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いまは緑色の芝生  作者: 三号


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117/119

貧者の行進

 片手を、もうひとりの片手に重ねて。

 片手は右手で。

 もう一方の片手も右手で。

 そのもう一方の右手はもう血が通っていないけれど。

 指と指が交差するように重ねて。

 片手をもう一方の片手に重ねて。

 片手は左手。

 もう一方の片手は左手で。

 そのもう一方の片手にはもう冷たくなっている。

 僕は彼の彼だった身体へ寄り添うようにして、凭れかかる。

 そうすることでひとつになれるような気がするのだ。

 彼の首筋に頬を浸すと、

 ちょうど彼がもう自力では元に戻すことができない、

 かしげた顔の頬が僕の頭にあたる。

 少しだけ彼を揺さぶって、彼の頭を逆のほうへ傾けさせる。

 重ねた両手を、交互に振って、さあ、僕らは歩き出すのだと、

 行進の真似事をする。

 足をうまく重ねることはできないけど。

 僕のほうが少しだけ身長が高かったものだから。

 重ねた両手で、彼の胴体を抱え上げると、彼の足は宙に浮く。

 そのままで僕は、膝を高くあげながら、

 まるで軍事パレードみたいに、

 部屋の中を周る。

 何周も、何週も、僕は「一、二、三、四」と数字を数えながら。

 周る。

 やがて疲れるだろう。疲れてしまえば、僕は彼とともに倒れこもう。

 彼が二度と起き上がらないのと同じように、

 僕も二度と起き上がらないのだ。

 そのまま時を過ごし。

 世界でたった二人だけの時を過ごし。

 誰にも邪魔されない。

 誰にも僕らを分かつことはできない。

 至福の時を過ごした後に、

 二人で重なりながら腐っていくのは、

 いったい、どれほど心地よいものだろうか。

 最終的に、溶けてひとつになるのだ。

 ひとつの身体になるのだ。

 それこそが望み。それ以外は、要らない。

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