表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君が来なくなるまでの話  作者: 吉岡環
PR
3/10

第3話「試し」


朝比奈悠太は、変わらず話しかけてくる。


「吉岡さん、これ一回見てもらっていいですか?」

「いいよ、どれ?」

「このレイアウトなんですけど……なんかしっくりこなくて」


画面を覗き込みながら、環は少し考える。


「余白詰めすぎかも。もうちょい抜いた方がいい」

「あー、やっぱそうですよね」

「情報多いと逆に見づらくなるし」

「確かに……ありがとうございます」


素直に頷いて、すぐ修正に入る。


やりやすい相手だと思う。

でも同時に、少しだけ引っかかる。


(ちょっと来すぎな気もする)


 


「吉岡さん、今日もコーヒー飲みます?」

「飲むけど」

「じゃあ買ってきます」


止める前に立ち上がる。


「いや、いいよ別に」

「ついでなんで」


前と同じやり取り。

少しだけ間を置いてから言う。


「……じゃあ、お願い」


 


受け取るのが自然になっている。


(これ、よくないな)


 


別に悪いわけじゃない。

でも、“続く前提”になっている気がした。


(まあ、いいか)


 


その日の夜、悠太からメッセージが来ていた。


『今日の修正、あれで大丈夫でしたか?』


 


画面を見て、少しだけ考える。


(別に今じゃなくてもいいか)


 


スマホを置く。返信はしなかった。


 


翌朝。


「吉岡さん、おはようございます」

「おはよう」


 


昨日のことには触れない。


「昨日の修正、どうでした?」

「ああ、見たよ。いいと思う」

「ほんとですか。よかった」


 


普通に会話が進む。


(あれ)


 


(気にしてない?)


 


メッセージを返していないこと。

普通なら少しは引っかかるはずなのに、悠太はいつも通りだった。


 


昼休み。


「吉岡さん、今日どうします?」

「どうするって?」

「ご飯。行きます?」


 


少し考えて、答える。


「今日はやめとく」


 


「了解です」


 


あっさり引く。


(あれ)


前はもう一押しあった気がする。

でも、それ以上は何もない。


 


午後。


「吉岡さん、ここ確認いいですか?」

「いいよ」


 


距離も態度も変わらない。

いつも通り。


 


——なのに。


 


(なんか、違う)


 


ほんの少しだけ、ズレている気がした。


 


帰り際。


「吉岡さん、お疲れ様です」

「お疲れ」


 


そのまま帰ろうとすると、呼び止められる。


「——あ、吉岡さん」

「なに?」

「明日、例の件一緒に詰めません?」

「いいよ」

「ありがとうございます」


 


軽く手を振って、悠太は去る。


 


(普通だな)


 


そう思うのに。


 


(なんで気になるんだろ)


 


小さな違和感だけが、残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ