子供達に「おかえり」と迎え入れられる
「父上、母上、おかえりなさい」
「おかえりなさい!」
私とクリティドが屋敷へと帰ると、子供達に笑顔で迎え入れられる。なんて愛らしいのだろうか。
ティアヒムは静かに微笑みながら私達に声をかけ、クリヒムはにっこりと笑って私に抱き着いてきた。
「ただいま」
そう言って私はクリヒムの頭を撫でる。
そしてティアヒムへと視線を向け、声をかけた。
「ほら、ティアヒムもおいで」
ティアヒムのことも撫でまわしたいなとそう思ったからの言葉だ。接触の際は、ティアヒムの能力が発動するかもしれないことは知っている。だからティアヒム自身はなるべく誰かに触れたりしないようにしている。
私はなるべくティアヒムがそんなことは気にせずに抱きしめたり出来たらいいなとそう思っている。
少なくとも私は幾ら心を読まれても特に気にならないもの。
ティアヒムは少し躊躇した様子を見せた後、私に抱きしめさせてくれた。可愛いわ。
ティアヒムは照れた様子だけど、されるがままで可愛らしい。
そんな様子をクリティドは優しい目で見ていて、幸せだなと実感した。
その後は家族で、のんびりと過ごすことにした。しばらく屋敷を空けていたからやることは色々とある。それでも家族として過ごす時間は大事だからこうして時間を作ることにしているの。
クリティドも同じように思っていてくれているみたい。
明日からはもっと頑張らないとなとは思っているけれど。
「母上は視察行くの初めてだよね? どうだった?」
クリヒムににこにこしながらそう問いかけられる。
「そうね。学ぶことが沢山あったわ。公爵夫人として視察に行くのが初めてだったから、受け入れてもらえるか心配だったけれど……仲良くは出来たと思うの」
「母上なら、仲良くなれるのは当然だよ」
「そうかしら?」
私の言葉にクリヒムはにこにこと笑いながら頷く。
仲良くなれる人とは、仲良くなりたいとは思っている。ただし、それでも分かり合えない人は居るものだ。バルダーシ公爵家のように……。
「視察が上手く行ったようで良かったです。母上が嬉しそうだと、私も嬉しい」
「ありがとう、ティアヒム」
ティアヒムが可愛らしいことを告げているので、嬉しくなって頭を撫でた。
「私も君のことを妻として領民達に紹介を出来るのが誇らしい」
黙って私と子供達の話を聞いていたクリティドがそんなことを言う。そんな甘い表情で言われると、ドキドキしてしまう。子供達が居る前なのに。
やっぱり大好きな人達が、こうして私のことを肯定してくれると勇気が湧いてくる。視察にもっと行きたいなとか、そういう気持ちでいっぱいになる。
きっと私の夫がクリティドじゃなかったら、もっと不安でいっぱいだったんだろうな。
「ふふっ、私もクリティドの妻として領民の皆さんと交友を持てることが嬉しくて仕方がありません」
そう、他でもないクリティドの妻として社交の場に立てることも、領民達と交友を持てることも全てが楽しい。
クーリヴェン公爵領の色んな場所に視察で行きたいな。もっとこの領地について知って、理解を深めていきたい。
「父上と母上仲良しだね。二人っきりにした方がいい?」
「クリヒム、そんな気遣いは大丈夫よ。私はあなたたちとももっと話したいの。しばらく離れていたからちょっと寂しかったから」
私がクリヒムに笑いかければ、頷いてくれる。
夫婦の時間も当然大事だけれども、だからといって子供達との時間を減らすなんてことはしたくない。家族で過ごす時間も大事だもの。ただでさえ私達が視察に行って、二人には寂しい思いをさせてしまったのだから。
それに子供って、いずれ親の手から離れてしまうものなの。いつかティアヒムとクリヒムも誰かと結婚することになる。順当にいけばティアヒムは公爵家を継いで、クリヒムはどこかの家に婿に入るか、自分で生計を立てるかとかになるのかしら? どちらにしても二人が大人になるまでの間、沢山家族として過ごす時間は作っておきたいもの。
「母上が生き生きしているのは嬉しいですが、視察の間会えなくなるのは私も寂しいです」
ティアヒムはクリヒムほど表情は動かないけれど、素直に気持ちを伝えてくれる。やっぱり私の息子たちはなんて可愛い。可愛すぎて、何か事件に巻き込まれたり、誰かに攫われたりしないかって親バカかもしないけれど心配になるわね。
「ねぇ、クリティド。近場だったら子供達を連れて視察に行ってもいいんじゃないかしら。家族で行けたらとっても楽しいと思うの」
私がそう提案したら、クリティドは「それもありだな」と笑ってくれた。
それからその日は、夕飯の時間になるまでずっと家族で楽しく過ごした。近場で、子供達を連れて行っても問題がない場所を私も調べておこう。




