微笑み手を繋いで歩き出す。


マリナは暖かな優しい手のひらに少し安心すると

さっきまで耳に入らなかった町の音が、

少しずつ聞こえてくる。


パン屋の呼び込み。

子どもたちの笑い声。

市場の賑わい。


そして、その中に——


「シア様だ……。」


「今日も素敵ね。」


「あの子、シア様と手を繋いでる。いいなぁ。」


「困っている人を見ると、放っておけない人だからね。」


「シスター服も本当にお似合い。歩く姿まで素敵だわ。」


「今日も天使みたいだ……。」


マリナは不思議そうにシアを見上げる。


「お姉ちゃん、みんながお姉ちゃんのこと見てるよ?」


シアは少し照れながら、


「皆さん、優しい方ばかりなんですよ。」


と笑う。


歩きながらマリナの話を聞くと

遠方から船で旅をしてあり


今日は目的地の王国への玄関先である

ハースベルに寄ったらしい。


道ゆく人や近所の奥様方に聞いたり

冒険者たちに聞いたりしていると


学校の生徒のリンダちゃんが話しかけてくる。


「こんにちはお姉ちゃん先生、誰か探してるの?」


「こんにちは、リンダちゃん。


今日お友達になった

マリナちゃんのお母さんを探しているんです」

と答える。


ちょっと寂しくなったマリナは下を向くが


リンダちゃんは


「お姉ちゃん先生の友達なら私も友達ね。

マリナちゃん友達になってくれる?」


と語りかける。


恐る恐る返事すると

リンダは笑顔で反対の手を繋いで歩き出す。


その後も道の途中で


「あらぁシアちゃん聞いてヨォ」


と近所のマダムから旦那の愚痴を聞かされたので

ご飯のメニューを提案してみたり


シアに憧れを持つ若い冒険者に


「この子のお母さんを見たら教えてくださいね」


手をとってお願いすると


「ハイいィ」

と言って駆け出していた。


「ああ、シア様がうちの子の嫁になってくれたらなぁ。」


「馬鹿野郎、お前んとこの坊主、まだ五歳じゃねえか。」


「夢を見るくらいいいだろ。」


「ははは、それもそうだ。」


「でもシア様は、町のみんなのお姉ちゃんだからな。」


「あの人が笑ってくれるだけで十分だよ。」


それを聞いたリンダちゃんは


「お姉ちゃん先生っていつも優しいし、美人だし、

スタイルも抜群だし、みんなの憧れなのよ」


とシアの凄さをアピールしているのもあり


さっき町の人たちが話していたことも

難しくて全部は分からなかったけれど、


(みんな、お姉ちゃんのことが大好きなんだ。)


そう思うと、

シアと手を繋いで歩いていることが少し誇らしくて、

マリナはそっとその手を握り返した。


一方、シアはそれを聞いて


「皆さん、少し褒めすぎですよ」


と頬を染めて恥ずかしそうにはにかんでいた。


シアは小さく握り返された手の温もりに気付き、

何も言わずに優しく握り返した。


「ふふっ。」


その笑顔を見て、

マリナもつられるように笑顔になった。


お昼前になりマリナから

可愛いお腹の音が聞こえてきた。


恥ずかしそうにするマリナに


「この辺りに本当に美味しいパン屋さんがあるので

寄っていきましょう」

と言ってパン屋『クロワッサン・ルミナス』へ向かった。


お店に到着すると

大柄な温和そうなオークが


「おう、シアじゃねえかパン食ってくか?」


そしてその娘のサキュバスの少女が


「シアお姉ちゃん、こんにちは」

と声をかけてきた。


「ハオさん、ルミナちゃんもこんにちは。

今日は新しくできたお友達と一緒なんですけど

お腹が空いたのでパンをいただきに参りました」

と伝える


マリナに対しても


「このハオさんの作るふわふわのパンが絶品で、

私も家で作れるように子供の頃から

ハオさんに教えて頂いているお師匠様です。


こちらの女の子はルミナちゃんと言って

ハオさんと奥様のルナさん

お二人の娘さんなんですよ」


「パン作りを一人前と

ハオさんから認めてもらえたので、

今はルミナちゃんに私がパン作りを

指南させてもらっています


私に憧れてくれているって

嬉しいことも言ってくれるんですよ」

と紹介する


ハオに

「今日のおすすめのクリームコロネを頂けますか?」

と人数分のパンをもらい

柔らかなパンと甘いクリームのマリアージユを堪能した


「甘くてもちもちでおいしー」


と笑顔のマリナ達を見て、お金を払おうとすると


「ハオさん、ご馳走様でした。お代の6リィンです。」


※この国では、コッペパン一つが1リィンほど。

ハオの店では、美味しいパンも良心的な値段で買うことができる


「そのパン食って元気になったら、

また一緒に探してやるんだろ?

ならその駄賃だ」


と言って優しい顔でハオは送り出してくれた。


お昼過ぎには人も増え、情報通のあの人に相談しにきた。


商業ギルドに向かう黒づくめのスーツの格好をした怪しい男が現れる


「怪しいものではありませぇん。怖くありませんよぉ」


と言うものの逆効果、泣きそうになる子供たちに


「このお兄さんは優しい人だから大丈夫ですよ」

と伝える


シアがいうならと落ち着く子供たち


情報通の男ヴィルヘルムに相談すると


「あぁあの商船の方ですか

先ほど商談も終わりましたので

今日はあの宿に泊まっているはずですよ」

と言った時に


「シアさぁん

迷子のお母さん見つけましたよー」


と若い冒険者が入ってくる。


マリナ、お母さん

とヒシって抱き合う様子を見て

よかったですねぇと我が事のように

嬉しそうに笑うシア。


母親からありがとうと感謝されるが


「私はマリナちゃんと友達になりたかっただけですから


この町で何かあったらシエスタ孤児院か

アマリリス大聖堂までお越しください


マリナちゃん、リンダちゃんまたね」


と手を振って別れる


そして夕方にはシエスタに帰り

大好きな家族に


「今日新しいお友達ができたんです」


と嬉しそうに語るシアの姿があった


「今日もいい一日でした。

一人ぼっちで悲しむ人が居なくなりますように。」


そう小さく祈りながら、シアは眠りについた。

第二話を読んでいただきありがとうございます。


今回はおじさま(アルフォンス)の家族

シスター、シアのお話でした。


シアは宗派の教えである

「助けたいと思う気持ちに、理由はいらない」

を体現するような人物です。


誰かを救うために特別なことをするのではなく、

困っている人がいたら自然に手を差し伸べる。


そんな優しさが、このハースベルの日常を作っています。


次回はまた新しい出会いを描いていきます。


これからもハースベルの物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ