薄影 暗
<薄影 暗side>
(この空間のあちこちに亀裂が入っているな、もう長くないか)
「はぁ、まさか、《《師匠》》と出会うとは」
乗り移った、黒乃 薫の姿に懐かしさを覚えながら
(薫さん......すみません、貴方の体使わせて頂きます)
俺は彼女の肉体から薄影 暗の肉体へと変化させる。
そして、今だに、胴体が貫かれているはずだが、倒れない師匠に対して、一言、声をかけた。
「俺も、運がない、ここで師匠に会うとは、だが!! 俺の決意は変わらない」
俺は彼に向けて、黒色の刀を向ける。
『暗、お前、まだ、あの時の事を......』
俺にはかつて愛した女性がいた。
皆、祝福してくれていると思っていた。
だが、一部の仲間が裏切り、神々と人間の王に結婚式の日に殺された!!
仲間たちも、俺を支えてくれたみんなも、全て蹂躙された!!
男は頭を切り落とされ、女は嬲られ、殺される。
なにより、後悔したのは、目の前で愛する人を殺されたことだ
彼女は銀髪の髪を揺らして、白色の花嫁ドレスを赤く鮮血に染めながら、俺にキスをしてくれた。
殺してやる、呪ってやる、そして、誰の助けも必要としないそう誓ったのだ
あの日に
「なぁ、師匠、あの時、その場にいた、あんたなら分かるはずだ」
彼は黙って俺を見つめる
「師匠、あんたも失ったはずだ、目の前で母さんを!! 嬲られ!! 殺された!!」
「今でも思い出すよ、あの時、助けてと叫ぶみんなの声が」
「でもさ、気づいたんだ」
「誰かを信じるから、ダメなんだって、だから俺は、己の強欲のままに
この世界を犠牲にしてでも、彼女を復活させる」
『暗、そんなこと、彼女は望んでいないぞ』
「望んでるとか、いないとか、もうどうでもいい、俺は彼女がほしい!!」
「だから、死んでくれよ、親父」
『いいだろう、やってやるよ、恨むんじゃねぇぞ、暗』
すこし、疑問に持ったことがある......それは、
「親父、いいか、少し聞いて、何でそこまで知っているんだ?」
『俺の第六感だ』
「なんだそれ、チートじゃねぇか」
お互い、刀を構える
『「我流術零型 抜刀」』
そして、俺は神速の一撃を繰り出す。
勝負は......バタン。親父が倒れた。
「親父!!何で手を抜きやがった!!」
俺は見ていた。
俺は確実に親父の首筋を切り裂いていた。
しかし、親父はそもそも抜いていなかったのだ
親父は俺の頭に手をやる
『馬鹿野郎、お前は俺の息子だ、切れるわけねぇよ』
『それにだ、』
親父が目線をどこかへ向けた。
『それにだ、お前を止めてくれるのは空だ』
親父の温かい体温が急激に消えていくのがわかる。
『すまなかった、暗』
そして、親父は動かなくなった。
親父の目線の方向には完全に回復したアイツの姿があった。
<黒乃 空side>
「なぁ、お前は愛する人を失ったことがあるか?」
彼は俺に近づき問いかけてくる。
歩くスピードは緩やかだ。
「ない」
俺は彼の問いに答える。
俺に、さっき、父さんは俺を気絶させると同時に第六感を通じて俺があの町にいた頃から今迄に関しての記憶を全て共有してくれた。
「怒りに支配されたことは、絶望して、己を殺そうとしたことは?」
その記憶の中には《《彼の記憶もあったはずだが》》優しい父さんの事だ、共有してくれなかった。
「ない」
だが、何に対する問かというのはわかる。先ほどの父さんと彼の話を聞いていたからだ。
「くくくくく、あはっはっはっははははは」
彼の笑いが突如、静寂を突き破る
「親父もおもしろい!!こんな奴に俺を止められると?」
彼は腹を抱えながら笑っていた。
「何も持たぬお前に俺を止められるはずがない」
「親父の事だから、少し本気にしたがやはり、空っぽのお前では無理だよ」
その通りだと思った。俺にはあの町にいたまでの記憶がない。
だけど、俺にはお前の事は分からない。だから!!だから!!
「俺の名前は黒乃 空!!お前の名前は?」
「気が狂っているのか?この状況で」
俺は1メートル前まで来た彼に名前を聞いた。
彼の表情が怒っているのがわかる
「いや、俺は冷静だ、まずお互いを知るためには名前からだろ?」
彼はニヤッと笑い、
「そうだなぁ、なら、俺に一撃あてられたごとに俺の事を教えてやるよ」
「その代わり、俺が一撃あてるごとに、奪わせてもらうぞ、お前の存在を」
「なんだ、そんなことでいいのか、ならいいよ」
「勝てると思うのか、この俺に」
《《あぁ、勝てるさ》》
俺はこれでしか勝てない。




