第二十四話:戦の事後処理
俺の家のとある部屋。縄で拘束されたダグローズが、床に座らされていた。
「お前らは俺たちに負けた。もう逃げることはできない」
俺は静かにダグローズへと語りかけた。
「正直に話せ。……他に手を組んでいる奴はいないよな? 主犯はお前だよな」
だが、ダグローズはそれに対して、ただ地面を睨みつけたまま、一言も発しようとしなかった。
「……っ、この……!」
その沈黙に耐えかねたように、コハクが拳を握りしめ、ダグローズに殴りかかろうとした。
「待て、コハク」
俺はとっさにその腕を掴んで止めた。
「気持ちは分かる。……だが、今は情報が先だ」
「……っ、すみません」
コハクは唇を噛みしめながら、それでも拳を下ろした。
「……この様子だと、今すぐ話す気はなさそうだな」
俺はため息をつきながら、部屋の中を見渡した。
「一旦、頭を冷やそう。……お前は、少しここに残っていてくれ。もし前みたいに拷問が出来そうなら頼む」
俺は見張りとして、悪魔族の女を一人その場に残し、他のみんなと一緒に部屋を出た。
——だが、それからしばらくして。
「コ、コウジロウ様……!」
血相を変えた悪魔族の女が、部屋から飛び出してきた。
「どうした!?」
俺たちが慌てて部屋に戻ると——
床に、ダグローズが倒れていた。
口の端から泡を吹き、体はすでに冷たくなり始めている。
「……っ、毒だと……!?」
俺は思わず声を上げた。
「目を離した隙に……一体どこに……」
悪魔族の女も困惑した様子で首を振った。
その場に、重い沈黙が落ちる。
「……プライドゆえの、自害でしょうか」
バルゼが険しい表情でそう呟いた。
だが、そこへ、治療を終えたばかりのエイチが、青ざめた顔でこちらに駆け寄ってきた。
「待ってくれ、コウジロウ。……気になる話を、小耳に挟んだんだ」
「どうした、エイチ?」
「拷問されてる間、あいつの部下たちがぽろっと漏らしてたんだよ。……ダグローズは、魔界の『七魔将』の誰かと繋がりがあるって」
「……七魔将と?」
俺は思わず眉をひそめた。
「もしかしたら……自害なんかじゃなく」
エイチが険しい顔で続けた。
「口封じ、だったんじゃないか?」
その言葉に、その場にいた全員が息を呑んだ。
(——ダグローズの後ろに、まだ何か大きなものが控えている可能性があるってことか)
俺は静かに拳を握りしめた。
——それから、投降した兵士たちの処遇についても話し合いが進められた。
戦いの最中、混乱に乗じて逃げ出した兵士がおよそ三分の一。
残る三分の二、およそ六十人ほどが、その場で投降していた。
「六十人か……。正直、今のうちの村にすぐ受け入れられる余裕はないな」
俺は腕を組みながら唸った。
選択肢は大きく二つ。
拠点をさらに拡大して受け入れるか、あるいはそれぞれの故郷へと帰すか。
「ですが……そのまま国へ帰せば、また何か悪さを企むかもしれません」
ルチアが懸念を口にした。
「ああ、それも分かってる」
俺はしばらく考えた末、一つの案を決めた。
「まず、猫獣人のみんなに、しっかり謝罪してもらう。……その上で、ガストンたちの傘下に入って、この拠点で働いてもらうっていうのはどうだ?」
「ガストン様の傘下……ですか」
「ああ。ちゃんと更生する機会を与えたい。もちろん、監視は必要だろうけど」
俺の意見をコハクをはじめとする猫獣人たちに伝えたところ、しばらく顔を見合わせた後、静かに頷いた。
「……分かりました。誠意ある謝罪をしてくれるなら、私たちも受け入れます」
こうして、投降した兵士たちは正式に謝罪の場を設けられ、その後、ガストンたちの傘下に加わることが決まった。
一気に膨れ上がった人口に対応するため、拠点では急ピッチで村の増築が始まることとなった。
「よし……ここからさらに、村を大きくするぞ!」
俺の号令に、仲間たちから力強い返事が響き渡る。
こうしてまた一つ、大きな試練を乗り越え、コウジロウたちの拠点は規模を拡大し、新たな段階へと足を踏み入れていくのだった。
もしよろしければ、★評価やブックマークをお願いします!




