第三十話:交渉
「よし、それじゃあ本題に入ろうか」
ギルド長がそう切り出すと、俺は改めて姿勢を正した。
「ちなみに、お前たち、何を買いに来たんだ?」
「主に、椅子や机、棚、それに馬車みたいな加工品が欲しいんです。……村に、それを作れる人手が足りていなくて」
俺がそう答えると、ギルド長は顎を撫でながら頷いた。
「なるほどな。……で、お前たち、金は持っているのか?」
その問いに、俺は用意していた荷袋を差し出した。
「これを、資金にしようと思ってます」
袋を開けると、中からガストンたちが仕留めてきた獣の牙や角、そして勇者の武器庫から見つけた宝石類が、ずらりと姿を現した。
「……ほう」
ギルド長の目つきが、一瞬で変わった。
「こいつは……」
品定めするように一つ一つ手に取り、光にかざしながら確かめていく。
「おい、こんなにいい素材、そう簡単にお目にかかれるもんじゃないぞ!?」
ギルド長は驚きを隠せない様子で声を上げた。
「特にこの角……これほど綺麗な状態のもの、久しく見ていないな」
「そんなにすごいんですか?」
「ああ。……お前さんたちの村、一体どんな狩りをしているんだ」
ギルド長はしばらく感嘆したように素材を見つめていたが、やがて何かを思いついたように、じっと俺を見据えた。
「……なあ、コウジロウ」
「はい?」
「この街と、貿易をしないか?」
思いがけない提案に、俺は思わず目を見開いた。
「貿易、ですか」
「ああ。これほどの質の素材を、定期的に融通してもらえるなら、こちらとしても願ったり叶ったりだ。その代わり、お前たちが必要としている道具や資材は、こっちで優先的に手配してやる」
ギルド長はニヤリと笑った。
「悪い話じゃないと思うが、どうだ?」
「いいお話ですね。……実はこちらからも一つ、提案なんですが」
俺はそう切り出した。
「実は、うちの村にも人材面での悩みがありまして。……戦闘や統率に長けた人材は揃ってきたんですが、街の運営や財政のような、いわゆる裏方の専門知識を持った者が、正直まだ手薄なんです」
「財政、か」
「はい。もしよければ、そういった分野に明るい人材を紹介していただけないかと」
俺がそう頼むと、ギルド長はしばらく考え込んだ後、頷いた。
「なるほどな。……それくらいなら、こちらでも心当たりがある」
「本当ですか、助かります」
「ただし」
ギルド長はそこで、ふと何かに気づいたように、サットウの方へと視線を移した。
「……こっちからも一つ頼みたい」
「なんでしょう」
「そちらからも、戦闘能力の高い人材を貸してほしい」
「え……」
俺が戸惑う中、ギルド長はじっとサットウを見つめた。
「さっきからそこの男の所作を見ているが……ただ者じゃないな。立ち振る舞い、目配り、身のこなし……かなりの手練れと見た」
「……とんでもないです」
サットウが控えめにそう答えた。
「こういう人材が、他にもいるんだろう?」
「……まあ、うちの村には、そこそこ揃っていますね」
俺がそう答えると、ギルド長はにやりと笑った。
「そうなると……単なる物品のやり取りだけじゃ、もったいないな。ちゃんと協定を結ばないとならねぇな」
「協定、ですか」
「ああ。……国同士の協定だ」
ギルド長の低い声が、ギルドの中に静かに響いた。
「お前たちの村から、腕の立つ者を数人こちらへ。うちの街からは、財政に明るい者を数人、そちらへ。……お互いに足りないものを補い合う、そんな関係を築こうじゃないか」
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