おじさんは強い
「います!! 貴方の後ろにいます!!」
私は叫んだ!!
呼吸が荒くなる。
彼の後ろに体長2メートルのおじさんが急に現れ、吹き飛ばされたからだ。
救世主様に駆け寄り、頸動脈に手をやり生存確認をする。
(良かった、生きてる)
「大丈夫ですか!! 救世主様」
だが、救世主様は瞼を一つも動かさない。
私は荒くなった呼吸を整える。
救世主様に目線を向ける。
(彼を守らないと)
救世主を守る!! それが私の役目。
だから!!
私はすぐさま黒装束の中に隠し持っていた小刀を取り出し、救世主様の前に立つ。
「オデの力、見せてやる、【メリーさん】」
おじさんは一言、呟く。
その瞬間、私の後ろにおじさんが現れる。
(空間干渉系の精霊スキル!!)
私はおじさんに斬りかかる。
だが。
「【豪鬼】」
手刀により刃が折られた。
「!?」
(戦闘系の精霊スキル!! この精霊は一体!!)
おじさんの後ろにいる救世主様を見る。
私に救世主様を守ることは出来ないの?
辺りを見回し、武器になるものを探す。
(!? これなら......)
私はおじさんに問いかける。
「救世主様を助けてください」
「......いいでふか?」
私は沈黙し、一言。
(救世主様を助ける為だ)
「......はい」
「いいでふよ、条件があるでふ!! おでの女になれば、ここから、でゅふふ、出してやる」
嫌だ、私、黒装束の皆は救世主様の為なら何でもできる。
でも、でも、叶うなら。
昔、夢見た、お兄ちゃんから聞いた王子様のような人と一緒になりたかった。
「はい、貴方のお嫁さんに「やめろっ!!」」
救世主様の叫び声が黒い部屋に響き渡る。
「やめろ、お前はそんな安い女じゃねぇ」
救世主様はヨロヨロになりながら、おじさんを押しのけ
私の前に来る。
「こいつは俺の女だ」
救世主様の顔を見る。
先程は下衆な視線を私に向け、気絶していた救世主様だが、今は、その横顔が凛々しく映る。
ドクン、ドクン。
身体が熱い。
さっきから、心臓の鼓動が五月蠅い。
血液が心臓に異常に供給されているのだろう。
ドクン、ドクン、ドクン。
だが、想像は出来る。
認めたくない、だが、心臓が鼓動し、思考が纏まらない、この病気は、いや、この気持ちはきっと......恋なのだろう。
「でゅふふ、言葉で全て済むなら、この世に理不尽などないでふよ」
「それでも、俺は!!」
救世主様......いや彼は立ち向かう。
だが、
「【白虎】」
おじさんは白い紙を空中に投げ、そこから一匹の白い虎が現れる。
(あれが、精霊なの?)
白い虎、鋭い牙に、眼は金色、爪は何をも切り裂く。
「がおぉぉぉぉぉぉ」
猛る咆哮と共に彼の身体が切り裂かれる。
「くっ!!」
彼は吹き飛ばされ、壁にぶつかる。
「でふでふ、残念でふね、行くでふよ」
「......はい」
これでいいのだ、彼の傷つく姿をこれ以上見たくない。
「待ってくれ、俺はもう、何も失いたくないんだ」
彼はおじさんに連れられる私に這いつくばりながら手を伸ばす。
もう彼はボロボロだ、そんな彼に恋をしている私がいる。
だけど、もういいのだ、この気持ちは、もういい。
私は足を止め、振り返り、視界がにじむのを見せないように俯きながら、彼に一言。
「救世主様、救世主様、貴方は世界を救ってください」
彼がその時、何を思っていたのか知らない。
だが、いいのだ。
私はそのまま、おじさんの後を追った。
そして、私は数日後、
おじさんとの結婚式を迎える。




