イレギュラー
ここは魂の世界、第1の扉。
『妹、超絶可愛すぎる扉、はぁはぁ、ラブラブ、チュー』の崩壊した町にて。
<五葉side>
私はお兄ちゃんを見る。
魔物に食い尽くされて、街の人々に肉や目を抉られて、見るも無残な状態だった。
「ごめんなさい、お兄ちゃん」
私はお兄ちゃんが死んだことを確認すると一礼した。
私はそのまま安堵する。
(これで、お兄ちゃんも、この世界も救われる......彼の言う通りに)
私がお兄ちゃんを殺した、その事実に、少し、気が狂いそうになる。
だが、私の感情など、些細なことだ。
パチンっと指を鳴らし、魔物、街の人々を消した。
「お兄ちゃん、貴方は優しすぎる」
お兄ちゃんを見つめる。
先ほど、かっこよく私に告白してくれた、お兄ちゃんの姿はもうない。
感情がグチャグチャになる。
(ころして、ころして、ころして、お兄ちゃん)
(たすけて、たすけて、たすけて、お兄ちゃん)
「お兄ちゃんの記憶の私でさえ、気が狂いそうなのに、現実の私は強いね」
「現実では私じゃないんだけど」
私は自身の顔に浮かび上がる天使のマークに触れ。
その決断をした、現実の私に対して。
「その決断は誇らしい」
称賛した。
私は彼......薄影 暗に会いに行くため、この場を離れようとする。
グラ・グラ・グラ
突如、世界が揺れる。
(え?地震?)
突如、この世界の魔力が全て掻き消された。
「な、なにがおきたの」
そこにいたのは、灰色の霧だった。
男か女か分からない。
言い方はあれだが、灰色の霧が実態を見えなくしている。
(あれは、やばいっ!!)
直感でそう感じた。
「こ、こんなこと、彼からは聞いていない」
【虚無魔法:無価値】
灰色の霧が唱えた瞬間、この記憶の空間全体に大きなひびが入る。
私は指を鳴らした。
その瞬間、生物、魔物、街の人々が出てくる。
「行きなさい、私も援護します、時間を稼いでください」
魔物共、街の人々が向かうが精霊スキル、魔物特有のスキルで、
灰色の霧を攻撃するが効いていない。
逆に攻撃の魔力を吸収している。
【虚無魔法:無法地帯】
敵が唱えた瞬間、全ての魔物が音もたてずに消えた。
「こうなったら、私のとっておきで!!」
私は大気中の魔力が消えている為、街の人々、生物を魔力に変換する。
『魔力変換、DAYSTAR《デイ・スター》』
球体が空に打ちあがり、そのまま幾億の星が灰色の霧に降りかかる。
「はぁ、はぁ、やったの?」
辺り一面砂煙で見えない。
だが、私のとっておきだ、やられないわけがない。
その瞬間、背後に灰色の霧がいた。
(し、しまった、背後を取られた、殺られる)
私の肩に冷たい手が置かれる。
【虚無魔法:無法地!!】
ボトンっ
その瞬間、灰色の霧の手が切られた。
「おいおい、お前が誰だか知らねぇが俺の、いや、俺たちの娘に手を出すんじゃねぇよ」
そこには記憶の存在のはずの両親がいた。
「え、どうして?」
全ての記憶は私のコントロール下にある。そんなことありえないのだ。
慌てる私に父と母は振り返り私を見つめながら、
「「五葉は私たちの大事な子供」」
私は目から涙がこぼれる。
「五葉、《《あれ》》はなんだ」
父は灰色の霧に対して鋭い眼差しで、指をさしながら、私に問いかけた。
「分からない、急に現れて」
「そうか、五葉、すこし、こっちにこい」
「うん」
(何をするんだろう?)
「なるほどな、辛かったな、五葉」
「そして、《《悪かったな、空》》、あれっていって」
(はっ!!?お兄ちゃんなの、だって死んだはず)
「生きてるよ、空は。両親の俺たちを信じろ」
それに何で、お父さんは何も言ってないのにわかるの?
「すごいでしょう!!?五葉、龍さんの第六感は」
なんでも、お父さんは、精霊の影響で第六感が冴えまくっているという。
化け物だ、怖いよ。
「まぁ、まぁ、そう言わずに」
お父さんが頭に手を置き、そう呟く。
「さて、いっちょ、やりますか」
気づいた。父の服装が町で来ていた私服から黒色の袴へと変わっていた。
「俺の精霊を使うと空を傷つけるからな」
「ふれー、ふれー、龍さん、頑張れー」
隣ではいつの間にかチアリーダに着替えていた母が父を応援していた。
懐かしいな、毎日、こんな感じで、にぎやかで。
(それに母、もういい歳......ひっ!!?)
いつの間にか母が隣にいて私を見つめてくる。
「五葉ちゃん、どうしたの?」
笑ってはいるのだが、目は笑っていない。
「お母さん、応援しなくていいの?」
「何言ってるの《《もう終わったわよ》》」
母の言葉に驚き私は目の前の戦いをみた。
父は刀の鍔を親指にかけ、腰で構えているだけだが、
次の瞬間、灰色の霧が倒れていた。
「我流術、龍さんが編み出した我流の技、その壱、抜刀」
「刀を見えない速さで抜き放つ神速の技、かっこいいわ、《《でもね》》」
残念だわ、龍さん《《殺さなかったなんて》》
その瞬間、母は私を貫いた。手刀で。
「えっ」
私は倒れた。
『はぁ、やっと乗り移れた、よくやった、五葉』
母の姿、黒色の綺麗な長髪で、でもその声は。
それは、母ではなく、私にお兄ちゃんを殺すように命令した彼の声だった。
「おいっ、暗!!お前、よくも、俺の薫、五葉を」
『いいじゃないですか、どうせ死ぬんですし』
その瞬間、貫かれる、父の姿。
(助けて、お兄ちゃん!!)
私は倒れているお兄ちゃんに対して、手を伸ばし、図々しい願いだが
助けを求めるのだった。




