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RPGの世界で生き残れ! 恋愛下手のバトルフィールド  作者: 甘人カナメ
第五章 見たことのない明日へ、いってきます
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110.夢だから気付くこと



 夢というのは現実の情報の再構成って側面もあるんだって。

 今日は楽しい明晰夢にはなってくれなくて、ここ数日の情報が継ぎはぎになって次々と現れる夢だった。確かに、どこかでしっかり整理しないと頭がパンクする。ただでさえ最近の仕事は情報に溢れかえっているんだから。

 夢というだけあってカオスな内容だったけれど、不思議と納得できるから、やっぱり脳内で処理と整理整頓がされたんだと思う。


 情報が継ぎはぎになったお陰で何か掴めそうな気がしている。

 寝起きでベッドにごろごろしている状態で、目を閉じたまま、夢を復習する。




 キッチンで作ったフレンチトーストをロイに提供。滅茶苦茶たくさん食べている。スペシャルバージョンでメープルシロップがけと、ハチミツがけと、しょっぱめ系ベーコン付きの三種盛り合わせ。ビール飲もうとしているのを止めた。


 ゼラニウムらしき鉢植え(夢の中だから、私がゼラニウムだと思えば何の植物だろうとゼラニウムなのだ)から蚊取り線香のように煙が立ち、その周りに蚊がポトポト落ちてくる。


 ゲームの回想シーンのようで、もっと鮮やかな映像。

 シャイニー様が、王杖で攻撃を防ぎ、何かを投げつけ、魔術を放ち、アクロバットに飛び回り(バック宙までしていた)、王杖を突き刺し、という具合に邪神と戦っている。上下ともふんわりした服なのに器用なことだなぁと感心する。

 聖女は、見た目が有名な女優さんに変わり(特にファンではなかったのだけれど)、こちらもアクロバティックな動きでシャイニー様と共闘。ゆるふわパーマの長い茶髪がアニメの戦闘シーンのように綺麗に靡く。こちらは服がボディスーツ。ふぅじこちゃーんだなーと思う。


 会議室で紫音とマークが喋っている。他の人たちもいるんだけれど視界には出てこない。

 紫音が「だから、ハッシュタグ検索すれば、似たような景色が出てきますって」とスマホの画面を掲げて見せる。

 マークが「スイーツはないのか」とか「同じように文献を一気に調べられないか」とか紫音に尋ねている。

 それに対して「おっけー神様で何とかなります!」と胸を張る紫音。


 シヴァがバッサリと髪を切り、ハーミッドとお揃いの髪型に。見た目全然違うのに「双子っぽい」と言ったら、ハーミッドには殴られたけれどシヴァはお腹抱えて爆笑していた。


 トニーさんが花束を腕いっぱいに抱えて走ってきていて、サッシュさんに差し出す。そこから一本取り出したサッシュさんを内心「(!?)」となって見ていたら、摘まんだまま魔術でザクザクに切り刻んで、「毒を混入させる気ですか」と素敵な笑顔で黒いオーラを放っていた。


 ロイと一緒に現代の街を歩いている。ファストフード店に入ろうとしたらお洒落カフェに誘導される。「これじゃロイは足らないでしょ?」って聞いたら、「仕事柄、腹一杯食べなくても何とかなるんだ」とか言って笑うから、食後すぐにコンビニでたくさん買い込んで家飲みにした。




 たかが夢と馬鹿にできない。気になる点はいくつかある。


 ゼラニウム。虫除け草、魔除け草として日本で売られていた。夢では蚊取り線香状態だったけれど、魔除けの香の原料になっているのか否か。

 トニーさんが山盛り持ってきた植物。毒が混入しそうだった、要は毒花が紛れ込んでいたんだよね。実際に()()()入れたらどうなるんだろう。

 300年前の戦い。ゲームでは回想シーンだったから細かい状況が分かっていない。シャイニー様に実際に聞いてみたいところだ。王杖が変化していない状況で外殻を削るまでは成功したんだもの、今回の攻撃の参考になるよね。恐らくこれはレオナルド様たちの中でも上位に入っている確認事項のはず。

 文献を横断しての情報検索。神様に質問する時の指標にならないかな。マークがその場についている必要があるかな。そうなるとマークが城を離れるわけで、そこをどうにかできればユタル神殿へ行ってもらうのもアリ?

 シヴァのヘアカットは案外面白い手かもしれない。例えばアルバーノに戻った時に「魔物に襲われて髪を切って逃げてきた」とか言えば、余計怖がって閉じ籠もってくれるんじゃないかな、とか。本人がどうあれ周囲が嫌がるだろうけれどね。


 ロイの夢は……ほら、デートというか……邪神情報の海であっぷあっぷした中での癒やしみたいなものだよね。

 ご飯食べてもらって、一緒に出かけて、一緒に飲んで。そういう日が来るといい。

 柔らかな短い髪の毛。広い背中。大きな手。

 私は絶対に、この人を守る。




 ******




 さて、今日も忙しくなりそうだ。

 夢で整理した情報の一部はレオナルド様に話をして、一部は私の権限で動いてみて。

 今のところ一番気になるのは、ゼラニウム。ゲームに出てきていないファクター。

 エリアボスのおかしな挙動に影響していたかもしれない存在。魔除けの香との関わり。

 その辺りから手を着けようか。


 それじゃあそろそろ起きて支度しようかな。

 いつもと違う位置に置いてある眼鏡を取り上げて伸びをする。と、眼鏡を重しにするようにメモが置いてあった。


 ――おはよう。部屋を無防備にはできないから、部屋の鍵は一旦俺が持っていく。出勤前に迎えに来るから待っていろ。


 読み終わった瞬間に頭を抱えてベッドにダイブした。

 そうだね、そうですよね。ロイは危機管理能力高いもんね。うん、ありがとう。玄関近くに置いてあった鍵はすぐに見つけられたみたいで何よりです。ええ、家捜しされていたらもう恥ずかしくて布団から出られないところだったよ。

 これ、あれかな、今後のために合鍵渡しとくとかそういう感じになるんですかね?

 ……え、どうしよう。どうしたらいいんだろう。


 ゴロゴロしながら煩悶していたら、ドアがノックされた。


「おーい、おはようミワ。起きてるかぁ?」


 ちゃんと最初に声をかけてくれる辺りがジェントルですよね。鍵持ってるんだから勝手に入ってこれるのにね。


「おはようロイ」

「おう、起きてたか」


 ドア越しに会話を交わす。


「まだ着替えていないんだけど、外に立ちっぱなしも何だし、入ってくる?」

「馬鹿か! 待っててやるから早く支度しろ!」


 ですよねー。

 私の準備は五分で終わる。最低限の化粧だけを高速で終わらせて、持ち帰り書類を手に取った。




 ******




「――と、そういう訳だから、今日は溜まった書類チェックをしてから紫音へ出す質問の体裁を整える。私の持っている情報整理。朝一でトニーさんとサッシュさんに連絡を取って、私は昼からオイルチームに合流。そういう流れで進めようと思います」


 朝の打ち合わせで、今日の仕事を共有する。この辺はPCでスケジュール管理できたらいいのになーと感じる点。あ、でも、元の世界の職場でも朝の打ち合わせは毎日やってたわ。


「エリオ君はいつも通りの書類仕事と来客対応、消耗品整理、スケジュール確認、メッセンジャー。目立った来客予定はないけれど、多分レオナルド様やマークからはいつも通りに書類の山が来ると思う。

 で、途中からは申し訳ないけれど、薬師室の私へのメッセンジャーもお願いすることになるね」

「今まで通りでは?」

「情報統制区域から離れるからさ、今までみたいな内部との往復じゃなくなるんだ。情報漏洩対策は最初に習ってるって聞いているけれど、何かあったら大変だから、念の為」


 エリオ君はふんっと鼻息荒くして、


「レオナルド様の文官をやっていた頃からしっかりできていますよ」


 と胸を張っている。これなら安心かな。

 雑務も相当量含まれているけれど、何だかんだで秘書的な役割はお願いしている。だけどここまでくるともう、総務とでもいうのかな? 秘書の枠を外れているような気がしている。バリバリやってくれるエリオ君は凄い。


「悪い、俺は朝から抜ける。俺の動きが今後どうなるか、ここの引き継ぎも含めて話し合いだ」


 既に大体の事情を報告書で読んでいたらしいエリオ君が、大きな動揺もなく頷く。


「ここの引き継ぎかぁ」


 ロイが城でお留守番にならないのなら、どうやったって考えなければならない件だ。


「どういう人選があるのかな」

「レオナルド様の人物審査を通ることが大前提で、ミワの警護もある程度できて、書類の読み書きができる人間。そして当然、俺たち五人以外だ」


 今まで私の護衛はロイかセリアだった。それ以外の人になるんだね。


「楽しみじゃないだろうが楽しみにしていてくれ。俺も選ぶ側だ。

 ……つまり、誰かさんみたいなライバルにならない奴を選ぶってことだよ」


 明るく笑うロイ。その笑顔は、本当に心の底から出ているんだろうか。目が少し寂しげに見えるのは、私の気のせいじゃないと思いたい。




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