子供達を連れて、近くの街へ向かう ①
「わぁ……! 人がいっぱい」
「クリヒム、顔を出したら危ない」
さて、私達家族は早速近場の街へと赴いている。子供達も連れての視察に向かいたいと思ったから。
それにしてもクリヒムもティアヒムも可愛らしいわ。はしゃいでるクリヒムは子供らしいし、兄としてクリヒムのことを思って注意するティアヒムを見ていると頬が緩む。
子供達も視察に行くことは初めてのようで移動中から楽しそうだ。
少し前までバルダーシ公爵家のことで危険もあり、視察に連れて行くこともなかったのだろうな。
「……母上、何をにこにこしてこちらを見ているんですか?」
私の視線に気づいたらしいティアヒムにジト目で見つめられる。
「可愛いなと思って」
「そうですか……」
ティアヒムは可愛いと言われることは少し照れるみたいで、ただそう答える。
子供って、ただただ無条件に可愛い。ティアヒムは心を読んでしまう力があるからこそ、大人びている。でもそれも含めてティアヒムなのよね。
「ええ。とても可愛いわ。ティアヒムがお兄ちゃんをして、クリヒムのことを心から可愛がっているのを見ると私はみていて幸せな気持ちになってしまうの」
どうしようもなく幸せを感じるのは、子供達が可愛らしいからというのもある。
私の状況を知った人は、前妻の子供が居なければ良かったのにと口にする人もいる。おそらく悪気などはなく、ただ心からそう思っているだけ。
子供が居ない状況での方が幸せだっただろうって勝手に決めつけられることが嫌だなとも思う。
寧ろ私にとってクリヒムとティアヒムが居てくれるからこそ、今の状況がある。子供達が居てくれたからこそ私はこんなにも幸せだ。そもそもティアヒムが居てくれなかったら、私はあのまま亡くなっていた可能性は十分にある。
私は子供が好きだから、二人が居ない方が良かっただなんて思うはずがない。
二人の子供達が居てくれたからこそ、私はクリティドとこんなにも仲良くなれたのだ。
こんなに可愛い二人が居なかったら、なんて考えたくもない。
「そうですか。……ところで母上、父上、これから行く街はどういった場所なんですか?」
照れているらしいティアヒムは、ごまかすようにそう言った。
やっぱり可愛らしいわね。
「小さな街だ。特産品は木でつくられた工芸品と、果物だ。ティアヒムとクリヒムも気に入るおやつがあるだろう」
クリティドは小さく微笑みつつ、そう説明をした。
クリティドって、領地内の特産品とかの情報を全て覚えているんだろうな。そんなところも尊敬できる。
私も公爵夫人として勉強も沢山しているつもり……。なのだけれども、まだまだ足りないなとは思う。
クリティドほどさらりっと領内の街の情報を口にすることなど出来ない。本当に正しい情報であるのかどうか。
それを不安に思ってしまうからというのも大きい。
クリティドは躊躇いもせずに街の情報を口にして、それだけきちんと覚えているんだろうなと分かる。
「私も果物を使ったデザートを食べるのが楽しみです。果物を購入して帰りたいものだわ」
どういった果物があるのか、どんな使い方がされているかも知っておきたい。
それを使ってお菓子を作れたらきっと楽しいだろう。家族四人で、デザートを食べたらきっと良い思い出になる。屋敷に戻ってからそのデザートを再現して作ったりしたらより一層楽しいんだろうな。
私もクリティドも、公爵夫妻として多忙ではある。バルダーシ公爵領の問題が解決するまでの間は、私は公爵家の情報を頭に入れないようにはしていたのでその分、時間は沢山あった。
でも今は公爵夫人として頑張りたいと思って、忙しいのだ。
だから以前よりクリヒムとティアヒムとの時間は取りづらかったりする。でもそれをいいわけにして時間を作れないのは嫌なの。
こうして家族で視察に行くことで、二人にとっても良い影響だろうし、家族の時間も取れる。
とても素晴らしいことだわ。
街でよく食べられているお菓子の作り方なども学びたいわね。そのあたりも学ぶことが出来たら、きっともっと楽しくなるだろう。
また皆で、お菓子を作ったりする時間も作りたい。
「お店に食べに行ったりするのも楽しそう!」
「そうですね。私も食べたいです」
クリヒムとティアヒムがそう言って笑ってくれて、何だか私も嬉しくなった。
街に到着するのが楽しみだな。もちろん、ただ遊びに行くわけじゃないから、楽しみすぎないようにはしなければならないけれど。
それからしばらくして、私達は街へと到着する。領主一家の乗っている馬車だと街の人達が手を振ってくれて、それも楽しかった。




