第十五話:行商人エイチ
みんなのステータスも把握でき、タマたちの傷も少しずつ癒えてきたある日、俺は集会所でタマたち八人の子供と向き合っていた。
「なあ、タマ。少し聞きたいんだけど……お前たちの故郷の村って、覚えてるか?」
「……村……」
タマは少し戸惑った様子で俯いたが、やがて小さく頷いた。
「うん……ぼんやりとだけど。森の奥にある、小さな猫獣人の村だよ」
「そうか。……もしよければなんだけど、その村を探して、家族に会わせてあげたいと思ってるんだ」
「っ……ほんとに……!?」
タマの瞳に、みるみるうちに希望の光が宿った。
「ああ。だけど、正直今の情報だけじゃ、村がどこにあるのか俺たちには見当もつかない」
俺がそう言うと、ルチアとバルゼが顔を見合わせ、それぞれ地図や記憶を辿ってみたが、二人とも首を横に振った。
「申し訳ありません……猫獣人の村に関しては、私の情報網でも……」
「私も心当たりがありませんな」
「そうか……」
俺が腕を組んで考え込んでいると、「あ!」と声を上げたのはガストンだった。
「俺の古い知り合いに、各地を渡り歩いている商人がおります。エイチという男で、昔からいろんな辺境の村にも顔が利く、顔の広い奴です」
「エイチか。頼れそうか?」
「はい、腕は確かです。俺が頼めば、きっと力になってくれるかと」
「よし、頼む。……できるだけ早く会いたい」
——数日後。
拠点の情報を伝え聞いたガストンの声かけに応じ、エイチがわざわざこの拠点まで足を運んでくれた。
小柄で人懐っこい笑顔が印象的な、四十代ほどの男だった。
「よぉ、ガストン! 久しぶりだな!」
エイチはそう言って快活に笑うと、俺たちの顔を見渡し、ふと表情を改めた。
「話は聞いてる。……猫獣族の村について、だってな?」
「ああ、そうなんだ」
俺がそう続けると、エイチは続けた。
「北の森の奥に小さな集落があって、何度か行商で立ち寄ったことがある」
「本当か!」
俺が思わず声を上げると——
「私もこの人見たことあるような気がする……!」
タマが同じように声を上げた。
「ということは、その村で間違いなさそうだな」
俺が頷くと、エイチも「だな」と笑ってみせた。
その後、足早に旅支度を整え、俺たちはエイチに改めて挨拶を済ませた。
「よろしく頼む、エイチ」
「おう、任せとけ」
聞けば、村まではここから二日ほどかかるらしい。
移動手段については、ロクたちゴーレムに馬車の製作をお願いすることにした。
「かしこまりました。頑丈な馬車をご用意いたしますわ」
こうして俺たちは、エイチの案内のもと、ガストン、バルゼ、フィーナと数人のバルゼの部下、そしてタマたち八人を連れて、北の森へと向かうことになった。
こうして俺たちは、エイチの案内のもと馬車に揺られ、北の森を目指した。
道中は特に大きなトラブルも起こらず(トラブルになる前にガストンとバルゼが処理し)、二日目の昼過ぎには目的の森の奥へとたどり着いた。
木々の合間から、木造の家々が並ぶ小さな集落が見えてくる。
「……あそこか」
俺が呟くと、隣でタマが小さく頷いた。
馬車を降り、集落の入り口に立った瞬間——俺はふと、言いようのない違和感を覚えた。
(……なんだ、この空気)
静まり返った村には、人の気配こそあるものの、どこか重苦しい沈黙が漂っている。
「……ここが、私たちの村だよ」
タマが小さな声で呟いた。
俺はその重たい空気を肌で感じながら、ゆっくりと足を踏み入れた。
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