第三十三話:Sランク冒険者『ライケン』
隣の建物へ移動すると、そこは闘技場だった。
「ここ、闘技場だったんですか」
俺が驚いていると、ゴードンが答えた。
「まあ実戦で使われることはほとんどねぇがな。今は主に、冒険者たちの訓練場として使われてる」
がらんとした観客席とは対照的に、広い戦闘用のフィールドだけがしっかりと整備されていた。
俺とライケンは、そのフィールドの中央で向かい合った。
「ステータス」俺は静かにスキルを発動させた。
【名前:ライケン】
【スキル:剣聖】
【能力値】
筋力:420 敏捷:380 防御:310 魔力:76
体力:350
知力:220
「……嘘だろ」
思わず声が漏れた。
(この細身の体の、一体どこに筋力420もの力が隠れてるんだ……)
見た目からは想像もつかない数値だった。
ガストンやバルゼに匹敵、あるいはそれ以上とも言える万能に近いステータス。
しかも、これといって弱点らしい弱点も見当たらない。
「さすがSランクだな」
と感心しつつ、少しワクワクしてきた。
これまでの戦闘は、ほとんどガストンやバルゼたちに任せきりだったから、
自分自身の実力が、正直どれほどのものなのか、実はよく分かっていなかった。
ダグローズを気絶させた時のような威圧の一撃はあっても、真正面からの剣術での実力は未知数だ。
そう思うと、緊張よりも、どこか胸の奥がざわつくような高揚感が湧き上がってくる。
自分でも意外な感覚に苦笑しつつ、俺は腰に下げていた剣——勇者が使っていたあの剣を、静かに鞘から抜き放った。
「……よし」
刀身が陽光を受けて、鈍く光る。
ライケンは、その剣を見て、わずかに目を細めた。
「へえ……いい剣、持ってるじゃないか」
「まあ、拾い物だけどな」
俺は静かに構えを取った。
「開始!」
ゴードンの合図が響いた瞬間、ライケンの姿がふっと目の前から消えた。
「——っ!?」
気づいた時には、もう間合いがゼロになっていた。
俺は反射的に、勇者の剣を横薙ぎに振るった。
キィンッ!
金属のぶつかる音が響き、ライケンがすっと後方へ距離を取る。
「……なんて振りだ」
ライケンは剣を軽く肩に担ぎながら、感心したように口の端を上げた。
「少し反応が遅れていたら、クビが飛んでいたぞ」
その言葉に、周囲の冒険者たちからどよめきが起こった。
「マジかよ……ライケン相手にあの動き……」
「噂、本当だったのか……」
さっきまで半信半疑だった空気が、一気に色を変えていく。
だが、当のライケンの表情は、依然として涼しげなままだった。
「……悪いが」
彼は剣を構え直しながら、静かに告げた。
「出し惜しみはできそうにないな」
「——スキル『剣聖』」
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