子供達を連れて、近くの街へ向かう ③
「母上、今日は何処に行きますか?」
「僕、母上とならばどこにだって行きたいな」
ティアヒムとクリヒムからそう言って笑いかけられて、私も笑みを零す。朝からなんて可愛いのかしら。
私たちは遊びで此処に来たわけではないから、領主夫妻としてやることは当然ある。
ただ今回はティアヒムとクリヒムと一緒に過ごす時間はきちんととるつもりだ。これで私が子供達を放っておいたらこうして視察に二人を連れてきた意味がなくなるわ。
「クリティド、どうしますか?」
「そうだな……今日は別行動をしようか。私は代官たちと話したりするから、ウェリタは二人と過ごしてもらえるか?」
「分かりましたわ! でも滞在中にクリティドも一緒におでかけしましょうね?」
クリティドは子供達の期待したような目を見て、そう提案してくれた。
子供達が退屈しないように気を遣ってくれているんだろうな。クリティドってやはり優しいわ。
今日は私と子供達でゆっくり過ごすけれども、クリティドは一人で対応してくれるみたい。ただ家族四人で過ごせる日もやっぱり作りたいわよね。
今回はお忍びというより、領主一家としてこの街に滞在している。だからお出かけをする時もきちんと護衛がついて、貴族としてだ。
クリティドは私達に何かあることを危惧しているから、騎士達にもくれぐれも私達のことを守るようにと伝えていた。
それにティアヒムとクリヒムにも、私のことをよろしくって。
大人として私が二人のことを守らなければならないのにな。そうも思うけれど気合を入れている二人が可愛いから良しとしよう。
「ティアヒム、クリヒム。今日は私と三人で街を見て回って楽しみましょう。何かあったらすぐに私に言ってね? 勝手にいなくなったりしたら、悲しくなってしまうからよろしくね?」
ティアヒムとクリヒムは聡い子供だから、突拍子もない行動などは起こさないだろうとは思っている。
ただあくまでそういう傾向にあるだけで、二人ともまだ子供だ。だから念のためそう言っておく。
二人とも頷いてくれた。
素直で、愛らしい。二人を見ているだけでにこにこしてしまった。
「では、クリティド、行ってきます!」
それから準備を整えて、クリティドに行ってきますとそう言った。クリティドは「いってらっしゃい」と送り出してくれた。
ティアヒムとクリヒムと一緒に馬車に乗り込んで、まず向かうのはお菓子の売ってあるお店。
事前に騎士達に急ぎ確認を取ってもらい、急だったのに席を取ってくれるそうだ。私としてみれば、ただ突然訪れると迷惑になるかも……と連絡をしたのだけど、気を遣わせてしまったかもしれない。
向こうは急いで貸し切りにしようとしていたらしいけれど、そこまでしなくていいとお伝えした。
あくまでお客さんとして向かいたかっただけ。でも領主一家だとは知られているからどうしてもこういうことにはなってしまうわね。
お菓子を食べに行った後はの予定も二人と相談して決めてから、連絡を入れてもらった。
当日の連絡になって申し訳ないけれど、突然私達が訪れるよりはまだ良いはず……!
「母上、どんなお菓子が食べられますかね?」
ティアヒムはそう言いながら、何処か嬉しそうだ。
本当に可愛い。これだけ楽しみにしてくれてるのを見ると、こうしておでかけした甲斐があったなと嬉しかった。
クリヒムも、「僕も楽しみ」と笑っていた。
私はそんなティアヒムとクリヒムを見て、思わず頭を撫でまわした。幾らでも撫でていたいぐらい。
あまりにも撫ですぎて、ティアヒムには「髪がぼさぼさになります」と止められた。
ただ名残惜しそうにしている私を見て、ティアヒムは「屋敷でならいくらでも撫でていいですから」と可愛いことを言っていた。
こんなに可愛い子供達の頭を幾らでも撫でられるなんて、本当に幸福なことだわ。
改めて私は幸せを実感した。
この街に来るのは初めてで、そんな街を子供達と三人でぶらぶらできるってだけでもう本当に楽しそう。
今日が楽しい一日になることは、間違いがない。
二人にとっても楽しい思い出になるように、母親として一生懸命頑張ろう。そして帰ったらクリティドにどんなことがあったか沢山はなさいとね。
そんなことを考えただけで本当に楽しみで仕方がなかった。
そんなことを考えているうちに、目的のお店へとたどり着いた。領主の家紋の描かれている馬車に乗っていたので、私たちはそれはもう目立っていた。
先にティアヒムが下りて、私のことをエスコートするかのように手を差し伸べてくれた。
にこにこしながらその手を取って降りる。その後にクリヒムが下りて、繋いでない方の手を握ってくれた。
両手が子供達でふさがっている幸せな事実に、やっぱり私は笑顔になる。ただ領主夫人として此処にいて、凄く注目を浴びているからあまりだらしない表情にならないようには気を付けている。




