第十三話:勇者軍のステータス
「よし……せっかくだから、みんなのステータスも見てみるか」
コップに残ったお茶を飲み干しながら、俺はさっそく外へと足を運んだ。
まず向かったのは、集会所で書類仕事をしていたルチアのもとだった。
「ルチア、ちょっといいか? 実は女神様から、ステータスを見られるスキルをもらったんだ」
「わ、私のですか!? もちろん構いませんが……」
少し緊張した様子のルチアに向けて、俺はスキルを発動させた。
(——ステータス)
【名前:ルチア】
【スキル:記録術・地図作成・戦略立案・後方支援】
【能力値】
筋力:50 敏捷:100 防御:45 魔力:33
体力:150
知力:506
俺はまず目に入った数字を口にした。
「……ふむふむ」
「私の筋力はどれくらいですかね?平均レベルなので
基準になるかと思います」
ルチアはさすがというべきか、すぐに数字を整理して頷いた。
「とすると平均は50か」
「え……、知力が506もあるぞ」
「 そ、そんなに……!?」
「506って、平均の10倍以上ってことだよな。すごいなルチア」
「そ、それほどでも……あ、ありがとうございます……!」
ルチアは頬を赤らめながら、嬉しそうに俯いた。
——それから俺は、他の元・勇者軍のメンバーたちのステータスも一人ずつ確認して回った。
弓を得意とする兵士は敏捷が280。
投石を得意とする屈強な男は筋力が310。
物静かな治癒師の女性は知力が250。
そして、共通して目についたのが——誰も彼も、魔力の数値だけは軒並み低いということだった。
「……人間って、基本的に魔力低めなんだな」
俺がぽつりと呟くと、近くにいたリオが答えた。
「はい! 人間はもともと魔力を扱うのが苦手な種族なんです。魔法を使えるのはごく一部の才能ある人だけで……」
「そうなのか。……あ、じゃあフィーナは?」
「フィーナくんは別枠ですね! あんな魔力の持ち主、人間側では聞いたことがありません」
「……納得だわ」
俺はさっき見たフィーナの魔力510という数字を思い出しながら、深く頷いた。
最後に、剣の手入れをしていたガストンのもとへ向かう。
「ガストン、ステータスを見せてもらってもいいか?」
「おお、それは素晴らしい! ぜひ俺のも見てやってください!」
【名前:ガストン】
【スキル:剣術・統率・危機察知】
【能力値】
筋力:520 敏捷:85 防御:380 魔力:33
体力:500
知力:50
「……げ、筋力520!? 体力も500て……!」
「ハッハッハ! これでも元・勇者軍の副隊長ですからな!」
ガストンは得意げに胸を反らした。
一般人の基準が50だとすると、筋力・体力ともに10倍以上。
「……これ、全員がかなりの手練れじゃねぇか」
改めてそう実感すると同時に、これまでの動きの数々が一気に腑に落ちていった。
森でたった一撃で突進猪を仕留めたガストンの剣技。
驚くほど精密だったルチアの地図。
——どれも、決して偶然や勢いだけで成し得たものではなかったのだ。
「……勇者軍、とんでもない人材の宝庫だったんだな」
俺は改めてそう呟きながら、夕暮れに染まり始めた拠点の空を見上げるのだった。
——そして、その日の夜。
俺はふと、部屋の隅に置いたままだった三つのドアのことを思い出した。
「……そういえば、これ。誰かに間違えて薪にでもされたら大変だよな」
木製の質素な見た目のせいで、うっかり物置代わりの資材だと勘違いされてもおかしくない。
俺は近くにあった木札を手に取ると、丁寧に文字を書き込んだ。
『——コウジロウ専用・処分厳禁』
木札を一つ一つのドアにしっかりと結びつけると、俺は改めて三つのドアを部屋の奥、目立たない場所に厳重にしまい込んだ。
「……よし、これで安心だ」
満足げに頷きながら、俺は静かに扉を閉めるのだった。




