紅蓮とベヒーモス 決して譲れぬ想い
【紅蓮視点】
「言われるまでもねぇよ、俺はカレンを助ける!!」
俺はベヒーモスに対して高らかに叫んだ。
【この雌がほしいか? じゃあ、オレを殺してみろ】
「返しやがれ!! 俺のカレンを!!」
俺は素手で殴りこむ。
だが、あっけなくベヒーモスに避けられてしまう。
「カレンっ、カレン!!」
素手で連打を試みるがやはり避けられてしまう。
「カレン、......カレン、俺はまだお前に謝ってねぇんだよ」
俺は腰に差した剣を引き抜く。
これはカレンと俺が選んだ愛剣だ。
【ふぅ、死ね、炎の精霊】
無数の炎の球が出現する。
この時点で俺とアイツの魔力量は桁違いに違う。
俺の精霊は剣の微精霊。
まだ、意識もない、未熟な精霊。
この精霊の能力は剣の声を聴き、使用することができる。
炎の火球がこちらに放たれる。
俺はトップスピードでベヒーモスの所に走り込む。
致命傷以外気にするな。
身体が火傷しようと目が吹き飛ばされようと、片手が吹き飛ばされようと。
走りこめ!!
一瞬の勝利の為に......走りこめ!!
そしてついに、その刃はベヒーモスに届く。
「行くぞ、俺の愛剣!!」
魔力を剣に込める。
「魔力斬り!!」
渾身の一撃がベヒーモスに届く。
だが、傷が浅かった
俺は吹き飛ばされてしまった。
「すまねぇ、カレン」
瞼を閉じる。
『紅蓮、よく頑張ったね』
カレンの声が聞こえる。
瞼を開ける。
【ふはは、やったぞ、オレはまた君に出会えた、ありがとう、エアリス】
ベヒーモスは機嫌がよかった。
「俺のカレンを返しやがれ」
【いるではないか、目の前に】
【......。雄よ、残念だったな、雌は今、我が妻に生まれ変わったのだ】
「は?」
そこには一匹の赤い長髪の女の龍がいた。
『......』
「......返せ、返しやがれ、俺の妻を、俺のカレンを!!」
赤い龍が俺に攻撃をする。
だが、俺に攻撃を返す意思はない。
彼女の声が、瞳が、その綺麗な髪が。
今も脳裏から離れてくれない。
俺は攻撃を受け続けた。
そして、俺は尻尾で貫かれた。
「ごぽっ」
【雄よ、どうして攻撃しなかった】
「あたりめーだろうが、惚れた女に向ける剣なんざ、俺は持ち合わせてねぇんだよ」
それよりも、やっと会えた。
「ごめん、カレン、俺はただ、謝りたかっただけなんだぜ」
「帰ろうぜ、一緒に」
俺は貫かれたまま彼女を抱きしめた。
『......。紅蓮?』
奇跡だった、彼女の意識が戻ったのだ、だがもう遅かった。
俺の血がほとんどなくなっている。
立っているのがやっとだ。
ふと、温かい感触が唇に伝わった。
『紅蓮、私を使って』
『私を剣にして、貴方だけの剣に』
「何言ってんだよ、俺はお前に生きてて欲しいんだよ」
『こんな化け物になっても?』
「あぁ、当たり前だろ!! アレンやぺータ、それにラブ、冒険者ギルドのみんなも待ってる」
「帰ろう、俺たちの家に、なぁ、帰ろうぜ」
『......。』
カレンから声は聞こえない。
その代わり思い出すのはこれまでの二人の時間。
楽しかったこと、辛かったこと、全ての喜怒哀楽が今この瞬間に脳裏によぎる。
「分かった。カレン、お前を、いや、お前のの愛を全身に受ける」
「ぜってぇに一人にしねぇ、カレンを」
付き合ってくれるか、剣の精霊。
「禁忌:ソードクラウス」
剣の精霊の力を100%使える。
師匠、すみません、俺、使います。
造る、俺たちの剣を、赤い龍の胸から赤く光が出てくる。
それが俺の愛剣に宿る。
それは形を変え、銀色の剣は緋色の剣に変化した。
損傷していた所は優しい炎が包んでくれた。
【!? ふざけるなぁ 俺の妻を返せ!!】
奴が襲い掛かってくる。
だが、俺はそれを剣で受け止める。
【炎の精霊!!】
無数の火球が飛んでくる。
だが、斬る必要はない、なぜなら、彼女の炎がそれよりかも熱く、優しい炎だからだ。
しゅぽ。
という音共に、炎が吸収された。
【ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなー】
【オレは妻、レヴィアタンにただ傍にいてほしい】
【だから、オレは全力を持って雄、いや、お前を殺す!!】
【禁忌:BEHIMOS】
無数の精霊が出現し、それを吸収し、一匹の黒い龍が出現する。
【消えろ、全精霊砲】
迎え撃ちたい。
だが。
禁忌の代償で手に力が入らない。
(もう駄目だ、あれには敵わない)
「紅蓮!! がんばれー」「紅蓮さん負けんな、俺たちがそばにいます」「パパがんばれー」
声が聞こえる。
俺は声のする方に視線を向けた。
「!?」
負けたくない、負けたくない、勝ちたい。
それに。
「あぁ、そうか、お前、いや、アレンそこにいたんだな」
一人の青年を見てアレンの魂を確認した。
「弟子に師匠がいいところ見せねぇとな」
『紅蓮、あの子たちが見てる』
「あぁ」
『できる?』
「できるさ、カレンとなら」
『いい答え』
するとカレンが震えている剣を炎で握ってくれた。
師匠、弟子不幸な俺ですみません。
師匠に教えていただいた業、使います。
「帝国流剣術 我流切り」
一閃、ただ、それだけ。
だが、それはフルバーストを斬り、ベヒーモスをも切り裂いた。
【オレはまた一人になるのか】
ベヒーモスはそのまま眼を閉じた。
「カレン、皆俺やったよ」
『そうね』
「カレン」
『なに?』
「愛してる」
『私も愛してる』
温かいな、本当にカレンの炎は。
「あぁ、この選択は間違ってなかった」
俺は静かに瞼を閉じた。




