15.日常の一部
「こんな感じでいいかな?」
「ああ、どうせすぐ成長するからあまりきちんとした小屋にこだわる必要は無いだろう。」
「そっか、1ヶ月で成鳥くらいの大きさになるんだっけ。」
「ああ。そこから人化できるようになれば色々と融通が効くようになるだろう。」
「そっか。明日は俺は肉を獲ってこないとな。すぐ肉が無くなりそうだ。」
「そうだろうな、リアンが戻らないようならまた留守番しておいてやろう。」
「本当にありがとう。今日も帰ってこなさそうだしね…。ルダンにご飯あげたらそろそろ俺達の夕食の準備をするよ。」
多めに作ってたシュークルートもついに今日で最後だ。
次はコンフィを消費していくことにしよう。
「…セージ。」
「なに?」
「あの…なんだ、その…。」
「うん。」
オルスのこんな様子は初めて見た。
何かとても言いにくいことを言おうとしているのか。
「…いや、なんでもない。」
「…。」
「…。」
「いやいや、そこまで勿体ぶって言わないとかありえないよ!」
「…すまない。」
「…。」
「…。」
「…。」
「…大したことではないんだが。」
「それならさっさと言ってくれよ。」
俺は準備の手を止めてオルスの話の続きを待っている。
「…その、リヴィエールで買ったものが…あるだろう。多めに買ってきていたようだが、それどうしたのだ?」
「魚?まだ収納にたくさんあるよ。天人族も来る気配ないし焼き煮込みも解禁する?」
「ああ、それももちろんいいと思うが…。他にも買っているんだろう?土産にとも言っていた…クリームの…。」
「ああ、トロペジェンヌのことか。リアンが帰ってきた時にと思ってたけど忘れてたな。」
「…痛むだろうから夕食後に食べても…かまわないか?」
「いいよ。すぐに買いに行けるしね。」
「…話はそれだけだ。」
「ふふっ…。これだけ引っ張っておいて甘味の話とは。」
「今笑ったな?セージは甘味が好きと言っておきながら全然食後に食べないではないか。我は留守番でセージもいない家にずっといるから楽しみがないのだ。…もしや、我のいないところで食べているのではないだろうな。」
「いやいや、食べてないから。オルスがそんなに好きだなんて知らなかったから…ごめんね。これから食後やお茶の時には準備しておくね。」
「我はそんなに甘味を欲しているわけではない!たまには楽しみが欲しいと言っただけだ。」
「わかったから。最初から甘味を出せって一言言えばよかっただけなのに。」
普段の不遜な態度とのギャップがなんとも可愛く感じる。
明日猪狩りの後、町に行ったら色々買っておこう。
「そのニヤついた顔で我を見るな。抱き潰されたいか。」
「抱き潰す…?握り潰すの上位版か?まだ死にたくはないな。」
「我がセージの中に挿れて足腰が立たなくなるまで抱き続けるってことだ。」
「そんなの俺には無理だよ。」
「無理ではない。やるかどうかだけの話だ。
我なりにセージを大事にしようと自重しているんだからな、セージがそれを無碍にしようとするのなら覚悟しろ、ということだ。」
「うん、それは感じてるよ…ありがとう…。」
俺はようやく夕食の準備に取り掛かった。
食後、コーヒーと一緒にトロペジェンヌを出した。
魔法の方で収納していたから買った時の品質のままのはずだ。
「…。」
「美味しい?」
「ああ、美味だ。」
オルスは何を食べても表情はあまり変わらない。
だが、待望の甘味で内心喜んでいるのかもしれないと思うとついニヤケそうになる。
抱き潰されたくはないので俺も頬張り誤魔化す。
「オルスって好きな食べ物や苦手な食べ物ってなに?」
「セージが作るものが好きだ。苦手なものは…思いつかないな。…セージは内臓を使った料理は苦手なようだな。」
「そうだね、いつも真っ先に捨てちゃうし…。食感も匂いも形も全部無理かも。」
「セージはわかりやすくていい。作る料理で好みも伝わってくる。」
「そうか…料理は出来るだけ色々作ろうと思ってるけど無意識に偏っちゃうよね。」
「セージは好きなものだったら毎日でも食べ続けられるだろ?」
「ああ、そうだな。ハムのバゲットサンドとか。」
「それってつまり…好きになった相手を毎日愛し続けられるってことだよな。
我は特別な日に食べる贅沢な料理ではなく、毎日食べるバゲットサンドのようにセージの日常の一部になりたい。」
「…もうなってるよ。」
「そうか。なら今日も存分に味わうがいい。」
オルスはそういうと俺を抱えてベッドに連れて行った。
ルダンは眠っているようで安心した。
回数を重ねるごとに行為自体は慣れているはずなのだが、…体が以前より敏感になってきている気がする。
だが、それは俺だけではないようで、オルスの反応も以前より更に良くなっている。
今でも十分に気持ちよく満たされているのに、ひとつになると一体どうなってしまうんだろうか。
期待の気持ちも恐れる気持ちも、日に日に膨らんでいく。
翌朝、ルダンの鳴き声で目が覚めた。
お腹が空いていたようで刻んだ肉をあげると大人しくなった。
昨日より食べる量が増えた気がする。
「クリーン」
あれだけ食べたんだからいっぱい出るだろうな。
ご飯のたびに綺麗にしてあげないと。
ご飯をあげた後はリビングに向かい、昨日のまま放置されている食器類を片付けて朝食の準備をする。
今日は時間が経って固くなったバゲットでフレンチトーストを作る。
本当は時間をかけて浸しておきたいが今日は手で圧力をかけスポンジのよう牛乳と卵と砂糖を混ぜた液を吸わせていく。
温めたフライパンで多めにバターを溶かしバゲットを焼いていく。
「朝からいい匂いがするな。」
気付くとオルスも降りてきていた。
「ああ、少し焦げたバターがいい塩梅だよ。」
俺はコーヒーとフレンチトーストと蜂蜜の瓶をテーブルに並べた。
「もう食べていいか?」
「即席で作ったから少し硬いかもしれないけど。蜂蜜をお好みでかけて食べて。」
「なるほど…。うん、皮は結構しっかりしているが、中がトロッとして美味だ。
なんだか今までのセージの料理とは全く違うな…。俺に気を遣ったのか?」
「いや、昨日出しっぱなしになってたから…これは元々時間が経って固くなったバゲットを美味しく食べるための料理だからね。」
「…そうか。」
「でも…俺の作る甘味ならオルスはもっと好きかなとは思ったかな。」
「…ふん、別に甘味かどうかは関係ない。」
そう言うとオルスは黙々と食べ始めた。
いつもより表情が緩んでみえる…気がする。
オルスが食べ終わるのを待って俺は出かける準備をした。
「ルダンのご飯もあるから一旦昼前には帰るよ。」
「ああ、行ってこい。」
「行ってきます。」
「テレポート」
俺はマスター宅の俺の部屋に移動した。
今日は素直にマスターの部屋に向かおう。
部屋に入るとまだ寝ているように見えるが、きっと気配で俺の動きを監視していることだろう。
俺は服や靴を脱ぎ肌着だけになりベッドに入り込んだ。
「ようやく来てくれたな。今日は満点だ。」
案の定、俺がベッドに入るなりすぐに捕まった。
抱きしめて俺の首筋に噛みついてくる。
既に準備万端のようだ。
いつも手だけというのも申し訳ないため、口でしてみよう。
リアンほどではないがオルスより大きいソレは少し躊躇うが喉まで使い根元まで咥え込んだ。
「セージっ!いきなりそんな…ダメだっ。」
頭を外そうとするが俺は構わず続けた。
すると先から根元までを3、4往復したところで喉に盛大に吐き出した。
「ごほっ、ごほっ…。」
飲み込むのはいいが気管に入ったせいで咽せてしまった。
「すまない、大丈夫か?だからやめろと言ったのに。」
「いや大丈夫だよ。…俺がしたかったんだ。」
「セージの口の中は柔らかくて温かく気持ちよかった。…下の方もこんな感じか想像したら思いのほか興奮してしまった。」
そう言うと俺の肌着を脱がして足の間に顔を埋めてきた。
「ちょっと、シーナさん…!」
「私も少しくらい好きにしていいだろう。」
俺のを美味しそうに音を立てながら舐めたあと尻の割れ目の奥まで舐めてきた。
舌先で突き中に入ろうとしてくる。
「そこはっ…んんん!無理ですっ…。」
片手で胸を、もう片方で俺のを扱きながら執拗に舐めてくる。
くすぐったいような気持ちいいような…なんとも言えない感覚だった。
舌が入ってくる羞恥より気持ちよさの方が勝った俺は、全てを曝け出したみっともない格好のまま達した。
…俺のそんな姿を見ながら自分の手で果てたようだ。
「セージ…。可愛いな、本当に。」
「俺はなんて格好を…これからどんな顔して生きていけば…。」
「別に今まで通りでいいだろう。人には散々しておいて今さらだろう。」
「するとされるとでは違うんですよ…。」
「セージは私が我慢できずに早く果ててしまったことをみっともないと思うか?」
「いえ、そんなことはないです。むしろ嬉しかったですし。」
「私だってそうだ。人に見せない格好を私の前でしていることが嬉しかった。」
「そうですか…。そうですよね。逆の立場に置き換えると理解はできます…。」
「今の恥じらいは忘れないでいて欲しいがな。それにしても今日はよかった。こうやってゆっくり出来るのもまだ先だと思っていたからな。」
「そういえば、色々報告があって…。」
俺はリアンや天人族、ルダンのことを話した。
「そうか、ついに生まれたんだな。」
「今度定休日の日に来ます?」
「そうだな、迎えにきてくれ。」
「人化できるようになったら店にも連れていきますよ。」
「鳥人族は任意で人化できるのが羨ましいな、空も飛べるし。」
「そうですね。鳥でしかもタカってかっこいいでしょうし。」
「狼よりもか?」
「いや、それは方向性が違いますし…魚と肉みたいな。あ、そういえば魚は食べましたか?」
「ああ、丸のままマリネした後窯焼きにして食べたぞ。久々の魚はとても美味しかった。ありがとな。」
「いえいえ、またいつでも買ってきますよ。」
「それならセージが泊まる時にお願いしよう。」
「わかりました。よかったら一緒に市場回りましょう。」
「リヴィエールなら常連もいないだろうしいいかもな。」
「はい。…それではそろそろ行きますね。」
「ああ、またな。」
「テレポート」
今日は新しい魔法を試す予定だ。
手当たり次第に探しても時間の無駄だから魔法で居場所を探し狙い撃ちにするのだ。
「サーチ」
俺はブラッドボアの居場所を探すイメージで唱えた。
するとリッシュの町の近くで1匹見つけたので早速狩りに行く。
いつもは捨ててしまう内臓だが、やはり臭いが気になったので魔法で入念に綺麗にしてから収納した。
いつもの店で素材を売ると俺は町の菓子屋に寄ってエッグタルトに似たフランやミルフィーユ、シュークリーム、フルーツタルトといった甘味類をあるだけの種類買い集めた。
これだけあれば毎食食べても1週間以上は保つだろう。
「テレポート」
「ただいま。肉獲れたよ。」
「おかえり。早かったな。」
「ああ、ボアがすぐに見つかったから。」
俺は肉や内臓を取り出して細かく刻んでいく。
内臓だけでもすごい量だな…。
「内臓ってどの部位も食べさせていいと思う?」
「ああ。汚物類は除けてあれば問題ないだろう。」
すると俺の部屋の方からピィピィとルダンの声が聞こえてきた。
「お腹すいたのかな。」
「さっきまでは静かだったが、ママが帰ってきたことに気がついたんだろう。」
「ママって…せめてパパにして欲しいな。」
俺は獲りたての刻んだ内臓と肉を皿に盛りルダンの元に向かった。
少しずつスプーンですくい何度も口に運ぶ。
昨日までは首も座ってない感じだったのに今日はしっかり立ち上がっている。
懸命に口を開けご飯を飲み込む姿がとても可愛らしい。
皿の半分を平らげるとパタっと落ちるように眠ってしまった。
俺は周囲を魔法で綺麗にしてからリビングに戻った。
「俺達もご飯にしようか。」
野菜と鶏のコンフィを温め直す。
鍋でサーモンのぶつ切りを入れたシチューを作る。
「そういえば、今日畑の水やりがてら周囲を見回ったんだが、天人族らしき姿はいなさそうだったぞ。」
「そうか…このまま何もないといいな。俺も普通に出歩けそうだね。」
「あんな奴らに気を使って暮らすなんて無駄だ。もう忘れよう。」




