第二十話:戦の準備
猫獣人たちが拠点にやってきてから俺たちは戦闘に向けて態勢を整え始めた。
まずは拠点から村から少し離れた場所に、ロクたちゴーレムの手を借りていくつもの地下部屋を掘り進めた。
頑丈な岩壁に囲まれ、外からは分かりにくい構造の避難場所。数日で、しっかりとした地下シェルターが完成した。
「戦えない者や子供たちは、いざという時、ここに避難してもらう」
俺の説明に、拠点のみんなが真剣な表情で頷いた。
守り役として、人間側からはリオとミア、魔族側からはユキとロクが名乗り出て、避難者たちと共に地下へ入ることになった。
「私たちが、しっかり守りますから」
「みんな、安心してくださいね」
リオとミアが気丈にそう言い、ユキとロクも力強く頷いた。
地下部屋の建設に続いて、拠点の周囲にも大きな防壁を築いてもらった。
だが、地下シェルターと防壁の両方を並行して進めたことで、さすがのゴーレムたちも手一杯の状態になっていた。
「武器の調達も進めないとな……」
俺がそう考えていると、真っ先に手を挙げたのはルチアだった。
「でしたら、武器の手配は私にお任せください」
「頼めるか?」
「はい。実は……勇者様が生前、大量の武器を溜め込んでいた武器庫の存在を把握しております」
「武器庫?」
「勇者様は『いつでも最強の装備を選べるように』と、方々から集めた剣や斧、槍、弓など、様々な武器を蓄えていました。……ほとんど戦場に持ち出すこともなく、ただ自慢するためだけに集めていたようですが」
「……相変わらずろくでもない理由だな」
俺は呆れた。
ルチアの案内のもと、俺たちは森の奥に隠されていた武器庫へと向かった。
扉を開けると、そこには壁一面にずらりと並んだ剣、斧、槍、弓の数々が眠っていた。
「……すごいな、これ」
俺は思わず声を漏らした。
戦闘に参加するメンバーたちは、それぞれ自分に合った武器を選び、しっかりと装備を整えていく。
その中で、ふと目に留まったのが——一振りの剣だった。
装飾は控えめながらも、確かな存在感を放つその剣に、俺は自然と手が伸びた。
「これは……」
「それは、勇者様が実際に使っていた剣ですね」
ルチアがそう教えてくれた。
「……そうか」
俺はしばらくその剣を見つめた後、静かに鞘から抜いてみた。
手に馴染むような、不思議な感覚があった。
「……もらっていくよ、これ」
俺はそう言って、勇者の剣を腰に下げた。
ガストン、バルゼをはじめとする人間・魔族の兵士たちは戦闘員として準備をしてもらう。
そして——
「私たちも、戦います」
コハクが静かに、しかしはっきりとそう告げた。
「コハクさん……」
「これは私たちの戦いですので、少数になりますが一緒に戦わせてください」
「……分かった。頼りにしてる」
コハクをはじめとする猫獣人六人も、戦力に加わることになった。
こうして集まった戦闘員は、人間、魔族、猫獣人合わせて——およそ五十人。
拠点の空気は、これまでにない緊張感に包まれていた。
——同じ頃。
ダグローズは、三人の幹部と百人の兵士を引き連れ、コウジロウたちの拠点へと向けて進軍を開始していた。
その後方には、縄で縛られたまま引きずられるように連れて行かれる、憔悴しきったエイチの姿があった。
「……悪ぃな、村のみんな…………」
朦朧とする意識の中、エイチは小さく呟いた。
だが、その声は誰にも届くことなく、大軍の進む足音にかき消されていく。
そして、長い進軍の末——ダグローズ率いる軍勢は、ついにコウジロウたちの拠点の前へとたどり着いたのだった。
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