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第一話 ハースベルへようこそ


第一話 ハースベルへようこそ


ここは、鐘の音が大陸中に響き渡るグランベル大陸。

その海辺にある港町、ハースベル。


この町は王国への玄関口として

数多くの船と旅人が降り立つ始まりの街と言われている。


今日も遠方から一人の旅人がこの町を訪れた。


「大陸の端だからどんなところと思ったけど

どこへ行けばいいんだろうか?」

独り言を呟きながら右往左往していると


「どうなさいました?

この辺で見たことがない方ですが、

旅人さんでしょうか?」


と髭を生やした細身の中年が声をかけてきた。


「名乗るのが遅れました。

僕はアルフォンス、

この町の孤児院長をさせてもらっているものです。

これでもこの町に長くいますし

何かお困りならお力添えさせてください」

と言った


「ご丁寧に私は旅をしているプレストンと申します」

言葉を続けようとして

プレストンはぐーとお腹の音を鳴らした。


「恥ずかしながら船旅でご飯を食べていないもので、

何処か昼食を取れるところはないですか?」


「それならサンドイッチが絶品のお店があるので案内しますよ」


とアルフォンスの後をついていくことに


「町の入り口からこの『陽だまり通り』を進むと右手に喫茶木漏れ日があります。

そこのお店の店主は口数は少ないですが

美味しいサンドイッチとコーヒーを提供してくれますから」


と言って店の扉を開け入っていく


「こんにちは、ガレス。お客さんを連れてきたよ」


とにこやかに話すアルフォンスに対して


「アルじゃないか、あぁいつものおせっかい焼きだな」


とぶっきらぼうに返すのは

長身のロマンスグレーの髪をオールバックにした中年の男だった。


「そう言わないでよ、おすすめの木漏れ日サンドとコーヒーをお願い」


と注文をするアルフォンス。


しばらく待つと

いい香りのするサンドイッチとコーヒーが出てきた。


「食べてみて下さい美味しいですよ」


とニコニコ顔のアルフォンスの言葉に促されて

ひとかじりした瞬間、思わず目を見開いた。


「美味い」


気付けば夢中になって食べ切り、コーヒーまで飲み干していた。


「美味い、今まで食べたものの中で一番かも。

パンもふわふわで柔らかいし

挟まれたお肉と野菜の味も最高、

コーヒーも苦味が少なくスッキリとした味で

ハマっちゃうかもしれない」


と早口で語ってしまった。


店主ガレスはニヤリと笑い

「そいつはどうも。

パンの方も気に入ったんだったら

向かいの店のパン屋のものを買ってるんだ。

そいつのパンは出来立てが一番だから

今度寄ってみて欲しい


特にコーヒーは私の自慢だからな

またいつでも飲みに来るといい」

と満足気の表情だった。


お金を払おうとすると

「初めてのお客にはサービスしてるんだ

よかったらまた来てくれ

夜は月明というバーもやってるから気になったらまた来いよ」

との言葉に感謝を述べて店を出た。


アルフォンスは

「お腹が膨れたみたいなので町を案内します」

と言って歩き出した。


あらゆる宗派と児童保護をしているアマリリス大聖堂


どんな金物も修理してくれる鍛冶屋


ガレスの店のサンドイッチのパンを卸しているパン屋


野菜や肉屋などが並ぶ商店街


冒険者ギルド、商業ギルドなど


最後に巡りの大樹という町のシンボルがある広場に連れて行ってもらった。


その道中、

「おじさま何してるのー?」

という子供の声に

「お友達を案内してるんだよ」

と答えたり


「ねぇ、アルフォンスちゃん。

旦那の好き嫌いがひどいのよ」

という奥様との相談事に


「野菜だったら

今日の八百屋のおすすめのピーマンを細かく刻んで

お肉に混ぜちゃうと気にならないし、

焼き上がったらトマトペーストをつけると

美味しいですよ」

と返したり


重そうな荷物をもってゆっくり歩くご老人に

「おじいちゃん荷物持つよどこまで運べばいい?」

とお家までの荷物持ち、


迷子の子供を見つけ、目線を合わせて

「どうしたの?」

と声をかけての迷子の親探しをしたり


「いやぁすみません、僕の都合に付き合わせちゃって」


「アルフォンスさんは町の方から頼りにされてるんですね」

と感心した時に


「あっ、宿のこと忘れていた」

と気がついた時にはすでに夕方だった。


「僕に付き合っていただいてのことなので

よろしければうちの孤児院にお泊まり下さい」

と申し訳なさそうに提案される。


提案を受け入れると、安心したように

「では、我が家…シエスタへご案内します」

と言って歩き出した


シエスタの扉を開けると

青髪の美しい年若いシスターがそこにいた。


アルフォンスに気がつくと優しそうな笑みを浮かべ

「おじさま、お帰りなさい。

ところで後ろの方は?」


「ただいまシア、今日友達になったプレストンさん

旅の方だよ。


町の案内中に僕の用事に付き合わせちゃって

宿を取れなかったから

今日はここにお泊まりしてもらおうと思ってね」


急な来客にもかかわらず嫌な顔もしないで


「おじさまのいつものことですね。

寝所の準備をしておきます

夕食は私たちと同じものでいいですね?」


と夕食まで頂き、寝るところまで都合してもらった。


せめて宿代くらい払いたいと言うと

「困ったときは助け合いです。

逆に僕の都合にお付き合いいただいたからなので

お戻し下さい」

と受け取ってくれなかった


歩き疲れからゆっくりと睡眠が取れ

翌朝出立の準備を終わらせて王都側の門前。


プレストンは何度も頭を下げた。


「アルフォンスさん、本当にお世話になりました」


「いえいえ、こちらこそ旅の途中に引き留めてしまいましたね」


プレストンは少しだけ町を振り返る。


「私は今まで、目的地以外の町はただ通り過ぎる場所だと思っていました」


「どこへ行っても同じような景色で、同じような時間が流れているものだと」


しかし、と続ける。


「この町は……格別優しいですね」


「短い滞在だったはずなのに、また帰ってきたいと思わせてくれる町でした」


そして笑顔で、


「行ってきますね」


と言った。


アルフォンスは優しく微笑む。


「この町を気に入ってもらえて、僕も嬉しいです」


「今度は――おかえりと言わせてください」


その言葉に、プレストンは少し驚いた顔をする。


アルフォンスは港町の鐘を見上げた。


「この国の町には、それぞれ違う鐘の音があります」


「同じように聞こえても、町ごとに人の想いが込められているんです」


「もしまたハースベルへ来た時、この鐘の音を聞いて……懐かしいと思ってもらえたら嬉しいです」


そしていつものように、旅人へ言葉を送る。


「お気をつけて」


「行ってらっしゃい」


その言葉を餞に鐘の音を聞きながら

また来ようと思いを胸に町を離れた。


ここは始まりの町ハースベル。


「おかえり」と「ただいま」が聞こえる、優しさの町。


今日もまた、

誰かが「ただいま」と言える場所でありますように。

初めまして。

この物語を読んでいただきありがとうございます。

「おかえり」と「ただいま」が自然に交わされる場所をテーマに、ハースベルで暮らす人々の日常を描いていきます。

よろしければ、これからも旅の続きを見守っていただけると嬉しいです

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