第二十六話:買い出しメンバー選定
村の人口は154人。
その内訳は、人間が86人、魔族が68人となっていた。
急ピッチで進められた増築の結果、元々あった三棟の家に加え、猫獣人用に建てられた八棟、そしてさらに新たに三十棟の家が建ち並んでいた。
食料庫やお風呂も、それに合わせて増設されている。
「ガストンの配下が増えたおかげで、食料の調達量もかなり伸びてきたな」
俺がそう言うと、ガストンは誇らしげに胸を張った。
「はい! 猫獣人の索敵能力と、投降兵たちの人手も加わりましたので、以前より格段に効率よく狩りができています」
「それは頼もしいな」
——だが、一つ悩みの種があった。
「道具作りに関しては、正直厳しいところがあります」
ルチアが困った様子でそう報告した。
「ロクたちゴーレムだけでは、村の建築や修繕だけで手一杯で……日用品や生活道具まで手が回らないんです」
「……確かに、それは問題だな」
俺は腕を組んで唸った。
すると、隣で話を聞いていたバルゼが口を開いた。
「でしたら、商人から買うか、あるいは街で仕入れる、というのはいかがでしょう」
「街、か……」
俺はルチアが広げた地図に視線を落とした。
「この土地から一番近い街となると……『ミーエル』か『マモ』か」
「ミーエルは、人間界の中でも特に商業が発達した都市です」
ルチアが説明を加えた。
「道具や資材の調達なら、ミーエルの方が確実かと」
「よし、じゃあミーエルに行こう」
「馬車で、およそ三日ほどの距離ですね」
ルチアが地図上の距離を確認しながら告げた。
——だが、そこでもう一つの問題が浮上した。
「そういえば……俺たち、お金を全然持ってないな」
俺がそう呟くと、その場に静かな沈黙が流れた。
「……確かに、そうでした」
ルチアも思わず苦笑いを浮かべる。
「何か、金になりそうなものはないか?」
俺がそう尋ねると、ガストンが「あ」と声を上げた。
「そういえば、これまで狩ってきた獣の中には、立派な牙や角を持つものもいくつかありました。あれなら、それなりの値がつくのではないでしょうか」
「おお、それはいいな」
「それと」
ルチアが続けて口を開いた。
「勇者様の武器庫には、武器だけでなく、宝石類も大量に保管されていました。あちらも、資金源として十分活用できるかと」
「よし、それも合わせて持っていこう」
「それじゃあメンバーを決めよう」
俺はそう言って、集まった仲間たちを見渡した。
「相手は人間の街だ。あまり大人数で、しかも魔族ばかりで乗り込むよりは、人間中心のメンバーで行った方がいいだろうな」
「確かに、それが無難でしょう」
バルゼも頷いた。
「人数は三人くらいで動きたい。……ガストン、頼めるか?」
俺がそう尋ねると、ガストンは申し訳なさそうに頭を下げた。
「コウジロウ様、申し訳ありません。……ダグローズの元部下たちの指導が、まだ途中でして。今、私が抜けるわけには」
「ああ、それは仕方ないな。ガストンがいないと、あいつらもまだ落ち着かないだろうし」
「はい……申し訳ありません」
「代わりに、と言ってはなんですが」
ガストンが続けて口を開いた。
「サットウを連れて行かれてはいかがでしょう。人間側の兵士の一人です。
特別秀でた能力があるわけではないのですが、何をやらせても無難にこなしますし、少し心配性なくらい慎重な性格でしてね。
旅先で余計なトラブルを起こさないという意味では、頼りになるかと」
「なるほど、それはいいな」
俺が頷くと、ほどなくして呼ばれたサットウが、控えめな様子でやってきた。
これといって特徴のない、いかにも「普通」な雰囲気の青年だった。
「サットウです。……よろしくお願いします」
「よし、サットウも頼む」
続けて、俺はルチアに視線を向けた。
「ルチアに付いてきてほしいが、俺が留守の間の村の管理を任せられるのはルチアしかいない。どうしよう?」
「あの、コウジロウ様。でしたらミアを連れて行っていただけないでしょうか。
記録や計算に長けている子ですし、買い出しの管理でもきっと役に立てると思います」
「ミアか。……よし、分かった」
呼ばれたミアが、元気よく駆けてきた。
「はい、お供します!」
「よし、それじゃあ俺、サットウ、ミアの三人で行くとするか」
俺がそうまとめかけたところで、コハクが静かに前へ出た。
「あの、コウジロウ様。うちの若い女で、アリサと申す者がおります。……そちらも、連れて行ってもらえないでしょうか」
「アリサ?」
「はい。人間の街に一度も行ったことがないため、この機会にぜひ見せて、経験を積ませたく……」
コハクにそう紹介され、少し離れた場所に控えていた猫獣人の若い女性が、緊張した様子で前に進み出た。
「アリサです……! よろしくお願いします」
「猫獣人代表として、しっかり見て回りたいです」
アリサはまっすぐな瞳で俺を見つめた。
「……よし、分かった。アリサも一緒に来てくれ」
「ありがとうございます!」
アリサは嬉しそうに顔を輝かせた。
こうして、ミーエルへの買い出しメンバーは——俺、ミア、サットウ、アリサの四人に決まった。
「よし、それじゃあ準備を進めよう。」
俺がそう言うと、三人も気合の入った表情で頷いた。
始まりの村を発つ日は、もうすぐそこまで迫っていた。
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